日本近代林政年表 １８６７−１９９９

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投稿者：木村　智博　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　環境問題の高まりから，近年，森林に対する関心が強まっている。本書は，明治から1999年にかけて，わが国の林業・林政をめぐる動きを追った年史。林業・林政に限らず，さまざまな分野で年表類が刊行されているが，この年表は読むことを主体にしている。
　わが国が歩んできた，人と森林の関係を連綿とつづった一大叙事詩。その時その時の動きが手に取るようにわかる。中央の動きだけではない。地方での出来事も収録し，地域に応じた林業・林政のあり方，その地域に根差した独特の森林文化，林業と関連産業の姿にふれることができる。「よく，ここまで丹念に集めたな」というのが率直な感想。この130年間になにが変わり，なにが変わらずに大切にされているのかを記す。かけがえのない森林を後世に引き継ぐための著者の思いがそこにはある。
　興味を抱いたのは，災害に関する記述。通常の年表なら個条書きで済ますところ，ここでは政府や各団体の政策を盛り込み，今後の教訓に生かせる。兵庫県南部地震をはじめとする地震災害，台風や水害，火災などの事例を取り上げ，林業関係を含めた被害状況を詳細に記す。各種原典に当たり，歴史学者の作業を徹底させ，出典を明示する。
　埋もれた資料・史料をひもとき，土地利用，農政，農林業の変遷を振り返る。著者によれば，この年表作成に40年近くを費やした。その甲斐あって，ここに充実した年表が完成した。人類の財産とでもいうべき本書は，単に事実を羅列するだけではなく，その時代の背景に踏み込み，森林と人間の営みをみつめる。索引には33,000余項目を掲げ，引いて調べる年表としても使える。また，各事項をイメージしやすいよう，写真・図版は約700点を厳選。御料林に関連した政策も詳述。「社会一般・農政」「林政」「諸外国の動き」などの項目別に分ける。2000ページを超える大著で，CD−ROM版の刊行も期待したい。同じ著者の『総合年表日本の森と木と人の歴史』（日本林業調査会 1997年刊）との併用が望まれる。
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