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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2000.12
- 出版社: 成文社
- サイズ:18cm/158p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-915730-26-3
紙の本
新編ヴィーナスの腕 J・サイフェルト詩集
チェコの国民的詩人サイフェルトの作品選集。作品を通じて流れるのはこの世の美しきものすべて、愛と死の織りなす人生模様や不条理を日常的な言葉で表現しようとする努力である。桐原...
新編ヴィーナスの腕 J・サイフェルト詩集
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商品説明
チェコの国民的詩人サイフェルトの作品選集。作品を通じて流れるのはこの世の美しきものすべて、愛と死の織りなす人生模様や不条理を日常的な言葉で表現しようとする努力である。桐原書店86年刊の増補改訂。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
J.サイフェルト
- 略歴
- 〈サイフェルト〉1901〜86年。プラハ生まれ。チェコの国民的詩人。ノーベル文学賞受賞。著書に「涙の中の町」「この世の美しきものすべて」がある。
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紙の本
この艶やかで、やさしい言葉たちのあとをゆっくりと追っていきさえすればよい
2000/12/28 15:15
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投稿者:赤塚若樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サイフェルトはそのむかしある一編の詩を「ヴィーナスの腕」を呼び、その詩を収めた詩集全体にもこのタイトルをあたえた。よほど気に入っていたのだろうか、その後アンソロジーなどを出すときにも、本のタイトルとしてその言葉をもちいることがあったようだ。「ヴィーナスの腕」。最初にそう呼ばれたのはつぎのような詩だった——
「ものうげな冒険家が/岸辺に座り/波に語るのは/むなしい物語/実際それはただ/手のひらの一握りの風のむれ/ワインの中のくずれた真珠/不死の恐怖だ//しかしそれは/彼の本当の仕事ではない//(…)//しかし美の誕生に目をみはり/その破壊に涙し/流れる水のほとりで/永遠のためらいをふたたび押さえてくれる/新しい春の花を待ち/ミロのヴィーナスの両の手のひらに/ひたすらぬかずく//ああ悲しいかな それが/彼の本当の仕事なのだ」
じつは1986年に日本でも、この詩をふくむサイフェルトのアンソロジーが刊行されており、そのタイトルにはほかでもない『ヴィーナスの腕』が選ばれていた。しかも表紙には、おそらくその「ことば」にもっとも相応しい日本の芸術家、池田満寿夫がその詩集のために描いた絵がもちいられており、そこにあらわれたほのかなエロティシズムが、サイフェルトの詩情とじつに見事な調和をみせていたのだ。こうしたすばらしいコラボレーションの例はそう多くはないだろう。
ところが、この詩集はすでに絶版になっているというのだ。先ごろ、とある理由からサイフェルトについてしらべていたときに、この事実を知り、とても残念に思い、それと同時に少々危惧の念を抱きもした。ノーベル文学賞受賞という経歴はおくとしても、サイフェルトが20世紀チェコ文学を代表する詩人であることはまちがいなく、このアンソロジーはその全体像——経歴や取り巻く状況の説明ではなく、いわば作品自体の全体像——を知るためのほとんど唯一の手段だったからだ。さらにいえば、ただでさえ、けっして情報が多いとはいえないチェコ文学の世界に入っていく手がかりとして、これがとても適した詩集だったということもある。
こうした空白をみずから埋めるかのようにして、『ヴィーナスの腕』がべつの出版社から装いも新たに再刊されることになったというのだから、うれしいではないか。池田作品も、扱われ方はちがっていても、しっかり「本」に溶け込み、当初この詩集がもっていた趣がきちんと受け継がれている。そしてまた、このアンソロジーがおかれた環境の変化に対応して、訳詩に改訂が施されているのはもちろん、訳者がべつの場所で翻訳した詩もここにおさめられているのだからありがたい。
あとはもう、この艶やかで、やさしい言葉たちのあとをゆっくりと追っていきさえすればよいだろう。ここまで来れば、もはやチェコ文学だとか、東欧文学だとかというつもりはない。文学や芸術に関心のあるすべてのひとに読んでもらいたい、そんな詩集だ。 (bk1ブックナビゲーター:赤塚若樹/翻訳・著述業 2001.01.01)