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紙の本
近代日本の形成と日清戦争 戦争の社会史
著者 檜山 幸夫 (編著)
日清戦争は東アジアを大きく揺さぶり、日本人に「日本人意識」を芽生えさせた。各地に残る史料・日誌・墓碑などを丹念に辿り、日清戦争で日本に何が起きていたのかを詳細に解明する。...
近代日本の形成と日清戦争 戦争の社会史
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商品説明
日清戦争は東アジアを大きく揺さぶり、日本人に「日本人意識」を芽生えさせた。各地に残る史料・日誌・墓碑などを丹念に辿り、日清戦争で日本に何が起きていたのかを詳細に解明する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
日清戦争総論 | 檜山幸夫 著 | 15-90 |
---|---|---|
日清戦争と民衆 | 檜山幸夫 著 | 91-342 |
日清戦争下の宮城県 | 大谷正 著 | 344-373 |
著者紹介
檜山 幸夫
- 略歴
- 〈檜山幸夫〉1949年生まれ。中京大学法学部教授。著書に「日清戦争」他。
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東アジア近代史の転換点を日清戦争に見る、学問的レヴェルの高い画期的労作
2001/06/28 18:17
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投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
全面的な近代化=西洋化に踏み出す明治維新以前、日本は巨大な中国文明の衛星圏にあった。このことは、日本語の中で普通に使われている漢字のことを思い浮かべるだけでよい。しかし、明治のある時期以降、中国はむしろ蔑視の対象となり、近代工業国日本に従属すべき存在とまで見なされるにいたった。その転換点をどこに見るかで対立があった。ある者は、明治初期から一貫してそうだ、と説いた。ほかのある者は、日露戦争が終わるまで日本は未だ帝国主義国家としては確立していなかったと考えた。本書は、こういった対立に対して、日清戦争こそ、近代日本の天皇制が民衆を中国との戦争に駆り立てることで国民統合を図り、近代日本史のみならず、近代東アジア史の大きな転換点となった事実を政治史的・社会史的観点から詳細に確認しようと試みている。そして、その議論はきわめて説得力がある。今後の学界の里程標になることは間違いない労作である。
本書は全3章からなる。第一章は檜山氏の「日清戦争総論」である。ここでは、日清戦争が、近代天皇制国家としての日本が明治維新後初めて国民の統合に成功する大きな転機になったことを主張している。著者は、その後、第二次世界大戦での日本の敗北までの約50年を、「五十年戦争」として総括的に見る観点をも提起している。本書で最も一般性が高く、精彩に富む章である。
同じく檜山氏の第二章「日清戦争と民衆」は、主として愛知県の史料を用いながら、民衆が戦争にいかなる形で動員されたのかを詳細に跡づけている。第三章「日清戦時下の地方と兵士」は、大谷正、松崎稔、加藤聖文、本康宏史といった諸氏の筆になる。宮城県、福島県、東京府(当時)の多摩地域、愛知県、石川県などの地方出身の兵士が、日清戦争にどういったかかわり方をしたのか、またそれぞれの出身地がどういった支援の仕方をしたのかを堅実な歴史学的手法で克明に再構成している。
私は先年、北京大学から科学史の女性教授を迎えたが、彼女によれば、日清戦争、すなわち中国側から言うと、甲午中日戦争こそが、中国人が日本を単なる小国ではない大きな存在として見直すきっかけになり、その延長上で、近代西洋文化の意義を認識した大きな転換点になったという。この見方も、本書の主張を裏書きするものである。
日清戦争は、中国、日本両者のとって容易な戦争ではなかった。が、日本はこの戦争によって「舞い上がって」しまい、台湾・朝鮮の植民地化を成し遂げ、その後の中国への大々的な侵略への足がかりを作った。そして、重要なことに、今また、戦争での敗北によって痛く認識したはずの侵略の歴史を改めて正当化しようという動きが出てきている。そういった時期に本書のような良心的な会心の作品が世に出たことはまことに悦ばしい。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2001.06.29)