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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.9
- 出版社: 同成社
- サイズ:20cm/344p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-88621-230-1
- 国内送料無料
紙の本
ムギとヒツジの考古学 (世界の考古学)
著者 藤井 純夫 (著),藤本 強 (監修),菊池 徹夫 (監修)
世界史において重要なキーワードであるムギの栽培とヒツジの家畜化。この二つを考古学から捉え直し、西アジアにおける農耕・牧畜の起源とその後の展開を追尾する。【「TRC MAR...
ムギとヒツジの考古学 (世界の考古学)
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商品説明
世界史において重要なキーワードであるムギの栽培とヒツジの家畜化。この二つを考古学から捉え直し、西アジアにおける農耕・牧畜の起源とその後の展開を追尾する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
藤井 純夫
- 略歴
- 〈藤井純夫〉1953年山口県生まれ。東京大学文学部卒業。金沢大学文学部助教授。
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新石器時代以降、人類が糧としてきたムギとヒツジの歴史を、西アジアを中心とした地域からみる。
2001/11/01 22:15
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ムギ作農耕の起源は、紀元前8000年頃。ヒツジやヤギの家畜化の起源は、紀元前6500年頃。著者のフィールドは、いまの中近東である西アジア。「いったい、いつ、どこで、どのような集団が、どのようにして、なぜ」ムギを栽培化し、ヒツジを家畜化するようになったのか。本書は、この問題に精力的に取り組んだものである。
農耕牧畜起源論に関し、考古学研究の研究史をひもとくと、現在は、食料調達のための不安定な日々を送る狩猟採集民が、条件が整えば農耕牧畜民になるというモデルは採られていないという。逆に、狩猟採集民は、何らかの環境的・社会的ストレスを抱えていたために、やむなく農耕・牧畜を選択したにすぎないとするモデルが採られている。つまり、つい私たちも考えてしまいがちなのであるが、別に狩猟採集民よりも農耕牧畜民の生活形態の方が進歩したものなのではない。だから、紀元前8000年頃に西アジアで開始された農耕は実態として、「狩猟採集民の農耕」であったと、形容矛盾のある言葉で言い表されるのが適切だと著者はいう。
特にムギ作農耕は、ヨルダン渓谷とその周辺の丘陵地帯に分布する「スルタン文化」、シリア南西部のダマスカル盆地に位置する「アスワド文化」、ユーフラテス中流域の「ムレイビット文化」の3つの文化で始められた。どうしても、個人的には、ムギ作農耕の開始時期だけでなく、当時の集落がどのようになっていたのかが気になるところであるが、たとえばスルタン文化のイェリコには、およそ200〜300人が住んでいたと推定されるという。住居も、不定形ではあったが手捏ねによる日干しレンガが建材として使用されていた。遺構群を調査してみると、恒久化・複室化が特徴としてみられ、農耕の成立によって定住化と貯蔵スペースが増加したことが裏付けられるという。また、イェリコには城壁があったことも調査されており、農耕文化の中で、耕作地や貯蔵穀物をめぐる争いが発生していた可能性も指摘されている。
いまからおよそ1万年前には、すでに集落間で社会的緊張が走る瞬間があったと推定している研究結果を読むと、いろいろと考えさせられるものがある。人間どうしの争いの発端は、日々生き延びていくための食糧にそもそも由来していたのだ。集落や社会の形成も、食糧を守り、そして自分たちが生き延びていくことを目的とされていたのに違いない。そうならば、人間もその他の生物もまったく変わらないことがわかる。紀元前8000年の世界は、いまの地球で必要とされている人間観を示唆している。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.11.02)