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- カテゴリ:一般
- 発売日:2000/09/07
- 出版社: 岩波書店
- サイズ:20cm/298p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-00-026540-7
- 国内送料無料
紙の本
呪術・儀礼・俗信 ロシア・カルパチア地方のフォークロア (岩波モダンクラシックス)
著者 P.G.ボガトゥイリョーフ (著),千野 栄一 (訳),松田 州二 (訳)
ロシア・カルパチア地方を巡って行った民族誌学調査の結果にもとづいて、カルパチア地方の農民たちの歳時記と四季折々の祭り、結婚・葬式の儀式、夜の精や魔女にまつわる俗信などにつ...
呪術・儀礼・俗信 ロシア・カルパチア地方のフォークロア (岩波モダンクラシックス)
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商品説明
ロシア・カルパチア地方を巡って行った民族誌学調査の結果にもとづいて、カルパチア地方の農民たちの歳時記と四季折々の祭り、結婚・葬式の儀式、夜の精や魔女にまつわる俗信などについて解説する。88年刊の再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
P.G.ボガトゥイリョーフ
- 略歴
- 〈ボガトゥイリョーフ〉1892年ロシア生まれ。ソビエトの民族誌学者。モスクワ大学歴史・文献学部卒業。スロバキアのコメンスキー大学助教授等を経て、プラハのカレル大学等の名誉教授。
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「ついでに申し上げておけば、教会の教義や儀礼にも訳の判らぬものがけっこうある」らしい
2000/10/11 00:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:赤塚若樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
数年前、痛みと恐怖のあいだを揺れ動くこと数日、意を決して歯医者に直行した。左奥上の親不知である。白衣の天使に治療室に招き入れられたが、まもなくそれが悪魔の化身だったことに気づく。にっこり笑って麻酔の入った最終兵器を医者に手渡すではないか。激痛が走り……ペンチかやっとこか……(以下、自粛。)これです、と医者にいわれて我に返り、差し出された手をみると、そこには、米粒くらいの歯があるだけだった。それまでの大げさな怖がりようを我ながら恥ずかしく思いはじめたその矢先に、どうしますか、と問われた。何とはなしに、縁の下にでも投げましょうか、と答えたところ、医者は大笑い。いわく、今度は立派なのが生えてきますよ。
本書を読んでいたら、どういうわけか、このときのことを思い出した。俗信にもとづく呪術行為か、とひとりうなずきながら、「類感呪術」(行為がしかるべき変化をともなって再現される呪術)、「積極的呪術」、「有契の呪術」(いわれのわかっている呪術)、「実利的呪術」など、この事例があてはまりそうな分類をさがしてみたが、いずれにしても、その「意味」ないし「望みの結果」が何なのかを忘れてしまっていてはどうしようもない。
『呪術・儀礼・俗信』をごく簡単に説明すれば、こうした「呪術」の形態などの観点から「ロシア・カルパチア地方のフォークロア」を分析した著作とでもいえるだろうか。あつかわれているのは、祝祭日、子供の誕生と洗礼、結婚、葬式のさいにその地方で行なわれる儀式や呪術的儀礼、ならびに霊異や妖怪にまつわる体験談や俗信などで、著者ボガトゥイリョーフは、これらを共時的・静態的研究の立場から記述し考察し、農民がそれをどのようにとらえているかをあきらかにしようとしている。
いまとなっては、いくぶん時代がかった感じのする「共時的」なる言葉だが、原著の刊行が1929年という事実を考慮すれば、そのような方法の意義が強調されている点は、むしろ積極的な意味をもつにちがいない。本の帯にあるように、これはまさに「文化記号論の先駆的著作」であり、これが属するシリーズ名(「岩波モダンクラシックス」)が端的にしめしているように、すでに「古典」となっているのだから(ちなみに、邦訳の初版は1988年)。
それゆえに、この本は、「古典」としての歴史的価値に関心を寄せながら読んでもいいだろうし、文化記号論と呼ばれる領域への入口をもとめながら読んでもいいだろうし、言語学に着想を得たボガトゥイリョーフの民族誌学の分析の方法を学ぶために読んでもいいだろう。さらにいうなら、こうした学問的な立場からははなれて、その都度あげられている数多くの「呪術・儀礼・俗信」の例だけをみていっても悪くないかもしれない。たぶんそれでも妖怪がらみの章を筆頭に、とても興味深く読むことができるだろう。
「古典」だからといって、なにもありがたがってばかりいる必要はない。じつにいろいろな読み方ができる本なのだから、好きなように楽しんでしまえばいいではないか。 (bk1ブックナビゲーター:赤塚若樹/現代小説・詩学・表象文化論 2000.10.11)