「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:185,020円(1,682pt)
- 発送可能日:購入できません
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
収録作品一覧
文学と政治 | 秋山駿 対談 | 11-26 |
---|---|---|
思索的渇望の世界 | 吉本隆明 ほか鼎談 | 27-120 |
戦後文学と思想性 | 白川正芳 対談 | 121-133 |
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
世界でも稀有な前衛的作家の全19巻+別巻1がいよいよ残り数か月で完結
2000/10/05 00:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安原顕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『埴谷雄高全集』は全19巻+別巻1ゆえ、いよいよ残り数か月で完結だ。この『全集』に限らず、『全集』とは、ほとんど受注生産、最終配本が終わって数か月もすれば、「全巻揃い」は無理となり、10年もすれば古書店で、定価の倍にもなったりするからだ。むろんそんなことより埴谷雄高が世界でも稀有な前衛的作家ゆえ、買って欲しいのだ。日本の文学的風土はいまなお「私小説」が主流、観念的、思弁的な小説は軽んじられ馬鹿にされ続けてもいる。中でも埴谷雄高はその典型例で、ある時、「埴谷雄高が好き」と表明するや、「あんなもん作家ではない。『死霊』など、私/俺にも書ける」と金井美恵子と三浦雅士に嘲笑されもした。この「15巻」にはその昔、文芸誌『海』で、ぼくが企画した埴谷雄高へのロング・インタヴュー『思索的渇望の世界』も含む全20本もの対談、座談会が収録されており懐かしく再読した。埴谷雄高はまた「難解な作家ゆえに偉い」との身贔屓、誤読から、一種のカリスマ的存在として神格化する読者、批評家もいるが、ぼく個人はそうした両者にうんざりしつつ、一人密かに愛読していた。言うまでもなく未完の代表作『死霊』を最も高く買う。「六章」以降は明らかにパワーダウンしているが、それでもこの『死霊』、世界文学たり得る秀作だと思う。内容は『カラマーゾフの兄弟』同様、四人の兄弟の物語。主たる登場人物は悪徳政治家三輪広志、正妻の息子、高志と与志、妾腹の息子、首猛夫と矢場徹吾である。そして作者はそれぞれの兄弟が「存在」「意識」「社会」の転覆作業についての内面(思想)吐露が山場となるよう構成し、四人の兄弟に、ヴィヨンを唄ったスウィンバーンの章句「Villon、our sad bad glad mad brother’s name!」から四つの要素、「悲哀は三輪与志、悪は高志、歓びは首猛夫、狂気(黙狂)は矢場徹吾」の役割にした。こうした小説を、米粒すらない敗戦の翌年、1946年から『近代文学』に連載した心意気にまず打たれるが、この時は結局「第四章」で中断する。しかし、それから26年後の1974年(作者65歳)、突然「第五章」を『群像』に発表、以後は数年置きに書き継ぎ、「第九章」(85歳)まで行くが、97年(87歳)、著者の死とともに未完に終わった。