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紙の本
雪に閉ざされた街に言葉は吸い込まれていく
2001/02/14 19:55
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投稿者:ゆぎり - この投稿者のレビュー一覧を見る
冬の雪の降りしきる夜は動きを静止させる。そして、雪は音を吸い込む。雪と夜の闇の両方に音は吸い込まれていく。そこでは、何を語ろうと何を叫ぼうと、発した音は吸い込まれていってしまう。私が冬、特に雪に抱く印象はそんなものだ。
氷河期の到来によって半世紀も冬に閉ざされた都市。放課後、図書館で眠り込んでいるうちに僕は、冬の教室に閉じ込められてしまった。「千野くんは夏をみたことがある?」クラスメイトの嶝崎人魚(とうざきにんぎょ)はそう問い掛けてきた。この冬の都市で生まれ育った高校生の人魚は夏を見たことがない。だから「ぼくがいつか君に夏を見せてあげるよ」そう約束した。
ここは死が覆う街。長い冬に囲まれ、この街では自殺がよく起こる。「だって死はここではたった一つの権利よ」人魚ははっきりと言い放った。
ある日、高校の女子生徒が胸を銃で撃たれて死んだ。そして、その後一週間の内に立て続けに3人の生徒が殺されていく。
この物語はいったい何を語ろうとしているのだろう?日常の一こまのように起こる人の死。そこに見出すことのできるのは、感情を伴った死ではなく、記号化された死にしかすぎない。閉ざされたままどこにも出口のない少年少女。彼らはどこにも行くことはできない。
語りかける声も降り続く雪に吸い込まれていく。