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紙の本
いまどきで、あり続けること
2000/11/04 20:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桜井まい - この投稿者のレビュー一覧を見る
こどもというのは、とんでもないものだと思い知らされる一冊である。
ビッグコミックスピリッツでの連載から、すでに10年以上が経過しているが、その内容はまるで古さを感じさせない。現代に至っても尚、いまどきであり続けているのは、作者の力量によるところが大きいのではないだろうか。
対象年齢を意識させない漫画というのが、市場においてどのくらいのシェアを誇っているのか分からないが、本書はその中でも突出した存在であることは間違い無い。
主人公であり、平凡家庭に育つ平凡なこどものキリ太。悟りの境地を開いたかのような、独特の感性を持つツグム。計算高く、自己顕示欲の強いタクミ、というように人物設定も実に多彩で興味深い。
彼らは、なにげない日常の一幕を演じているわけだが、それは読み手の経験と時折、オーバーラップする部分がある。
小学校のころ、出された宿題に苦悶していたこと、弟のおやつを取ってしまったこと、嫌いな女の子に好かれたことなど、大人になって考えてみると一見他愛ない出来事だが、当時は、なんだかタイヘンだったな、と妙に感慨深く思える。
ノスタルジックという感情は、意外とこういうところから生まれるのかもしれない。
久玖キリコの著書には、オトナ心をくすぐる表現が多用されるが、本書にもそれは見受けられる。ある場面では、小学生一平がリルケの薔薇を暗唱し、姉の小間使いのごとき竹蔵は、自我の確立を試みようとしている。
今、まさにこども時代をリアルタイムで過ごしている読者は、そういった大人向けの表現を、どのように受けとめているだろう。
意外に、すんなり読み飛ばしてしまっているのかもしれない。こどもの頃の私なら、そうした筈だ。
すべての年代に向けた読みやすさが、いまどきのこどもの、最大の利点と言えるのではないだろうか。
こども向けアニメの暴力シーン等が問題になる昨今において、これは自信を持って薦めることができる。