紙の本
考現学的ミステリー
2001/05/23 22:41
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投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
バーチャル・アイドル有森恵美を巡る連続殺人事件。パソコン通信なんてものがでてくる。でも、インターネットも一般的ではなかった当時の理解(説明)としては上等な部類ではないだろうかと思う。その他に、親子の断絶、モラトリアム、イジメやらがキーワードになっている感じ。この小説って、小説の形態をとったマニュアルで、小説・現代用語の基礎知識なわけです。つまり、小説によってアイドル・オタク、パソコン通信といったサブカルチャー(ぉぇ)を絵解きならぬ小説解きしているわけです。だから、カルキ臭さの抜けない小説とも言える。よく言えばディテールに凝った仕事だと言えなくもない。ワクワクするようなスピード感はないけれど、痒いところに手が届くという感じです。嘘といえば小説自体が嘘なので、嘘がない小説というのはありえないのだけど、嘘の少ない小説のつまらなさというのがこの作品にはあります。だからといって、作品全体がつまらないというわけではなく、これはこれで面白くできている。ただ、諸手を挙げてオススメできるとは言いきれないだけ。
参考文献として挙げられていたものを列挙する。
「はじめてのパソコン通信」杉浦洋一・ナツメ社
「夢のかなえかた」穴井夕子・近代映画社
「おたくの本」別冊宝島・JICC出版局
「裏パソコン通信の本」三才ムック・三才ブックス
「フーゾクの本」三才ムック・三才ブックス
「うわさの本」別冊宝島・JICC出版局
「殺人捜査の実態と指揮」網川政雄・東京法令
「刑事長マル暴日記」本間新市・KKベストブック
「目黒署 10人の刑事」佐々淳行・文藝春秋
物語の小道具・大道具のほとんどが参考文献を読めばまかなえてしまうわけだけど、結局のところ、この物語も「アイドル」「パソコン通信」「殺人事件」の三題噺だったのではないかと思う。ただ、500ページ弱とそう少なくない分量でありながら、作者の性格のせいかテーマの軽さのせいか、深追いあるいは掘り下げ方が足りないように思う。これはもったいないことなのだけど、このプロットでそれ以上の分量は無理があるからなのかも知れない。
ところで、読書傾向という相手の好みを知ることで、ある程度、相手の人間性が推測できるものだ。とは思うものの、ロクに短文の読解もできない、書いてあることを読めないくせに書いていないことを読み取ろうとするようなヤツには分かるわけがない(笑)。行間には書いていないことが書いてあるのではなく、書いてあることが書かれているだけだよ。「行間を読め」などと言っている国語教師がいるとするなら、そういう教師は見限るべきだと思う。行間には余白しかない。そういう人は、映画を観てもエンドロールが流れ出すと席を立つ、カニを食えばカニ味噌を食わないのと同じだと、思えないんだろうね。
紙の本
ミステリーコーナーより
2001/02/06 14:43
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投稿者:杉江松恋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
警視庁生活安全部少年課の宇津木警部補は、アイドル・コンサートの最中に少年がナイフで刺殺される現場に出くわした。それは、アイドル自身はステージに姿を現わさないという奇妙なコンサートだった。なぜならば、主役の有森恵美はネット・アイドルとして、パソコン画面の中だけに生きる存在だからだ。事件の真相を追ううちに、宇津木はネット界の奇妙な現状を知ることに……。警察小説の名手が、漂流する都市風俗を活写する。
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マニアを熱狂させるバーチャル・アイドル、有森恵美のライブで少年が殺された。
電脳メディアに宿る現代の「聖画」とは?
悩み癖のある安積警部(補だっけ?)と、いいとこ取りの速水といったキャラが魅力的。
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安積班シリーズのインターバル的な作品になるのかなぁ・・・
安積班シリーズには分類されないけど、「蓬莱」と違って、今回安積班メンバーの活躍が目立つ作品で、大満足。
特にベイエリア分署でスープラをかっ飛ばしてた、元機捜の速水の活躍がとても嬉しい♪
スピード感もあり、そこそこ量のある作品だったけど、あっと言う間に完読。
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2007/7/6 Amazonにて購入
2008/9/8~9/15
実体の見えないバーチャルアイドル、有森恵美のライブで高校生が死ぬ。会場に居合わせた中学時代の同級生達が怪しいとにらんで捜査に入る安積班の面々であるが...(安積班の面々はベイエリア分署から神南署に異動になっている)。最後に明かされる有森恵美の正体と犯人の動機が切ない。
犯人自体は結構早めに予想できるが、1995年初版の本であるので、パソコン通信の時代背景や、アイドル論など興味深い記述が見られる。時代の流れは早いもので、2008年現在、またアイドルのあり方は変わっているようだ。安積の同期の宇津木、速水の参加も作品に艶を与えている。
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警視庁生活安全部少年課の宇津木は、部下と一緒に少年達の実態を調べようとあるライブに来ていた。バーチャルアイドル有森恵美のライブだった。そのライブでは、有森恵美は、登場しないで有森恵美公認の女性グループ3人とバンドのライブだった。そのライブは、熱狂的でやがて乱闘騒ぎになった。それを止めようと宇津木と部下は、割って入ったのだが高校生が一人刺された。
その事件に駆けつけたのは、宇津木と同期の神南署の安積警部補。捜査を始めた安積と部下達。仮想現実の少年達世界に戸惑う捜査陣。
宇津木は、家では家族との会話が無かったが、安積に会った事この事件をきっかけに変わって行く。安積達の地道な捜査。宇津木の取った行動。やがて見えてきた事件の真相とは?
今野敏が送る長編の警察小説です。安積警部補の魅力が満載です。出た当時は、衝撃的な話だったのでは?前半は、ゆっくりとですが後半のテンポはいいですよやはり今野敏は、面白いですね
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2008年129冊目。今野敏さんの「安積警部補シリーズ」です。今野さんは現代性を切り取ることが多いので、この作品の設定は若干古いものにはなっておりますが、それでも読み応えはあります。
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ハルキ文庫以外で出ている安積班シリーズ第二弾。
神南署編の設定だけど、ハルキ文庫版とはちょっと違った人物表記がまた面白い。
とはいえ話の進め方や引き込み具合は文句なし。
安積班シリーズにはまっているなら読まなきゃ損する一冊。
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安積シリーズ長編。刊行順でいうと5作目。
『蓬莱』よりも従来の安積シリーズに近い形になっている。安積班の活躍が見たい方は『蓬莱』よりもこちらが楽しめるかもしれない。
動機や犯人は序盤から大体見当がついてしまうが、恐らくそれは大した問題ではない。多分隠そうともしていないだろう。それくらいわかりやすい。
それよりは安積班の活躍であるとか、ネットにおける虚像であるとか、世代間の壁であるとか、そういうものを書きたかったのだろうと思う。ただメインテーマがどれなのかは、読み終わってもよくわからなかった。
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ハンチョウシリーズ。
15年以上前の作品なのに、ネット社会の話題(課題?)も先取りしているというか、今読んでもまったく遜色ないというか、ホントに毎回感心させられる。
おもしろかったです。
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神南署安積班シリーズ2作目。今回のチョウさん(安積)は交通課の速水と組んで大活躍!同期で本庁少年課の宇津木にも協力を得、さらに楽しめる内容となっている。ちなみに今回のがんばったで賞は黒木刑事(笑)
タイトルの「イコン」とは東方正教会の宗教画のこと。PC用語の「アイコン」はこの「イコン」からきている、と須田刑事は言う。なかなか象徴的に使われている言葉です。余談だが、大沢在昌『魔物』もイコンがテーマだったな。ファンタジック過ぎて好みではなかったが。
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神南署篇第2作。
安積班シリーズのよさは読後感がさわやかなこと。描かれているのは殺人事件なのだが、さまざまな軋轢の中で真摯に人と向き合おうと努力する安積警部補の人間味あふれる姿に、一種の癒しを感じるのだ。ところが、残念ながらこの作品ではやりきれない思いが最後までぬぐい切れなかった。登場する少年たちがかもしだす底知れない空疎感が作品全体を支配し、後味がよくない。
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アイドルのコンサート会場でファンが殺される。
アイドルは誰なのかは、想像しやすかったけど、
犯人の動機は悲しいものだった。
蓬莱と同じく古い単語「パソコン通信」とかが妙になつかしい。
こんなに時代に取り残された警察っていないしw
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ストーリー的には面白いと思いますが、パソコン通信の説明などが冗長で、若干退屈。
刊行時期を考えるとしかたないですが。
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蓬莱に続き2作目を読んだ。他の警察小説より社会性、とか重視なのかなと思った。ちょっと蓬莱よりも最後が読めてしまいましたが・・・
アイドルの変遷がなるほどと重い、アイコンの由来も新鮮だった。