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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.12
- 出版社: 角川春樹事務所
- サイズ:18cm/214p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-89456-272-1
紙の本
Domesday (ハルキ・ノベルス)
著者 浦浜 圭一郎 (著)
2001年10月22日。大音響とともに突如出現した「ドーム」によって、外界から隔離されてしまった東京のオリオン・ガーデン。閉ざされた世界の死闘の行方は? 第1回小松左京賞...
Domesday (ハルキ・ノベルス)
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商品説明
2001年10月22日。大音響とともに突如出現した「ドーム」によって、外界から隔離されてしまった東京のオリオン・ガーデン。閉ざされた世界の死闘の行方は? 第1回小松左京賞佳作受賞作。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
浦浜 圭一郎
- 略歴
- 〈浦浜圭一郎〉1963年大阪生まれ。「Domesday」で小松左京賞佳作受賞。
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紙の本
へ〜終り方が意外な一種のユートピア(ディストピア)小説???
2001/03/27 18:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品をカテゴライズすると、「スプラッタ・ホラーSF」だそうであるが、ホラーとしては全然怖くないです、はっきり言って。スプラッタ・ホラーSFという色づけは、どうかと思う。そういう際物的なカテゴリーに押し込めなくとも、十分SFとして堪能できる作品である。
突然あらわれ人も建物も「ばさっと」切断してしまう「ドーム」。このドームにより、外界から完全に遮断された半球の空間は、一種の閉塞した「エコスフィア」を形成する。その中には、偶然その場所に居合わせた100人ほどの人間が閉じこめられてしまう。この閉塞した状況に追い打ちをかけるのが、閉じこめられた人が「安息の眠りにつくこと」=自殺することすら許さない「天使」である。
この「天使」について、作中SF作家の大泉は、こんな風に言っている。
「あんたらが……天使と呼んでるあの球体は一種のメンテナンス・マシンなんだよ。せっかく採取したサンプルが途中で死んだり、腐ったりしたら意味がなくなる。だかあら、あれはあサンプルが傷んだら補修するために飛んでくるんだ。こわれた機械を修繕するために。」
一言で言えば、この「天使」とは、エコスフィアを維持し、環境を維持する「マクスウェルの悪魔」なのである。死んだ人間を放置することなく、その人間を別種のホメオスタシス(体内恒常性)を植え付けられた「復活者」としてドーム内に戻し、「エコスフィア」内の生息数の維持しているというのである。この記述から想起されたのは養蜂箱だ。きっと、養蜂家が適当に死体の整理などの管理をする養蜂箱。この作品の登場人物達は、こんな養蜂箱に閉じ込められているのである。いや〜、辛い設定です。
ただ、エンディングは意外であった。全員死ぬというか復活者になるか、何かしらドームからの脱出を示唆する終り方をするのかなと思っていたのだが、エントロピーが増加も減少もしない、永久輪廻の熱的死の状態で終わる。滅びもないが救いもない。ちょっと意外な終り方である。
紙の本
映像的な恐怖・止まりません
2001/02/09 17:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桐矢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一回小松左京賞佳作受賞作品。帯にある通りの「ノンストップホラー」で、ページをめくる手が止まらない。映像的な作品だ。
西暦2001年、突如出現した「ドーム」によって外界から一切遮断されてしまった、オリオンガーデン。さらに、ドームの壁面から、のちに「天使」と呼ばれるようになったなぞの球体が人々を襲い始める。助かった人々も、閉塞状況に耐えかねて自殺した高層マンションの住人が、「ゾンビ」として再生されるのを目の前にして、想像を絶する恐怖に最後の希望も奪われていく。
作中で、SF作家や、あやしい新興宗教の教祖が、このドームについての考察を試みているが、それより何より作者が一番描きたかったのは、人々の「恐怖」ではないだろうか。
ホラー映画にばかり出されてうんざりした女優に向けられた映画監督の、高尚な文芸作品を痛烈に批判するセリフが作者の思いを代弁しているような気がした。
「(前略)お子様向けのおとぎ話やホラー映画は人の脳みその奥深く、原始的というより、神話的な部分にまで届く力を持ってるからさ。それにひきかえ、純文学が原作のくだらねえ文学作品なんてもんは、薄っぺらな脳の表面をほんのしばらくくすぐるだけがせいぜいだ。(後略)」
紙の本
SFへの批評でもある、ノンストップホラーSFの佳作
2000/12/14 04:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風野春樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一回小松左京賞佳作受賞作品。
タイトルは"DOOMSDAY"のスペルミスではない。題名通り、これは「ドームの日」の物語なのだ。
まず、設定がすごい。ある日、東京に突如巨大なドームが出現。高層マンションを含む直径376メートルの範囲が外界から隔離されてしまう。ドーム内には「天使」と呼ばれる無数の球体が出現して人間を連れ去っていく。天使に連れ去られた人間はドームに飲み込まれ、はじめは白かったドームは、瞬く間に肉色のドームと化す。ドーム内に残った生存者は100人余り。しかも、「天使」はそれ以上の人口減少を許さないようで、自殺者は無理矢理ゾンビとして復活させられ、生存者たちに襲いかかるのである。
というわけで、全編に渡ってロメロばりのスプラッタシーンが展開するホラーSFなのだが、それだけではなく、物語全体がSFというジャンルへの批評になっているところがミソ。事態についていかにもSF的な解釈を披露するSF作家は徹底的に戯画化されているし、結局のところ事態を収拾する役には立たない。価値観の相対化といえばSFのお家芸だが、この作品では相対化がSFの価値観そのものにさえ及んでいるのだ。中には、SFファンにはちょっと耳が痛い場面もあったりするのだけど。
もちろん、そんなことを考えず、ノンストップホラーSFとして読んでも充分楽しめる一冊。まだまだ荒削りなところはあるが、今後とも期待を持てそうな作家である。
(風野春樹/精神科医 http://member.nifty.ne.jp/windyfield/)