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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.7
- 出版社: 大和書房
- サイズ:20cm/133p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-479-67030-0
紙の本
大人にしてあげた小さなお話
著者 岸田 今日子 (筆)
ひとの心の中にひそむ愛と毒に満ちた21のお話。色とりどりの花のような、香り高いお菓子のような、光り輝く宝石のような、小粋なショートショート。「時の記憶」(マガジンハウス ...
大人にしてあげた小さなお話
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商品説明
ひとの心の中にひそむ愛と毒に満ちた21のお話。色とりどりの花のような、香り高いお菓子のような、光り輝く宝石のような、小粋なショートショート。「時の記憶」(マガジンハウス 1992年刊)などから再録・訂正加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
あしおと | 8-11 | |
---|---|---|
あいびき | 12-13 | |
遠い日 | 14-15 |
著者紹介
岸田 今日子
- 略歴
- 〈岸田今日子〉1930年東京都生まれ。女優として舞台、テレビ、映画などで活躍中。執筆や朗読の分野でも高い評価をうけている。98年「妄想の森」で日本エッセイストクラブ賞を受賞。
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紙の本
名作童話の結末は、本当はこうだったのかもしれない。朗読に耳を傾けるように読む、岸田流21物語の味わい。
2000/08/21 21:15
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投稿者:片岡直子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「お妃さまがお怒りにならなかったので白雪姫は森へ連れ出されることもなく、森へ行かなかったので七人の小人に逢いもせず、七人の小人に逢わなかったのでお留守番をしなくてもすみ、お留守番をしなかったので毒リンゴを食べさせられもしませんでした。そんなわけで、毒リンゴがのどにつかえている美しいお姫さまを見つけるはずだった王子さまは、森の中を散歩しただけで、お城へ帰っておしまいになりました」。
『白雪姫』の別物語の、『鏡』はこうして展開してゆく。
こんな本は読んだことがなかった。残酷なのに甘くて、ちょっとはみ出ているようで、物語の神髄のよう。日頃、あまり怖い本を読まないので、本書が、とても怖かった。朗読する岸田さんの顔と声を思い浮かべながら、読んでみた。
最初、「せめて足音だけでも置いて行ってね」(『あしおと』)と、さらりと始まる本書は、作品を追う毎に、どんどん怖くなってゆく。つかまえてみたら、ストーカーは最も身近な人だったというような、現在のドラマには、ありがちな展開の『繃帯』はすでに、1985年に発表されていたものだし、失踪した関根恵子さんが登場する、『ミスターヴラッドの鋏』は、ちょうど「七月十九日の夜」に読んでいたのでぎょっとした。
何と言っても、前半の圧巻は、「アメリカでは、もうホモはかくれた存在とはいえない。そしてそれと同時に、男から見離された女たちが動物と愛し合うことも、公然の事実になりつつある」という設定の『再会』だろう。ネタがほとんど最後までばれなかったせいもあり、楽しめた。『面白い握手の仕方』をするアメリカ人が、実は□だったなんて!
後半の最初の『セニスィエンタの家』は、衝撃的な近親相姦のシンデレラの別物語。
『七匹目の仔山羊』は、「わたし」が、夏を過ごす山小屋の別荘で生まれたばかりの本物の仔山羊を見て、「その細く頼りなげな脚が今にも折れはしないかと、はらはら」した夜に、ちょうど母親から、『七匹の仔山羊』の、お話を聞かされたところから、疑問がわく。「あの細長い脚が二十四本、折れもせず、狼のお腹の中に収まってしまうなんて有り得ない」。
やがて、別荘の管理をしている、「つうさん」から、真実を知らされる。
「一番小さな七匹目の仔山羊、時計の中にかくれていた仔山羊は、何もかも見てしまった。気取り屋だった大兄さんが、あっというまにつかまって、臓物を引き出されるのを。優しかった中兄さんが、・・・」と、七匹目の仔山羊が、まのあたりにした惨状が語られる。そして、その七匹目の仔山羊が、意外な行動に出て・・・。というように、定番の名作童話から、岸田さん流の真実が引き出され、ぎょっとさせられる。
岸田流別物語は、はまると嬉しくて、クセになる。 (bk1ブックナビゲーター:片岡直子/詩人・エッセイスト 2000.08.21)