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紙の本
ブラックユーモアに、ニヤリ。
2003/06/21 16:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
ホームズものを読みながら、消えたデザート・シェフの行方を探すパ氏と愛犬ポムくん。パ氏のふざけてはいないが、あまりに行き当たりばったりな捜査はミステリとしては「?」かもしれないけれど、物語の魅力は謎よりも人物や料理、風土の魅力であるからかまわないんだろうな。
粋な描写が多くてニンマリしてしまうこのシリーズ、どうも何かに似ているぞ…? 未読の方に先入観を与えてしまう危険を敢えて犯すならば、パ氏はアレに似ているのである。それは、レスリー・ニールセン演じる映画「裸の銃を持つ男」シリーズである! ほのかなお色気、茶目っ気たっぷりな台詞まわしに、ハチャメチャかつスピーディでブラックな展開がソックリである。もともとパロディ色強い映画だから、映画の脚本家、この本も念頭にあったりしてネ? ああいうライトにして腹がよじれるほど笑える映画がお好きな方は、パ氏シリーズは必読ですぞ。必ずや、貴方の期待に応えてくれることでしょう。
紙の本
パ……、バスカヴィル家の犬ですか?
2002/05/08 18:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高名なグルメ・ガイド紙《ラ・ギード》の覆面調査官を務めるパンプルムース氏は、元パリ警視庁の刑事という経歴の持ち主。元警察犬で、パ氏の相棒として何軒もの高級レストランにお伴、誰よりも鋭い味覚と嗅覚によってご主人を助けているブラッドハウンドのポムフリット。お馴染の彼らが活躍するシリーズの第三弾。
今回の事件は、アラブの富豪がこよなく愛している特別なデザート《スフレ・シュルプリーズ》を作ることが出来る唯一のパティシエの失踪。富豪の晩餐から彼のスフレが欠けてしまっては、フランスに輸入される石油の量が不足して、多くの人々が凍える冬を過すことを余儀なくされてしまう。これまでにない大問題を背負い込まされたパンプルムース氏は、シャーロック・ホームズ譚『バスカヴィル家の犬』を片手に、ポムフリットをワトスン役として捜査を開始する。
果たして、パンプルホームズとプムフリワトスンは、見事に愛国フランスを危機から救うことが出来るのか?
上手いのは、決してパディントンの様に言葉を話さないが、人間のことにはそれなりに興味を抱きつつ理解もしているというポムフリットの心情をコミカルに描いている点。50キロもある大型犬ブラッドハウンドである彼は、引退したとはいえ警察犬であっただけに、非常に屈強で鼻を効かせる能力が高く、紳士であると同時に主人であるパンプルムースに対して揺るぎない忠誠を誓っている。
とても食いしん坊であること、それも美食家であることなど、人間性を感じさせるような特色を持っている彼だが、しっかりとケモノの臭いを持っていて、無味無臭の平べったいアニメのような形式的なだけの動物キャラクターではなく、独立した人格を持っている。そんな彼の心だからこそ、些細なことを気にかけたり、危機に陥っているパ氏のことを眺めたり、あとから気にして追いかけたり、と様々に動くことが出来るのだろう。そんなプムフリットの自然な心象風景が、読者にとっては楽しいのだ。
捜査においても、プムフリワトスンは独特の活躍を見せてくれる。まずは、目線が低いから、人間には見えない風景を目にすることが出来るということ。つまりは、地面スレスレの事柄が目に出来るのだ。次に、人が人には見せられないような事柄も、彼が犬であることから見せてくれる、人間であるパ氏には掴めないような事実すらも手に入れてしまうということもある。
そして、プムフリットは、パ氏からはワトスン役を命じられているが、実はシャーロック・ホームズですら知りえないような情報を早い段階で持つ、一種神のような役割を担っている、ということも出来る。ホームズはその場に居なかったのだから当然知る由もない情報を、読者は作者が状況を神の視点で描いているから既に知っている。ミステリでは、名探偵よりも読者が早く事実を掴む、という状況が意図的に作りだされることが多い。そうすることで、探偵が真相を掴むことへの情熱的な興味を作りだされるし、自分が知っているという安心感や優越感が、読者をおおいに楽しませるからだ。そこにプムフリットは、人間の探偵では決して存在することが出来ないような未知の領域に漂いつつ、独特な知覚によって情報を得てしまっているのである。ただのマスコットキャラクターではない彼の存在感なくしては、パンプルムース・シリーズは成り立たないということが、創作上の理由からも指摘出来るのだ。
彼らの次なる冒険も楽しみ。