紙の本
精神病についての、非常に手堅い本。まずはここから・・・。
2009/08/15 02:45
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反形而上学者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近は、うつ病やパニック障害だけでなく、精神病(統合失調症・旧分裂病など)についての新書や、一般向けの手に取りやすい本が非常に増えてきた。これは、実にいいことであると思うが、その半面、読者も良い本を手にしないと、必要以上の絶望感を味わったり、誤った知識をそうであると思ってしまうという困ったことにもつながっている。要するに、著作によって、出来不出来が激しいというのが実情なのである。特に家族に精神病を患っているような方は、こういう本の一言一句に大きく傷ついたり、絶望したりすることであろうから、書き手には、慎重さが要求される。
本書は、そういう一般書の中でも、解らないことは解らないとしっかり書いているので、好感が持てる。そして何よりも著者の笠原氏は、非常に有名な精神科医でもあるので、刊行から10年過ぎた現在でも、基本的なところは全く古くはなっていないというところも、書き方に工夫がされている点であろう。
精神病者は健常者とは違う「脳状態」で日常を生きている。もっと解りやすく言えば、我々が「睡眠中に夢を見ている」ような「意識状態」にいるから、我々にとっては当然と思えることも、精神病者には、そうは見えないし、自分の考えの「奇抜さ・異様さ」が自分では気づかないのだ。確かに我々が「夢を見ている」時は、どんなにありえあいような状況設定であっても、不思議と疑問を持たないのと、同じことであると言えよう。
昔よく、「寝ている人が寝言を言った時に、それに言葉を返して会話をしてはいけない」というような話を聞いたことは無いだろうか。これは多分、「夢見の脳状態」というものを、会話をすることによって固定してしまう可能性が多いからだろう。そう考えると、精神病者と会話をすることの危険性というものも、同様のアナロジーから推察できることになる・・・。
とにかく、まずはこの本から入って、あとは色々と選んでみるのが一番良い方法であろう。良い本との出会いは、その後の人生を確実に変えてくれるほどの力を持っていると、私は思っています。
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精神病ってどんなものがあるんでしょうかね?
自分ではわからなくても悩んでいたら、実は病気かも??!
本を読んで症状を確かめてみるといいかも。
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なんというか身近にそういう人が居ないので、実感として理解はできていないと思う。しかし他人事ではないという事はわかる気もするし、想像力のある理解がないとダメだなーと思った。
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分裂病を中心として、精神病の誤解を解くことに腐心している本といえるでしょう。その丁寧な語り口とは裏腹に精神病の誤解を解くという熱情を感じました。少し内容が古いので情報の更新は必要となりましょうが、精神病と人格障害(本書では「パーソナリティの歪み」)の違いについては、わかりやすい説明で解説されていましたし、その他にも誤解していた部分を丁寧にひも解いていただいた、というのが読後の感想です。
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統合失調症は不治の病で一生服薬、と思いこんでいたが、考えを改めた。今では外来ですっかり寛解していて社会生活を送っている人も大勢いるようだ。いつまで服薬するのがいいかとか、統合失調症の経過のページが興味深い。中でも誘因について遺伝か環境かの項目がだんぜんおもしろい。統合失調症と社会の近代化との関係がおもしろい。昔と現代とでは妄想の中身でも大きく違ってきているようだ。私は、近年、脳内化学物質に注目しており、分子生物学的視点で統合失調症をすべて解説できる、と信じ込んでいただけにこの本はまた違う学問分野に開眼させてくれたのである。たとえば、脳には言語中枢などと並んで社会性中枢なるものが存在するのではないか?というのも興味をそそられる見解である。統合失調症はあくまで文明病なのではないか?という見解もおもしろい。最近の患者さんの話を読むと本当にそうかもしれないな、と思わず納得した。
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分裂病をメインに書かれている。
自分がけっこう分裂気質な人間だということがけっこう明らかになってきて憂鬱になる。でも為になる本だと思う。
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bookoff online で購入。精神病の分類,分裂病の特徴から経過,治療,そして社会の受容体制の話までをまとめている。10年以上前の本ということだったけど,分裂病(統合失調症)のことは詳しくないので新鮮な話ばかりだった。病跡学(パトグラフィー)のところが特に興味深く,ドイツにあるという分裂病の方が描いた絵を集めた美術館に行ってみたいと思った。
病気の経過については,「悲観論にひきずられすぎないでください」ということだったけど,この本に書いてあった症例を見る限り,年齢を重ねないと良くなりにくいのかな,と思う。言い尽くされたことだけど,診断があったら本人も周囲も,長い治療になることを覚悟しなければならないのだろう。
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[ 内容 ]
精神病の中で分裂病は、今なお原因不明の難病であり、患者数も多い。
しかし、近年は治療法も進み成果も大きく上がっている。
症状や経過の特徴、原因の究明、治療法から患者の社会復帰、医療の体制、福祉のあり方にいたるまで、長年分裂病の臨床にたずさわり、それをとりまく問題を考察してきた著者が懇切ていねいに解説する。
[ 目次 ]
1章 心の不調
2章 分裂病の特徴
3章 分裂病の発病まで
4章 分裂病の経過
5章 今日の治療
6章 社会福祉の面から
7章 分裂病と犯罪をめぐって
8章 分裂病の原因について
9章 分裂病からの贈り物
10章 家人へのアドバイス
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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がん末期の患者さんが泣いてしまって、「泣きたいのはこっちです!」と言いにきた後輩にあぜんとしたことがあったけれど、統合失調症の方こそ「不安なのはこっちです!」ということなんだろうなあと思わせてくれる本でした。
こういう愛ある説明本が好きです♥
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「精神病」というおどろおどろしい題名ですが、
内容は、筆者の暖かなまなざしにあふれていて、
非常にいい本です。
分裂病を、データや筆者の患者の例にもとづいて
説明しているのですが、
現在は軽症化の傾向にあることが繰り返し述べられています。
それと、僕が一番おもしろいと思ったのは、
以下の3つの点で、分裂病は、
とても社会的であると述べていることです。
まず、分裂病に独特の心理も、現代社会にあっては、
周囲を驚かせるような激烈な形をとらなくなっているという、
軽症化の理由について言及した部分。
次に、この病気は、
「知性や意識の低下ではなく社会性・常識性の破綻」であるとして、
その原因に、人間の「社会性」の発達と何らかの関係性があると
ほのめかせている点。
最後に、治療には、、
社会復帰こそが治療の目的であること、
そのためには、社会福祉の充実が不可欠であるこということ。
現代社会の論点をとらえとようとするなら、
分裂病の心理を考えることで、
貴重な「贈り物」があるかもしれません。
社会学を学ぶ上でも、重要なことを示唆してくれた1冊です。
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http://catalog.lib.kagoshima-u.ac.jp/opc/xc/search?keys=9784004305811+
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林公一さんのサイトで推薦されていて読んだ。よくまとまっていてよい本。こういう本のわりに語り口が丁寧でやわらかい。
未読の方へ。統合失調症(かつての分裂病)の本です。
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精神病ないし統合失調症についてのコンパクトな解説書です。
同じ岩波新書には、人間学的な精神病理学の立場に立つ木村敏の『心の病理を考える』という本がありますが、本書は哲学的な考察に入り込むのでもなく、また実証的な研究成果を紹介することに終始するのでもなく、バランスの取れた記述になっているように思います。もっとも、個人的には木村の著作がおもしろく読めたのに対して、本書の叙述にはちょっともの足りなさを感じてしまったのも事実です。
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今回読んだ中のなるほどなあ文↓
『心の不調には「二つの系列」があるとお考え下さい。一つは「(軽重はあれ)病気」の系列であり、今一つは「パーソナリティの歪み」の系列です。
(中略)
病気とは、(中略)本来のその人のとは多少とも異質な状態が出現し、原則として治癒あるいは悪化の方向へ動く。そういう状態です。
(中略)
パーソナリティというのは、その人がこの社会に生きていくとき、特別に意図的でなくいつもやっている感じ方、考え方、つき合い方の「全体」をいいます。
(中略)
同じ心の不調でも、これは「病気」の場合のようにある時点から変化が生まれるのではありません。(中略)身体でいえば、体質のようなものをご想像いただくのがよいでしょうか。
(中略)
右側(※パーソナリティの歪み)は、その人の「人となり」のなかに源泉のある不調です。左側(※神経症・精神病)は、その人にとってはいわば余分なものが病気として付け加わった、そういう不調です。両者は本質を異にします。』
『この病気(※この本でいうところの分裂病=統合失調症)の人の子供時代の消極性の中身はなんなのでしょうか。
ここではサリバンという米国の精神科医の説を引用します。
(中略)
要するに、他人にたちまじって社会のなかで生きるには最低「自分に対する自信、少しむずかしくいえば、自分が自分を評価する気持ち」がいる、そしてそれは幼児期・児童期・青年前期あたりの他人との交流のなかからしか生れない、というのです。』