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紙の本
萩原氏逝く。遺作「遠い崖」は貴重な財産
2002/07/01 00:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yhoshi2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2001年10月24日萩原延壽が不帰の人となった。享年75歳。大著「遠い崖−アーネスト・サトウ日記抄」第14巻、最後の巻が発刊されたのが20日。まるでこの著作の完成とともに逝ったという印象が強い。朝日新聞での連載を開始したのが80年、何度かの中断の後1990年に連載終了。そして単行本化がながらく待たれていたが、それも第1巻がでてから8年の間著者の意向で中断。やっと本格刊行が開始されてから足掛け3年。新聞連載の原稿にその後の知見などをふまえて綿密な加筆訂正を施してついに14巻全部が完成したのである。
2年前、まだ単行本の刊行から間もない時期、横浜の開港資料館で開催された萩原氏の講演を初めて聴講した際に、この仕事に賭ける氏の情熱をひしひしと感じる一方で、その高齢(当時すでに72歳)から考えて、果たして全巻刊行まで健康が維持できるのだろうかと(大変失礼ながら)不安を感じたものである。それにしても脱稿後3か月で亡くなられるとはかえすがえすも残念。まだまだ書き残して欲しいこと、氏にしか語れないことが多数あったというのに。
幕末・維新を渦中にありながらも外国人としての客観的かつ冷静な眼で観察したサトウの日記、文書の紹介は維新史研究にとって極めて大きな貢献である。彼自身が当時の日本にとってもっとも頼りにし、かつ警戒すべき列強第一の国であった英国の日本語翻訳官(のち書記官)という第一級の情報を入手しうる絶好の立場にあったこと。のみならず、得意な語学の才能を存分に生かして当時の日本側の多くのキーパーソンと個人的交友を深めていたことなど、がサトウの記録の価値を極めて高いものにしている。従来必ずしも体系的な検討の対象とされていなかったサトウ文書の萩原による発見、そして発掘、解題が維新史を学ぶ者にとってもたらす恩恵は計り知れない。
氏の遺したものは豊富である。その業績を出発点に何かを付け加えていくことができるのか、最後まで在野の歴史家を貫いた萩原延壽の衣鉢は重い。