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玉藻の前 | 5-250 | |
---|---|---|
小坂部姫 | 251-436 | |
クラリモンド | ゴーチェ 作 | 437-489 |
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紙の本
編纂余話〜編者からのメッセージ
2002/03/19 21:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東雅夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
その日、某大学図書館に籠もって資料探索に余念がなかった小生は……ハッキリ言って、頭を抱えていた。
岡本経一氏が『岡本綺堂読物選集4』で言及しておられた——「明治三十年代の文芸倶楽部に彼は『木曽のえてもの』という随筆を書いている」という記述を頼みの綱に、該当する時期の「文芸倶楽部」を片っ端からチェックしていったのだが、繰れども繰れども、それらしき記事が見つからない。そろそろ閉館時間も迫っている。
(今日のところは空振りかぁ)と落胆しながら、すでにチェック済みの一巻をパラパラやっていたところ……「木曽の怪物」という小見出しが、天啓のごとく(!?)我が目に飛び込んできたのである!
いくら探しても見つからないのも道理。肝心の文章は、同誌の記者が寄り合い所帯形式で投稿している「日本妖怪実譚」という連載コラム(この企画自体、怪談実話物のハシリとして非常に興味深いものなので、機会があれば、より詳しく紹介したいと思っている)中の一本として、「麹生」(当時、綺堂が住まいしていた麹町にちなむ筆名だろう)の署名で掲載されたものだったのである。
さんざん手こずらされただけに、発見の歓びもひとしおであった。それにしても、我ながらよくまあ、神憑り的な見つけ方をしたものよ……と、ホラーの神様に感謝する気持ちでいっぱいだった。
今回の『伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集』には、右の他にも、雑誌に発表されたまま、単行本に収録される機会もなく埋もれていた戯曲作品2篇(「人狼」と「青蛙神」)を初復刻することができた。
「人狼」は、怪奇小説ファンにはおなじみのフレデリック・マリヤットの名作「人狼」を下敷きにした時代物、「青蛙神」は、同じく怪奇短篇のお手本として知られるW・W・ジェイコブズ「猿の手」を翻案した現代劇で、どちらも『青蛙堂鬼談』などに所収の怪談小説に優るとも劣らない、怪奇作家・綺堂の真骨頂を示す逸品であると信ずる。
マリヤットの「人狼」には、たしか今日泊亜蘭訳があったはず、「猿の手」は倉阪鬼一郎の訳を拝借して……と、この際だから巻末付録として原典も併録しちゃおうか、という当初の思惑は、ページ数の関係から断念せざるをえなかったものの、それでも「木曽の旅人」関連の参考資料2篇を復刻掲載できたのはせめてものことであった。
シリーズ「伝奇ノ匣」では今後も、本朝伝奇小説を代表する名作の再録と併せて、こうした知られざる逸品や貴重な資料の復刻にも、大いに意をそそいでゆきたいと思っている。
なにせ根が貧乏性なもので、せっかく自らの裁量で一巻の選集を編めるからは、これまで一度も陽の目を見たことのない作品を一篇でも多く甦らせたい……と、ついつい力瘤が入ってしまうのであった。
御期待ください。