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紙の本
イメージは沸きにくいが
2001/11/30 23:20
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投稿者:さとる - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつのまにか不思議な世界に入りこんでいた穂積。善行を積むことによって得られる青ポイントだけが外へのパスポートであるという世界で、穂積は太守と呼ばれる女に逆らい、脱出を試みつづける。そして最終的に穂積はこの世界の真相を知る、というストーリー。
この設定事態はさほど珍しくないのではないかと思える。ただ、この世界に入ってくるあたりのエピソードが語られず、またその世界についてもさほど詳しい説明がないので、どうもこの小説の世界観に入りこみ難かった。この世界に来る際のエピソードは、後半に大きく関わってくるものであるからしかたがないとしても、もう少しイメージが沸きやすい文を書いてもらえればと思った。全体的にメリハリのないストーリーであると思えたが、キャリアのある作家なだけに文章がしっかりしていて、人物の内面を描き出す力は確かなものではないかと思う。
紙の本
絶対に逃げ出せない奇妙な世界で青年は”生きる”ことの素晴らしさを知る
2001/10/02 14:23
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投稿者:タニグチリウイチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
死んだらすべてが水の泡。ひとつしかない人生だったら、わがまま勝手に生きれば良いさと思った人がいてもそれほど不思議なじゃない。けれども誰もがわがまま勝手に生きたら、世の中は事件や事故であふれかえってしまう。だから人は法律を決めて罰を作って、人が自分勝手に振る舞えないようにしているし、現世の功徳が明るい来世や極楽往生につながるんだと、諌める宗教が幾つも生まれて広がっている。
日野響子の4年ぶりになる新作小説『ブルー・ポイント』(朝日ソノラマ、476円)の舞台になっている世界には、人は別のもっと素晴らしい世界に行くために、善い行いをして「青ポイント」をためなくてはならない決まりがあった。ふと目覚めると、過去の記憶の一切を失ってその世界に入り込んでいた穂積という青年は、ちまちまと「青ポイント」をためるなんて御免だと、仲間を集めて逃げだそうと企んだ。けれども南を壁、北を山、東西には果てしない荒野が続いているその世界から、どうやっても抜け出すことはできなかった。
どうして誰も逃げられないのか。「青ポイント」を貯めると一体どこに行けるのか。そもそもここはどこなのか。おしよせる謎がすべて明らかになった時、生きていくことの難しさ、そして生きていることの素晴らしさが心の中へとわき上がって居住まいを正される。わがまま勝手は良くないけれど、功徳を来世への貯金のように捉える打算的な人生でもダメ。優しさや慈しみを、格好良いとか悪いとか、役に立つとか立たないといった価値観抜きにあらわして、この世界を精一杯に生きようとする気持ちでいっぱいになる。
憎しみで世界が覆われ尽くそうとしている今。幻想世界を舞台につづられた、悔恨と贖罪の物語から浮かび上がる、強くて重たいメッセージを受け止めよう。
(タニグチリウイチ/書評家、新聞記者 http://www.asahi-net.or.jp/~WF9R-TNGC/)