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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.12
- 出版社: 白水社
- サイズ:20cm/187,3p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-560-04942-4
紙の本
猫の目に時間を読む
著者 鶴ケ谷 真一 (著)
エッセイスト・クラブ賞受賞の前作に続く第2随筆集。ボードレールの詩から出発してネコの目の謎を探った古今の書物を追う表題作を始め、読書の楽しみあふれる名作を収録。【「TRC...
猫の目に時間を読む
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商品説明
エッセイスト・クラブ賞受賞の前作に続く第2随筆集。ボードレールの詩から出発してネコの目の謎を探った古今の書物を追う表題作を始め、読書の楽しみあふれる名作を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
鶴ケ谷 真一
- 略歴
- 〈鶴ケ谷真一〉1946年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。「書を読んで羊を失う」で第48回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
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紙の本
忍者は敵の屋敷の猫の眼で時間を知る
2002/01/08 18:15
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投稿者:トラン童子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「・・猫の目は朝夕には丸く、日が高くなるにつれて細長くなり、正午には一本の糸のようになります。」というのがこの本のタイトルの意味だ。
同時にエッセイの一つでもあるが、著者の博物誌へのナビゲーターとしての魅力も秀逸。この猫の目が明暗によって変わる観察記述をもとめて唐、江戸の時代、イギリス19世紀、はてはボードレールの詩にいたるまで散歩気分でしらべつくしていく。いつのまにか私たちは見知らぬ書の森にふみこんでいる。白いページに活字の木立の魅力的な森。
評者は子どもの頃から猫の目の時間については知っていた。だがこのような洗練された
方法で知ったのではない。「忍者になるためのトラの巻」という雑誌のフロクである。忍者は余分のものは持たない。時刻は敵の屋敷の猫の目を見て知りなさい、というわけで瞳の大きさに合わせた時刻の図表もついていた。感心した子どもの印象に残ったのは猫ではなく、昔人の観察の鋭さであった。というか、身体感覚にかかわる鋭さである。うれしいことにこの著者も読書体験の中で昔人のそれにふれている。
この身体感覚へのこだわりは第二部の明治以前の筆耕や彫刻の職人芸のくわしい記述につながっていく。手や目の感覚だけがたよりの世界だ。無名の過去の技術者たち。彼ら個人の手仕事でつながってきた書というかたちの歴史。中身とかたちへの等分への著者の目配り。彼の書に対する目は猫の目の変化をみのがさない昔人と変わりないほど行き届いている。
エッセイというより、すぐれた読書法に出会った気分だ。本の海の中で泳ぎ方を知らない若い人たちに、彼の読書のメソッドをうけついでもらいたいと思う。わたしは猫にこだわりすぎたが、実はこの本には別の魅力的なテーマがいっぱいあることをつけくわえておく。 (パフォーマンス・アーティスト、トラン童子)