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商品説明
先進資本主義社会に共通してみられた経済的反映が翳り始めた1970年代。それを境に生まれた「福祉国家の危機」論とはなにか? 福祉国家の諸問題をさまざまな社会政策と絡めながら究明する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
武川 正吾
- 略歴
- 〈武川正吾〉1955年東京都生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。現在、東京大学大学院人文社会系研究科助教授。著書に「福祉社会の社会政策」などがある。
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紙の本
福祉国家の危機とその未来をソーシャル・ポリシーの立場から明快に分析
2000/10/06 15:22
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:堀 勝洋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は,我が国におけるソーシャル・ポリシー研究の第一人者である著者が,福祉国家及び我が国独自の「社会政策学」に関し,ここ十数年間に発表した論文4編に書き下ろしの論文1編を加えて出版したものである。したがって,本書は必ずしも体系的に論述されているとはいえないが,福祉国家と「社会政策学」という2つのテーマを相互に絡ませながら,明快かつ詳細な分析を加えている。今後我が国の福祉国家・福祉社会を論ずるに当たっては,必読の文献といえよう。
第1章「労働経済から社会政策へ」では,我が国の「社会政策学」が大河内理論以来労働政策に限定されてきたとし,これが国際的にみて特異であることを,豊富な参考文献によって実証している。第2章「福祉国家の危機と繁栄の80年代」では,1970年代後半から80年代にかけての福祉国家の危機という新しい事態に対し,新保守主義,古典的な福祉国家批判論者,マルクス主義者及び社会民主主義者が,どのように批判しあるいは擁護したか,また実際に福祉国家がネオ・コーポラティズム及び新保守主義によってどのように再編されたかが詳細に論じられている。ただし,福祉国家の危機が叫ばれ見直された割には,財政支出をみると福祉国家が維持されたことを実証している。
この時期を振り返り,危機管理システムとしての福祉国家は不変であったと結論づけている。第3章「福祉国家の未来」は本書のハイライトをなす部分であり,まず1990年代の福祉国家の再編の動向が英国,スウェーデン,米国,欧州連合(EU)などについて述べられる。次いで,福祉国家における資本制と家父長制との関係を分析するとともに,福祉国家がより深層において成長問題とフレキシビリティー問題に直面していることを解き明かす。
ここで成長問題とは,福祉国家がその存続のために要請する成長の達成が困難となっている事態を指す。フレキシビリティー問題とは,福祉国家が生産及び消費の両面においてさまざまなフレキシビリティーの要求にこたえなければその存在が困難になるという事態を指す。さらには,今後福祉国家は英米モデルと欧州モデルへと収束する可能性と,前者が後者を駆逐する可能性をも示唆する。本章は,福祉国家論を超えて,現代社会論ないしは文明論ともいうべきレベルに達している。
第4章「労働の未来と福祉国家」では,福祉国家の未来がどうなるかは,従来指摘されてきた高齢化よりも,労働の未来がどうなるかにかかっていることを指摘する。その上で,雇用労働,家事労働,ボランタリー労働の将来の方向について考察を加える。最後の第5章「転換期の社会政策研究」では,1973年の石油危機以後の四半世紀の「社会政策学」を総括し,第1章で指摘した労働政策の学としての性格が依然として残され,「社会政策学」の再編がなされなかったとしている。
(C) ブックレビュー社 2000