紙の本
昔、中国に3人の姉妹がいた
2003/11/13 20:05
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔、中国に3人の姉妹がいた。1人は金を愛し、1人は権力を愛し、1人は国を
愛した。そもそもNHKが宋三姉妹を主軸としたドキュメンタリードラマを制作
しようと思い立ったのは、なんとも不思議な魅力を放つ、このフレーズに魅了
されたからだという。
2003年10月25日、宋美齢はニューヨークで105歳の生涯を終えた。
その長寿になんとも驚かされるが、正直、まだ生きていたのかという思い
だった。美齢はさぞ悔しかったろう。かつて中国のファーストレディとして
全米に君臨し米沸き立たせ反日抗日に向けて米国世論を誘導するという離れ
業をやってのけた美齢。その喜びもつかの間、米国はスターリン率いるソビ
エトと取引し、これが軌道に乗ると、もう用済みとばかり使い捨てられ、
隅の方へと追いやられていく悲哀。栄光の時が忘れられず、自己主張をすれば
するほど疎まれ傲慢と非難されるもどかしさ。やがて夫の蒋介石は毛沢東との
戦いに敗れ一族は台湾に亡命。大陸反攻の機をうかがうも共産主義中国との
力の差は歴然としており、最初英国、フランス、やがて米国も日本も台湾を
見放し、台湾は国際的孤立を強いられ、歴史の孤児と化していく。
慶齢もさぞ悔しかったろう。かつて夫孫文の理想である中国の独立に最も援助
の手を差し伸べたのはソビエト共産主義であった。お人善しの孫文は、その
ソビエトの好意を善意だと信じ、共産主義を友邦同朋だと勘違いした。しかし
相手は手段として理想主義を振り回すしたたかな侵略主義者で中国の独立や
中華民族のプライドなんか歯牙にもかけないリアリストであったのだ。それに
気がつく前に夫である孫文は早世し、夫の遺志を継いでソビエトとの連帯を
求めた慶齢は中国共産党の連中に徹頭徹尾利用され利用し尽くされ、挙句の
果てに文化大革命時には「走資派」「蒋介石の親族」とレッテルを貼られ国賊
扱い。事実上の幽閉軟禁状態に置かれてしまう。かつて蛇蠍のように嫌いあい
憎しみあった慶齢と美齢だが、最晩年の慶齢はただただ美齢と再会すること
だけのみを求め続けたという。しかし米国に亡命中の蒋介石の妻が、中国共産
党の支配する北京に舞い戻るなど、所詮は不可能だったのだ。こうして1981年
宋慶齢は88歳の生涯を北京で終える。白血病だったという。
彼女らの苦労をよそに、中国4千年の歴史を破壊した日本は米国の庇護の下
奇跡の高度成長を遂げ、押しも押されるアジアのリーダー、世界第2の経済
大国の地位へと駆け上がっていく。
よく日本では「韓国人はへそ曲がりで反日的だが、台湾人は親日的だ」
「台湾人が親日的なのは日本人の台湾統治が優れていたからだ」等ということ
が公然と言われるが、ちょっと待って欲しい。何処の国に祖国を滅ぼした国に
好意を抱く人間がいよう。どこの国に親を殺し家を焼き払った国に好意を抱く
人間がいよう。台湾人が親日的に振る舞うのは、単に共産主義と戦うには米国
の協力が必要でそのためには米国の保護国である日本を敵に回さない方が
得だという冷徹な計算があるからだけではないのか。
巻末に番組に何とか宋美齢を登場させようと著者の伊藤さんたちが八方手を
尽くすが、ついにかなわずに諦める下りがでてくる。宋美齢とのアポが取れ
ないか協力を依頼された中国女性が依頼を断る際に放った言葉が印象的だ。
「宋姉妹の番組を作ってくれることは嬉しい、でも日本人がそばにいることが
わかっただけで私の心臓がおかしくなるの」
日本人は滅多なことでは中国人とは友人にはなれない。
私にはそう思えてならないのである。
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長女靄齢(あいれい)は財閥の御曹司孔祥熙と、次女慶齢(けいれい)は革命家孫文と、三女美齢(びれい)は蒋介石と結婚する。政治と金と武力が結びつき「宋王朝」と呼ばれる体制ができた。
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読了
内容(「BOOK」データベースより)
二十世紀が始まろうとしていた中国で三人の姉妹が産声を上げた。財閥の娘として生まれた彼女たちは、アメリカで豊かな青春時代を過ごす。そして帰国した三人は、それぞれの伴侶を求めた。長女靄齢は財閥・孔祥煕へ、次女慶齢は革命家・孫文へ、三女美齢は政治家・蒋介石へ嫁いだ―。これはまた、彼女たちの人生の大きな岐路であった。様々な思惑が錯綜する、革命という時代のうねりの中で、それぞれに愛憎と確執を抱きながら生きた三姉妹。ときにしたたかに、ときに純粋に、己の信じる道を生きた三人の運命を描きつつ、激動の中国史を活写した、出色の歴史ノンフィクション。
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三姉妹の運命に圧倒されて惹きつけられてグイグイ読んでしまった。
激動の中でそれぞれの生き方をして、でも最後同じ墓に入ったという所に何だかグッときてしまった。
自分も三姉妹なんで余計に。
そして自分もなんだが三姉妹次女ははみだしてること多い気がする。
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かなり前に購入し、放ったらかしだった一冊。
清国終焉から現在の中国の始まりまでを、宋三人姉妹を軸に書かれたノンフィクション作品。
中国側から見た第二次世界大戦、中国と台湾との関係…学校では時間切れで詳しく学べなかったことが、あった。
本作は1998年に書かれているので、それから更に年月は過ぎ世界情勢は変わっている。21世紀の今、終戦記念日前日に読んで非常に面白かった。
孫文の意志を継ぎ、中国共産党立ち上げに奔走した(結果的にそうなった)次女美慶は、今の中国を天国からどう見ているのだろうか…と思ってならない。
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昔、映画を観たような気がするが、内容はほとんど忘れていた。姉妹はかなり美化されているようだが、この本を読んで、中国共産党勝利の謎が少し理解できたような気がする。
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中国の裏側がよく分かった。
自分は世界史を選択して勉強していたが、このように詳しい中国の歴史については知らなかったので、この本を読むことで勉強になったことが多々あった。
文化大革命などには前から興味があったので、これを機により勉強していきたいと感じた。
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ある一族の三姉妹を見ることで近代中国史のアウトラインが分かってしまう。
文化大革命以前も現在も大陸の汚職は変わらないようだ。孫文が早くに亡くなられたことが惜しまれる。
迷惑な隣国に対する考え方が一つ増えた。
作品自体は楽しく読める良本。
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これがやはり、ノンフィクションなのだから歴史はすごい。
そんな宋美齢は2003年に106歳で死去。合掌。
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台湾旅行に向けて、読む。史実を頭の中で整理するのに有意義だった。三姉妹のそれぞれの個性の際立ち。美齢についてはこの人あんまり好きではないと読みながら思ったが、最終的には時代に翻弄されただけなのかなとも思えた。三姉妹、特に慶齢・美齢の強さ・有能さ(正しいとは限らないが)は読みごたえがあった。三姉妹とも容姿端麗。DVDもみよっと。
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清国滅亡後の中国では国民党と共産党が協力して抗日を戦い、終戦を経て蒋介石の国民党は台湾に退き、毛沢東率いる共産党が中国の覇者となる。蒋介石婦人の宋美齢を含め、国民党幹部の贅沢三昧が目につく、国民から見放された一族はそのつけを払わされるはめになる。孫文の妻、慶齢は最後まで共産主義に肩入れをするが晩年はむくわれることはない。
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宋家皇朝を日本語字幕なしで観て、わけがわからなすぎて補助本として読んだ。中国と台湾、共産党と国民党、孫文と蒋介石についてなにも知らなかったことを知らされたような感覚をうけた。いまだわからず。。。もっと勉強しようと思ったわ。とても興味深い。
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「宋姉妹」伊藤純・伊藤真著、角川文庫、1998.11.25
224p ¥500 C0121 (2017.10.29読了)(2006.09.23購入)(1999.07.05/8刷)
副題「中国を支配した華麗なる一族」
【目次】
第1章 孫文と宋家の三姉妹
第2章 三姉妹の訣別
第3章 王朝の栄華
第4章 王朝のファーストレディ
第5章 「宋王朝」の抗日戦争
第6章 美齢、アメリカを席捲
第7章 王朝の終焉
☆関連図書(既読)
「李鴻章」岡本隆司著、岩波新書、2011.11.18
「孫文」深町英夫著、岩波新書、2016.07.20
「中国の歴史(12) 清朝二百余年」陳舜臣著、平凡社、1982.12.15
「中国の歴史(13) 斜陽と黎明」陳舜臣著、平凡社、1983.03.07
「中国の歴史(14) 中華の躍進」陳舜臣著、平凡社、
「長征-毛沢東の歩いた道-」野町和嘉著、講談社文庫、1995.06.15
「日中戦争」古屋哲夫著、岩波新書、1985.05.20
「日中戦争 新版」臼井勝美著、中公新書、2000.04.25
「満州事変から日中戦争へ」加藤陽子著、岩波新書、2007.06.20
(「BOOK」データベースより)amazon
二十世紀が始まろうとしていた中国で三人の姉妹が産声を上げた。財閥の娘として生まれた彼女たちは、アメリカで豊かな青春時代を過ごす。そして帰国した三人は、それぞれの伴侶を求めた。長女靄齢は財閥・孔祥煕へ、次女慶齢は革命家・孫文へ、三女美齢は政治家・蒋介石へ嫁いだ―。これはまた、彼女たちの人生の大きな岐路であった。様々な思惑が錯綜する、革命という時代のうねりの中で、それぞれに愛憎と確執を抱きながら生きた三姉妹。ときにしたたかに、ときに純粋に、己の信じる道を生きた三人の運命を描きつつ、激動の中国史を活写した、出色の歴史ノンフィクション。
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激動の時代に生きた宋三姉妹の激動の人生をエピソードを踏まえ赤裸々に描いている。この三姉妹無かりせば、今の中国・台湾も大きく異なっていたであろう事は間違いない。華麗なる一族かもしれないが、時代に翻弄された三姉妹でもある。