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会いたかった人 (集英社文庫 短篇セレクション)
短篇セレクション サイコ・サスペンス篇1 会いたかった人
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収録作品一覧
会いたかった人 | 7-58 | |
---|---|---|
倒錯の庭 | 59-140 | |
災厄の犬 | 141-219 |
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紙の本
素直にスリルを味わえる短編集です。
2009/09/14 00:57
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あがさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作「会いたかった人」と「倒錯の庭」「災厄の犬」の3篇が収録された短編集。
前に読んだ「贅肉―短篇セレクション サイコ・サスペンス篇〈2〉」が今ひとつだったので、今回はあまり期待しないで読み始めた。
それが功を奏したのか、意外に楽しく読むことが出来た。
「会いたかった人」は、才色兼備という言葉がピッタリな女性、諸井小夜子がテレビ出演したところから始まる。彼女は大学の助教授で心理学者。夫と一人の女の子、そして姑という4人家族で幸せに暮らしている。
テレビで「思い出に残る友人は?」と聞かれ、ある友人の名を挙げる。結城良美だ。高校生の頃、成績は二人でトップを争っていた。そうでありながらも似たもの同士というのか、引き合うものがあったのだろう、親友となって将来の夢を語り合った仲だった。良美の転校などがあり、お互いの消息が不明になっていたのだが、このテレビ出演で語ったことによって、本人から連絡が入ったのだ。
良美へ電話をかけ、会う約束をしたが、そこで少し違和感を覚える小夜子。実際に会う約束をして、25年ぶりに会った良美は、無理に探せば面影があるかもしれないが、全くの別人といってもいいような容姿だった。しかし、良美が語る昔話は全部本物だったのだ。良美だと思うしかない。
その後、別のルートから良美は既に白血病で亡くなったという情報が小夜子の元に届く。
では、あの日に出会った「良美」は誰だったのか...。
途中で最後のオチは予測できるものの、素直に読み終えることが出来た。著者は人物描写に優れていると思う。良美の異様さがストレートに伝わってきた。小夜子の感情がリアルに胸に響き、読み進める度に怖さが増していく。読み応えのある作品である。
「倒錯の庭」は、3篇中、一番異様さが際だった作品だと思う。
夫との離婚を決めた女教師である小嶋るい子は、精神的に疲れていたこともあり、都会の学校から田舎の学校へと転勤する。そこで、知り合いの別荘である一軒家に一人で暮らし始める。
ある日、庭の手入れを頼もうと電話した造園屋から、天野竹彦という男がよこされてきた。無口で、どこか独特の雰囲気を持つ男だった。
その後、二人は一緒に夕食を囲むようになる。特に好きだの何だのと言った訳でもなく言われたわけでもない。自然と何となく時々、取れたてのキノコなどを持って竹彦がるい子のもとにやってくるのだ。
るい子は、恋愛感情を竹彦に持つが、竹彦の気持ちは全くわからない。40近い自分に20代の男が惚れるわけがないと自分を制するが、るい子の気持ちは強くなるばかりである。
そんな中、不思議な事件が多発する。るい子が竹彦に、無くなればいいのにと言った銅像が壊されたり、火事で燃えてしまえばいいと言った放送室が火事になったり、言ったことが現実に起こるようになるのである。
そしてある日、夫が急に彼女を訪ねてきて、復縁話を持ち出す。るい子は断るが、しかし...。
さて、不思議な存在なのは竹彦である。何が目的なのか、何をしたいのか。それがわからないため、余計にスリルを感じる。るい子に対する竹彦の感情は何なのだろうか。
素直に怖さを楽しめる作品だと思う。
最後の収録作品は「災厄の犬」。
犬好きであったはずの男性が、家族が拾ってきた犬にどうしても不気味さを感じてしまう物語。
妻と娘たちは、この犬に対して愛情たっぷりに接することが出来るが、彼にはそれが出来ない。
偶然か必然か、この犬が来てから、彼にいろいろな災いが起きることとなる。仕事を干されそうになったり、友人から紹介されていた就職がボツになったり、彼に好意的だった妻の母が亡くなったりと...。
彼は犬を捨てることに決めた。妻と娘たちがいないうちに。
帰ってきた妻はすぐに彼が犬を捨てたのだと気づく。そして、その日のうちに娘たちを連れて家を出て行くのである。
その数日後、妻から家に戻りますと電話が入った。ホッとする彼に、彼女が話した信じられない事実とは...。
この物語は多少つまらなかったかな。大の犬好きだった彼が毛嫌いする犬と彼の感情描写が冗長すぎるような気がした。
ストーリー自体も、よくわからない。最後もオチらしいオチも感じられなかった。前2作が面白かっただけに、残念である。