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先端医療のルール 人体利用はどこまで許されるのか (講談社現代新書)
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紙の本
ぬで島さんの怒りがひしひしと伝わってくる必読書
2002/07/10 17:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森岡正博 - この投稿者のレビュー一覧を見る
クローン人間を作ろうとする科学者たちがいる。彼らは、クローン人間を規制する法律のない国で、実験を行ないたいと言っている。ボーダーレスの時代では、このような抜け道を、どうやって国際的にカバーしていけばいいのかという、なかなかやっかいな問題が現われてきているのだ。
著者のぬで島さんは、人間の生命に深く介入しようとする先端医療に対して、しっかりと理屈の通った、包括的な規制が必要だと訴える。きちんと考え抜かれたポリシーでもって、人間の生命の尊厳と社会の秩序を守っていかないと、とてつもない混乱がおきるかもしれないくらい、先端医療技術のもつ潜在力は大きくなっているのだ。
ぬで島さんは、「自分の体の一部をどう使おうとそれは本人の自由である」とする米国の考え方と、「すべて個人の自己決定に委ねるのではなく、社会が何をしていいか悪いかを明らかにして、個人の自由と権利にタガをはめるべきだ」とするヨーロッパの考え方をていねいに吟味する。
ぬで島さんは、とくにフランスの考え方に注目する。フランスは、「人体」というものを、単なる「物」でもなく、かと言って「人」でもない、独自の尊厳を持つものとして生命倫理法のなかに書き込んだ。だから、フランスでは、自分の体の一部といえども、自分勝手には処分できないことになったのだ。
このように、人体の保護を通じて、人権を保護し、個人の身勝手な自由に制限を加えるという考え方から、大きなヒントを得ることができる。
ぬで島さんは、五つのルールを提案する。それは、まず本人の同意があること、次に人体の利用が無償でなされること、第三に匿名の原則。そして、これら三つが守られたとしても、それでもなおやってはならないことを決める公序原則。最後に、チェック体制。これらをきっちりと守りながら、許される例外について慎重に吟味していくことが必要だと言う。
しかし、日本の現状を見てみれば、一貫性のない立法と施策のオンパレードだ。ぬで島さんの怒りが、ひしひしと伝わってくる必読書である。
初出:信濃毎日新聞