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紙の本
今はもう消えてしまった、古い、懐かしい東京がここにある。
2001/10/16 22:15
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投稿者:花田紀凱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「東京にはさまざまな伝説がある。人々の日々の営みの中に、幾重にも織り込まれた都市の記憶に分け入りながら、この街を歩き直してみたい」
読売新聞都内版に1996年11月から5年間にわたって連載した企画記事162回のなかから43回分を選んだもの。
「お猿電車」「同潤会江戸川アパート」「上高田少年合唱団」「トロリーバス」「火の見やぐら」「東京スタジアム」「淀橋浄水場」……。
こう並べてみると戦後、東京で少年時代をおくったぼくには懐かしいものばかりだ。
これらに関わった人を探し出し、貴重なエピソードを引き出している。これは新聞記者ならでは。添えられたモノクロの写真も時代を語っている。
たとえば「東京タワー」。
1958年12月に完成した東京タワーは実は米軍の戦車を溶かした鉄骨で建てられたという話は初めて知った。朝鮮戦争で実戦に使われた戦車が戦後、民間に払い下げられたものだという。
たとえば「歌声喫茶」。
1954年暮、戦後の匂いがまだ色濃く残る新宿大ガード界隈で歌声喫茶は産声をあげた。父から左前のロシア料理屋を任された早稲田出身の柴田伸さんのアイデアだった。
ウォツカもおにぎりも50円。壁には「灯」や「トロイカ」などの歌詞が貼ってあったがすぐにガリ版刷りの(そう言えばガリ版もとんと見なくなった)歌集に代わり1冊10円で続篇と合わせて500万部近く売れたという。
歌集の後記にこうある。
〈暗いきびしい現実の中で痛ましい苦しみにあえぎつつも、明るく強く生き抜こうとする“灯”の仲間たちに心をこめて送ります。歌声は私たちの心の灯〉
たしかに歌声喫茶には今のカラオケとは違う連帯感があった。
66年、大学に入った年の秋、ぼくは初めて新しい友人たちと新宿の歌声喫茶に行った。知らない人たちと肩を寄せ合って歌っている時、まさに青春のまっただ中にいるような気がした。
敢えて言えば多くの中から選んだからだろうが、各項目の時代がバラバラなのが惜しまれる。 (bk1ブックナビゲーター:花田紀凱/「編集会議」「映画館へ!」編集長 2001.10.17)