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商品説明
エネルギー需要の歴史的推移、技術文明の変遷とエネルギー需要を解析し、現在・近未来におけるエネルギー需要予測を試みる。また、化石エネルギーを中心に個々のエネルギー資源の置かれている状況について論ずる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
西山 孝
- 略歴
- 〈西山孝〉京都大学大学院工学研究科修士課程修了。同大学教授、大学院エネルギー科学研究科。工学博士。専攻は資源地質学、資源地球化学、資源経済学。著書に「鉱物資源の現状」など。
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紙の本
21世紀の資源エネルギーを論ずるのに不可欠の統計データを提供する
2001/04/27 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1960年代末から、環境資源に関する問題が人類焦眉の課題であるという認識が一般的になった。自然環境が極度に悪化し、石炭や石油の枯渇が、いまのままの経済状態を維持するとすれば、時間の問題となり、さらに夢のエネルギー源ともて囃されていた原子力発電がもたらす危険性があなどれないことが明らかになっていったからである。
本書は、しかし、環境資源問題を考察する際の種々のデータを提供することを主眼としており、その社会的・政治的背景の解説はほとんどなされていない。科学技術文明の発展の大勢の説明に紙面は割かれているものの、率直に言って、かなり月並みである。
反面、資源についての信頼できるデータを提供しえたことは明確な功績として評価できる。わが国で資源エネルギーの消費ないし浪費が加速的に進んだのは、1960年代、70年代の、いわゆる高度経済成長期であった。経済不況下の現在でも以前と同様の経済成長が達成できるかのような議論が経済評論家によってなされることがあるが、環境資源への負荷については等閑に付されたりする。そして、最近、アメリカのブッシュ「タカ派」政権は、地球温暖化についての京都議定書を批准しないことを宣言して世界中を驚かせた。アメリカの経済的な国益のためだという。このような「論理」に、急速な近代化を推し進める中国が資源浪費国に転ずることをよしとして、追随したら地球の環境資源はいったいどうなるのか。こんなことを考えてみると、資源エネルギー問題の冷静な理解がいかに重要か分かってくるであろう。
著者によれば、石油はあと半世紀もたない。天然ガスは石油以上はもつが、それほど耐用年数が長いわけではない。石炭は2世紀以上もつ。しかし、大量の二酸化炭素を排出する点で、地球温暖化を押しとどめる要請を考えると問題が残る。こういったことを考えると、二酸化炭素を発生しない「原子力に頼らざるを得ないという考えが有力である」(94頁)。むろん、著者といえども、原子力発電の安全性、放射能廃棄物の問題は指摘している。そのうえでの結論が以上のようなのである。太陽光発電、風力発電などの自然エネルギーによる発電にも紙面は割いているが、いまだにそれほど大きな希望を託せるとは考えていないようである。
著者は「おわりにあたって」で、「これから起ころうとしている資源の枯渇は、人類が初めて経験するものである」と、述べている。私自身は、抜本的な省資源、燃料電池の改良、自然エネルギーの大規模開発などが対処策だと思うが、著者の結論は実にそっけなく、現状認識にとどまっている。本書の延長上に、ぜひとも、私たちがいかに対処すべきなのかの未来像を打ち出してもらいたいものだ。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2001.04.28)