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揚羽の蝶 下 (講談社文庫 半次捕物控)
揚羽の蝶 半次捕物控(下)
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紙の本
いい男は悪い男?
2011/07/05 14:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
大名家の跡取りっていうのは、ちゃんと長男が成人していても、それを押しのけて、母方の親戚のよその大名家の若様を押し込もうとか、それもその母方の親戚の大名自身ではなくて母方の親戚の女性に仕える奥女中が画策していたりとか、将軍の若様を、それも将軍自身ではなく、将軍の機嫌をとって出世したい大名……自身ではなくその大名の家来が、押し込もうと画策するとか、なんかもう、おそろしいやら、あほらしいやら、ややこしいやら。
将軍家斉の時代を、佐藤雅美は多くの作品で描いている。何十人も息子娘がいて、そのひとりひとりを大名家の養子にしたり嫁入らせたりすることで、たとえば水野出羽守は史実でも家斉のお気に召したらしい。もっとも水野出羽守はそれだけではなく、なかなかの能吏だったということもまた、多くの作品で佐藤雅美は描いているが。
この『半次捕物控』の『揚羽の蝶』で、半次を巻き込んだお家騒動の仕掛け人は、水野出羽守の競争相手の大名の家来である。彼と、半次の命の恩人の美女志摩の恋人で池田家の若手の鑓手のハンサムな武家とが関わっている。このふたりの武家はふたりともかっこよくて女性にもてる。そしてふたりとも出世欲が強く、狡猾である。だが、お志摩さんのほれた男性のほうが、少なくとも恋人としては、いい男だと思う。
しかし、半次の養女の幼いお美代を誘拐するとは、言語道断だ。そして、いが茄子強盗の犯人も、やっぱり、許せない。
大名屋敷の身分の高い武家を相手に、半次は、知恵を絞り、仲間の力を借り、お奉行まで敵に回しても、お美代を助けようとする。いが茄子強盗を探索させるだけだったのが、たいへんなお家騒動に手を突っ込んでしまったとわかって焦る奉行は、事件を揉み消しにかかる。
最後は……これも佐藤雅美作品によくある結末で、表面上は何事もなかったかのような顛末を迎える。ただ、幼いお美代がストックホルム症候群になってしまって、それが半次にとって、もしかして、縁結びの神になりそうな雰囲気なのは、悪くなかった。