「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.6
- 出版社: 柘植書房新社
- サイズ:19cm/331,16p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-8068-0459-2
紙の本
フランス社会運動の再生 失業・不安定雇用・社会的排除に抗し
著者 クリストフ・アギトン (著),ダニエル・ベンサイド (著),湯川 順夫 (訳)
社会的ヨーロッパ建設にむかって再生し、成長つづけるフランス社会運動の実像を紹介し、分析し、展望する。【「TRC MARC」の商品解説】
フランス社会運動の再生 失業・不安定雇用・社会的排除に抗し
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
ヨーロッパで今最も面白く元気な国フランスの労働運動の現在を紹介する
2001/07/02 18:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代日本では小泉首相による「改革」人気が沸騰している。しかし、小泉氏は、まったく不人気だった森前首相と同じ派閥で、同じタカ派的政治理念をもった政治家なのである。「改革」が、競争至上の新自由主義的経済観の上に立ち、アメリカの共和党ブッシュ政権の東アジア軍事政策に肯定的に呼応し、憲法第9条をも否定しようとするための確実な布石となることを指摘する論者はあまりいない。マスコミが伝えるのは、首相の熱情的な(「変人的」)パフォーマンスであり、田中真紀子外相の省内官僚との確執であっても、その政治理念の危険性ではない。まことに由々しい限りである。
こういった日本と対極にある国はどこであろうか? 私が知る限り、それはフランスである。この国では、社会党を中心とする左翼政権が、多くの面白い政策を試み、ソ連邦の解体以降、沈んだ雰囲気を一掃しようとしている。たとえば、35時間労働制がその最たるものである。こういった動きを支え、中でも元気なのが、新しい労働運動の試みである。フランスの労働組合組織率は10%を割り、世界で最低レヴェルである。また、労働組合のナショナルセンターも分裂している。にもかかわらず、フランスではどうしてこのように面白い試みがなされているのか? この問いに答えようとするのが本書である。
フランスでは、これまでになかったような新しい労働運動が勃興しつつある。この動きはとくに1995年以降顕在化してきた。その年末、年金改悪などに抗する公務員のストライキが闘われ、多くの市民の支持を得て注目された。また、失業者の労働組合が組織されたり、滞在許可証をもたない外国人の人権を守る運動などが発展したりしている。意外な発想の社会運動がこういった形で始まり、若者をも引きつけているのである。
本書は、労働運動活動家のアギトンのエッセイと、哲学者でマルクス主義理論家のベンサイドの論説からなっている。実は二人とも、1968年5月のパリ革命を闘ったトロツキストである。左翼政党というと、社会党や共産党のことをすぐ思い浮かべるが、この国で90年代以降著しい伸張を見せた党派は、緑の党とトロツキスト党である。都市部や労働者地区では、共産党はトロツキストに追い抜かれつつある。新しい発想で、失業、不安定雇用、社会的排除に抗する大胆な社会運動を勃興させ、フランス社会に新風を送り込んでいるのは、実はスターリン主義と首尾一貫して闘ってきた彼らトロツキストなのである。
日本でも今の新自由主義的政治経済政策を続ける限り、大量失業の時代は遠からず到来する。また、アジアの諸民族と敵対する歴史観を温めている限り、日本は再度孤立する。首相の軽薄なパフォーマンスなどにはあまり浮かれない方がよいだろう。久しぶりの、文字通り「元気が出る本」が本書なのである。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2001.07.03)