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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.7
- 出版社: せりか書房
- サイズ:20cm/358p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-7967-0227-X
- 国内送料無料
紙の本
女の謎 フロイトの女性論
女性とはなにか、女性はいかにして作られるのか。フロイトのテクストを丹念に検討しながらその矛盾に満ちた女性観を独自の視点から分析・解読することで、複雑多様な女性性や女性のセ...
女の謎 フロイトの女性論
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商品説明
女性とはなにか、女性はいかにして作られるのか。フロイトのテクストを丹念に検討しながらその矛盾に満ちた女性観を独自の視点から分析・解読することで、複雑多様な女性性や女性のセクシュアリティの本質に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
サラ・コフマン
- 略歴
- 〈コフマン〉1934〜94年。パリ生まれ。パリ大学の哲学教授。アメリカ各地の大学で客員教授も務める。著書に「窒息した言葉」「人はなぜ笑うのか?」など。
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紙の本
女の謎を解明しようとしたフロイトが陥った穴、あるいはフロイトという男の謎
2000/10/09 00:15
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:上野昂志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
フロイトは、フェミニストたちに嫌われていたらしい。
まあ、それもわからなくはない。あまりもてそうもない顔をしているくせに、「女性の超自我」は男のそれと違うから、男女の立場も価値も完全に等しいはずはない、というようなことを主張する男が、フェミニストから嫌われるのは当然だろう。
あるいは、婚約者に向かって、「家庭を取り仕切り、子どもを育てしつけることは、まるまる人間ひとりを必要とするから、どんな職業につくことも問題外だ。このことに関してはきみもぼくと同意見だろうと思う」なんて手紙を書き送る男は、いまだったら、それだけで相手の女性から婚約破棄を申し渡されるかもしれない。
だから、フェミニズム運動の初期には、フロイトが創始した精神分析そのものが全面的に否定されたという。しかし、やがてその必要に目覚めたフェミニストたちは、「フロイトを再利用」するようになったが、その際にも、彼の「女性差別」に釘を刺すことを忘れなかった。そのあたりの学説史的なことについては、よくは知らないが、かなり乱暴な否定がなされたらしい。
訳者によれば、本書の著者であるサラ・コフマンは、「広い意味でのフェミニズムに属している」ようだが、フロイトを一刀両断にするというのではなく、ドイツ語原文に寄り添いながら、それを内側から解体する姿勢をとっているといえよう。つまり、著者自身がいうように「フロイト自身がわれわれに教えてくれた解読方法に従って、彼の言説の中で彼が言っていること彼が実際に行っていることとを見分けながら彼のテクストを読む」という方法である。おそらく本質的な批判というものは、こういうかたちで成されたときにもっとも威力を発揮するだろうと思われるが、そのぶん読みこなすには、かなり骨が折れる。訳者がいうように、「フロイトの著作をかたわらにおいて読む」のが正しい読み方なのであろう。
一介の評者としては、そこまでできないのだが、それでも、コフマンが、フロイトの夢分析の手法を使って、彼の言説を支える「欲動」を明らかにしている点など、なるほどと納得させられる。しかし、全編を通読しても、フロイトの女性論はこうだ! というような明快な結論が得られるわけではない。むしろ、逆に、フロイトは、なぜ、こんなふうに考えたのかということが、謎として浮上してくるという思いのほうが強い。とりわけ、彼の女性論の核心にあると思われる、女性の「ペニス羨望」というのがわからない。それは、コフマンの解読がわからないというのではなく、フロイト自身が、なぜ「ペニス羨望」ということを、あれほど重要視したのか、それがわからない、ということなのだ。それは、こちらがフロイトほど真剣に「女の謎」に取り組んでいないからでもあろうが、それにしても不思議である。そこに、フロイトという男自身の謎がある。 (bk1ブックナビゲーター:上野昂志/評論家 2000.10.09)