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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.10
- 出版社: ビリケン出版
- サイズ:20cm/167p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-939029-16-6
紙の本
トリツカレ男
著者 いしい しんじ (著)
いろんなものに、どうしようもなく、とりつかれてしまう男、ジュゼッペが無口な少女に恋をした。哀しくまぶしい、ブレーキなしのラブストーリー。【「TRC MARC」の商品解説】
トリツカレ男
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著者紹介
いしい しんじ
- 略歴
- 〈いしいしんじ〉1966年大阪府生まれ。京都大学仏文科卒。著書に「アムステルダムの犬」「とーきょーいしいあるき」「その辺の問題」「ぶらんこ乗り」「人生を救え!」など。
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紙の本
とびきりのラブストーリー
2006/11/24 16:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジョゼッペ青年のあだなは、トリツカレ男。
そう、彼は一度なにかにトリツカレてしまうと、もうそれだけしか見えない。
そしてそのトリツカレ方も半端じゃない。
だからウエイターの仕事も何かにトリツカレてしまったら、
しばらくは休んでしまうほどだ。
でも彼を取り巻くみんなは一様に温かい。
「しょうがないよな、トリツカレ男なんだから」って見守ってくれる。
オペラに、三段跳び、探偵ごっこ、次から次へとさまざまなものに
トリツカレてしまうジョゼッペ。
しかし彼が凄いのはトリツカレルだけではなく、それをプロ級の腕前にしてしまうこと。
そんな彼がある日、風船売りの女の子ペチカに一目ぼれ。
もちろん、読者の期待に応えるべく、彼女への惚れっぷりは
こちらまで惚れ惚れするほど見事。
彼女へまっしぐらである。
「やるべきことがわかっているうちは、手を抜かずに、
そいつをやりとおさなきゃ」自分の気持ちよりただただ彼女の幸せを願い、そして懸命に行動するジョゼッペ。
その献身さに頭が下がる。
「きみはたしかに無茶な男だけれど、とてつもない勇気をもっている」彼にはたくさんの味方がいた。
彼女を幸せにする手段として
彼が今までトリツカレてプロ級となった技が役に立つのが実に愉快。
そうして、迎えるハッピーエンド。
ジェットコースターに乗ったような劇的なエンディングに
読んでる私もすっかりフラフラになってしまいました。
とびきり幸せな気持ちにさせてくれるラブストーリー。
紙の本
胸が熱くなる素敵な物語でした。
2004/08/31 21:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の序盤は、なにかに本気でとりつかれちゃう(夢中になってしまう)男、ジュゼッペの突飛な行動を描いていって……ホップ!
そんなある日、トリツカレ男のジュゼッペが、孤独を抱えた少女と出会って……ステップ!
そして……ジャンプ!
とまあ、詳しく語ることは控えますが、一気に読めて、心がほかほかしてくる素敵な物語です。読み始めて最初のうちは、妙な人物が出てくるおかしな話だなあぐらいにしか思わなかったのですが、上記の「そして……」と話がジャンプする辺りから、がしっと話に掴まれて引き込まれていきました。
トリツカレ男の行動を見守っていくうちに、「ジュゼッペーっ、負けるなー。あきらめんなよー」と応援したい気持ちが、ずんずん、ずんずん、湧いてきました。彼のどうしようもない一途なところが、まっすぐに突っ走るところが、とても愛しく思えて、読んでて目頭が熱くなりました。
いしいしんじさんの作品を読むのはこれが初めてだったのですが、他の作品もあれこれ読んでみたい気持ちに誘われました。それで本屋に直行して、早速、『ぶらんこ乗り』という新潮文庫の一冊を買ってきました。表紙カバーの刺繍の雰囲気も、なんかあったかくて良さそうな感じだったし。
今度はどんな物語を紡いで見せてくれるんだろうと、読む前からわくわく、どきどきしています。
紙の本
○○にトリツカレた男の物語。
2003/06/12 01:25
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:奈伊里 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ぶらんこ乗り」、「麦ふみクーツェ」、「プラネタリウムのふたご」と、快進撃を続けるいしいしんじ氏の初期作品。
主人公のジュゼッペは「トリツカレ男」ってあだ名で呼ばれている。たとえば、オペラだったり、三段跳びだったり、昆虫採集だったり、探偵ごっこだったり、とにかく、マイブームみたいなものが突然嵐のごとくわき起こって、しばしそれに取り憑かれて暮らすの。まあ、そのトリツカレ方ったら、半端じゃない。
たとえばオペラ時代。トリツカレ男はレストランに勤めているんだけど、そりゃあお客さんだって、食べてる耳元で、「ピザはあんちょびー、とらら! きのこにベーコン、とらら! オリーブオリーブ、しあーげに、たあっぷりのチーズ! うわお!」なんて歌われたらたまったもんじゃないよね。トリツカレている間はお仕事はやむなくお休み。でも、気のいい奴だから、オペラ時代が終わったらちゃんと戻ってくる。そしてまた。三段跳びにトリツカレたら、これが一気に世界記録を塗り替えちゃう。でも、今日が全国大会の本番だって日に、別のことにトリツカレちゃったりするんだな。
いろんなものにどうしようもなくトリツカレてしまう様を追っかけていくうち、「これは来るな……」「きっと、あのことにトリツカレるに違いないぞ」と思っていたら、やっぱり来ました。そう。ある女の子にトリツカレちゃうの。恋にトリツカレてしまう。さあ、ここからが物語のはじまりはじまり。トリツカレ男がトリツカレたのはとっても素敵な女の子で、でも、いろいろ事情があって、とっても大変でとっても切なくってとっても勇気のいる恋になる。ああ! トリツカレ男の恋の行方や如何に!
+++++
いしい氏の作品はいつも、読み始めたときは、ちょっと突飛な、メタファーや寓意ばかりのように思えるんだけれど、それが読み進めるうちに、不思議なリアリティーを持ち始める。だんだん現実味のある、あったかい手触りさえ感じられる世界に思えてきて、いつの間にかそこに、登場人物と共に暮らし共に息をしている自分がいる。なんだか生きてるものすべてが愛おしくなってたりするんだよね。
現実は、誰が教えてくれなくっても、不公平で悲惨で、救いがない。美しいものと汚いものは互いに絡まり合い、複雑を極め、混沌を極め。こんな時代だからこそ、読み物として、いしい氏の作品は輝きを増すのじゃないかしら。
そうだ。突飛な例として、おしゃべりするネズミ君が出てきます。ネズミ飼育にトリツカレた時の名残なんだけど、このネズミ君が、トリツカレ男の恋に一役も二役もかうことになる。
物語の中のネズミとしては、「グリーン・マイル」(S・キング) のミスター・ジングルズ とか、ダンボの親友のネズミ君とかを思い出すけれど(「トムとジェリー」のジェリーは主人公だから別格として)、ここに登場するネズミ君もかなり心をくすぐる。なかなか分かった奴で。愛せます。
ちなみにこの本、装丁もとっても素敵。こういう本を、児童文学って枠でくくってるだけじゃあ、もったいないな。