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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.4
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/303p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-309-25157-9
紙の本
ゼロの博物誌 (Kawade new science)
「なにもない」ということを表すゼロという概念−その発見は人間の文化史上、画期的であった。本書は、ゼロという数字やそれがあらわす事態について、数学のみならず、広く文化的・歴...
ゼロの博物誌 (Kawade new science)
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商品説明
「なにもない」ということを表すゼロという概念−その発見は人間の文化史上、画期的であった。本書は、ゼロという数字やそれがあらわす事態について、数学のみならず、広く文化的・歴史的観点から易しく語った最良の入門書!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ロバート・カプラン
- 略歴
- 〈カプラン〉ケンブリッジ在住の数学者。ハーバード大学や、また大学生に限らず広い範囲の人々に数学を教える。その教育の範囲は哲学、ギリシア語、ドイツ語、サンスクリット語に及ぶ。
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紙の本
「ゼロ」の系譜は、深く冥い源に発し、世界中に広がっていった
2002/05/13 22:15
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投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
博学ここに極まる読後感である。「ゼロの博物誌」という風変わりなタイトルも一読した後ならば、十分に納得できる。本書は、数概念としての「ゼロ」がどのように人間の概念世界の中に生じたか、そして錯綜した歴史を経てどのように全世界に広まっていったかを古今東西の文献・資料に基づいて描き出した。数としての「ゼロ」を取り巻いてきた認知的・文化的・社会的な背景が、民族と時代と国家を越えて連綿とつづられていくありさまは読みごたえがある。もちろん、本書を登り切るには、読者にもそれなりの体力が必要なのだが。
数ある「数」の中でも、なぜ「ゼロ」だけがこれほど豊かな歴史を持ち得たのだろうか? 著者は「ゼロは数の王国を広げる力があるにもかかわらず、ゼロが数として扱われてはいないらしい」(p.101)という矛盾に満ちた性格づけをゼロに与えている。その原初形態を求めて、読者は、著者とともに、ゼロの発祥地である古代インドの経典を探り歩く。歴史の闇の中に姿を表すゼロの遠い祖先「スーンヤ(空)」は、インド哲学の核心にほかならない。
このスーンヤを大祖先とする「ゼロの系統樹」が、本書のちょうど中央あたりに見開きで大きく描かれている(p.134-135)。私はそれを見て本書の意図が理解できた気がした。ゼロの博物誌とは、ゼロの系譜学だった。東洋のルーツに発するゼロの系譜は、イスラム圏を通って、ヨーロッパに到達したのち、大きく枝葉を繁らせた。本書の後半では、複素数や無限小などの数学史の話題を振り返りつつ、ゼロの果たしてきた役割をたどる。ライプニッツ、ヴィトゲンシュタイン、フォン・ノイマンら多くの著名人が思わぬところで顔を出す。
性急に結論を求めても、きっと本書はそれには答えてくれないだろう。むしろ、著者とともに、時空を行きつ戻りつしながら、ゼロのたどってきた道のりをじっくりと味わうのが本書の望ましい読み方なのかもしれない。
(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)
【目次】
謝辞 9
0.レンズ 13
1.心が物に跡を刻む 17
2.ギリシア人にはそれを表す言葉がなかった 29
3.旅人たちの物語 47
4.東へ 57
5.塵 75
6.未知数へ 85
7.パラダイム変動 101
8.マヤの話——数えることの裏面 117
9.苦心の末 129
1. 空虚の使者たち
2. アウグリムの暗号
3. 今年,来年,そのうち,いつか
4. それでも動く
10.天使たちをもてなす 161
1. 無の力
2. 知らなくてもわかる
3. この景色の構造
4. 何も残さない
11.ほとんど無 199
1. 傾き
2. ふたつの勝利,ひとつの敗北,遠い雷鳴
12.それは実在するのか 239
13.蜘蛛のいる風呂場 259
14.いつもの午後の国 267
15.リア王は正しかったのか 277
16.考ええないもの 293
訳者あとがき 299
脚注と文献リスト
※脚注と文献リストはpdfファイルで配布されている(ただし英語).分量はA4版でおよそ80ページもある.
【原書】
Robert Kaplan 1999
The Nothing That Is: A Natural History of Zero.
Oxford University Press
【関連書】
吉田洋一著『零の発見 数学の生いたち 改版』岩波新書
A.K.デュードニー著『数学の不思議な旅 ピュタゴラスの定理から超数学まで』青土社
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