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紙の本
思想課題としてのアジア 基軸・連鎖・投企
著者 山室 信一 (著)
アジアにとって近代日本とは何だったのか。思想連鎖、人の移動、戦争と植民地化の歴史を堀り起こし、近代東アジアの形成過程を描く。【「TRC MARC」の商品解説】
思想課題としてのアジア 基軸・連鎖・投企
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著者紹介
山室 信一
- 略歴
- 〈山室信一〉1951年生まれ。東京大学法学部卒業。比較法政思想・文化連関論専攻。京都大学人文科学研究所教授。著書に「法政官僚の時代」「近代日本の知と政治」など。
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紙の本
近代東アジアの思想的葛藤を壮大な視野で描く労作
2002/02/26 18:15
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投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて「アジア主義」という言葉があった。この思想の旗の下、日本人は、欧米世界に抵抗したり、あるいはアジア諸国に侵略していった。いわば、ほろ苦い味のする言葉なのである。ところが、21世紀を迎えた現在、中国が政治経済的な力をつけ、東南アジア諸国も例外的な経済発展を見せている状況で、アジアをどう見直したらよいのかを真剣に考えるべき問題になってきた。本書は、先鋭な問題提起をしようという書物ではないが、これから真摯にものを考えてゆく上で、わきまえておくべき多様なことがらを整理した大著である。少なからざる東アジアからの留学生を抱える私は、大きな好感をもって、この大著を読み終えることができた。
本書が考察している「アジア」は、地理的にアジア大陸全体を覆うとはいえ、主として漢字文化圏の東アジア地域を中心にしている。この地域内にあって、唯一日本だけが、欧米世界に吾して、近代化=西欧化を実現させていった。反面、文化的主体性を喪失させる点も無いわけではなかった。著者は、その近代化=西欧化の意味を、日本の同時代の証言を呼び戻すだけではなく、アジアの多様な知識人の声をも併せて、近代アジアの思想像を再構成している。結論めいたことが本書にあるわけでないが、「アジア主義」の掛け声にもかかわらず、アジアの人々のことは考えずに、独りよがりの歴史像を作り、その像のもとに国家主義の道を走ったし、現在を走り続けているのが日本だということになろう。
本書の最大の魅力は、私には学問思想史的記述であった。日本は、1000年以上の中国文化を根底におき、漢字を媒介として、西欧化を例外的な速さで進めていった。それで、多くの和製漢語が、現在の中国語の中にも入っている。一方、現代日本人はアメリカ発の情報にばかり左右されている。そして沖縄の米軍は、中国と北朝鮮を睨んでいる。中国や朝鮮と政治経済のみならず文化的にも真に和解一体化して東アジアは創造できるのだろうか。さまざまなことを考えさせてくれる良心の書である。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2002.02.27)