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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.10
- 出版社: 早川書房
- サイズ:20cm/260p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208311-5
紙の本
脳の時計、ゲノムの時計 最先端の脳研究が拓く科学の新地平
著者 ロバート・ポラック (著),中村 桂子 (訳),中村 友子 (訳)
ものを感じ、意識し、覚える。これらの活動のメカニズムに大きな役割を果たす「体内時計」の秘密とは。脳とゲノムと時間の驚くべき関係を感覚・意識・無意識・記憶などの最新研究と鋭...
脳の時計、ゲノムの時計 最先端の脳研究が拓く科学の新地平
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商品説明
ものを感じ、意識し、覚える。これらの活動のメカニズムに大きな役割を果たす「体内時計」の秘密とは。脳とゲノムと時間の驚くべき関係を感覚・意識・無意識・記憶などの最新研究と鋭い洞察で解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ロバート・ポラック
- 略歴
- 〈ポラック〉分子生物学者。コロンビア大学生物科学部元学部長。ジェイムズ・ワトソンのもと、がんウイルスを研究。著書に「DNAとの対話」がある。
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紙の本
日本経済新聞2001/1/7朝刊
2001/01/10 21:16
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投稿者:中村雅美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第二章に「失われた時間」のことが書かれている。人間の感覚と意識に関することである。
失われた時間を示した実験は今から数十年前に行われた。脳に電極を埋め込んだ人の腕をつねると、その人は「痛い」と叫ぶ。つねった刺激が神経を伝って脳に達するには百分の一秒しかかからないが、叫び声は刺激の約半秒後に出てくる。本人はつねられてすぐに叫んだつもりなのに。
「痛い」と言うのは、刺激を意識した時である。そして、刺激が神経を伝わる時間との差が失われた時間である。この間に脳は蓄積したさまざまな記憶を混ぜ合わせ、意識を組み上げている。そしてわれわれは、失われた時間を自覚することはない。古くから知られている現象だが、改めて教えられると興味深いことは多い。
原著の表題である「THE MISSING MOMENT(失われた時間)」はここからとっている。六章構成で、前半の三章では「感覚」「意識」「記憶と無意識」というように、人の脳の働きを中心に書いている。
意識をはじめとする知的活動や行動は体内時計に支配されているが、著者はこの不思議な時計のことを綿密に考察している。また、時間の「ずれ」をみて、「今」というのはどちらのことだろうか、というやや哲学的な問いも投げかけている。後半の三章では「侵略の恐怖」「暴動の恐怖」「死の恐怖」のタイトルで、感染症、がん、老化と死といったわれわれが直面する課題に迫っている。日本版の表題にある「ゲノムの時計」はやや象徴的な言葉のようで、ゲノム(遺伝情報のセット)の研究成果が、これらの恐怖にどのように対応するかを語っている。
著者が書いているように、知識と英知とは別のものである。現代は科学や医学、体に関する知識は飛躍的に増えている。半面、これに逆比例するように英知を働かせることが少なくなったような気がする。蓄えた知識を生かして英知を働かせる——そんな能力が現代人には求められることを教えてくれる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000