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紙の本
上杉謙信は女だった (八切意外史)
著者 八切 止夫 (著),縄田 一男 (監修),末国 善己 (監修)
川中島の戦いで名高い上杉謙信と武田信玄の、生いたちから合戦に至るまでの事情を描きつつ、謙信が女武者であったことを史料を踏まえて検証した小説。1977年日本シェル出版刊を底...
上杉謙信は女だった (八切意外史)
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商品説明
川中島の戦いで名高い上杉謙信と武田信玄の、生いたちから合戦に至るまでの事情を描きつつ、謙信が女武者であったことを史料を踏まえて検証した小説。1977年日本シェル出版刊を底本として再刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
八切 止夫
- 略歴
- 〈八切止夫〉1914〜87年。名古屋市生まれ。小説家。「寸法武者」により第3回小説現代新人賞受賞。著書に「信長殺し、光秀ではない」など。
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紙の本
立証責任を果たせているか
2007/04/14 22:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
上杉謙信といえば、戦術的巧みさは日本一であろう。戦術は本来戦が始まる目に決めておくものである。その点、謙信はその場で水の如く自由に決して戦う。このタイプの戦術家は、歴史上においても極めて稀にしか出てこない。義に厚く、信仰を尊び、まさしく毘沙門天の化身。それこそが謙信である。なにしろ、謙信は何度も関東に出陣しているが、それ全て他人を救うためであり、自己の領土は一切増やしていないのだから驚きである。
そんな謙信が女だったとして話を進めるのが本書である。多くの方は、「おいおい女のわけないだろ」という感じだろう。しかし、以下の事実を知ってもそういいきれるだろうか。これは、著者の八切止夫が何かに憑依されたように主張してたものである。
①「謙信の死因は脳卒中でなく大虫(婦人病)である。」これは一級の歴史書にある。②「白虫赤虫一二匹、まんじ巴とくるうなか、とらどしとらずきとらの日に、うまれたまいしまんとらさまは、城山さまのおんために赤やりたててご出陣。男もおよばぬ大力無双という歌がある。」まんとらとは政虎すなわち謙信のことで、男も及ばぬと言う以上、女ということになろう。③遺物の謙信鎧はほぼ女性用である。中には決して男が着ない赤い服もある④謙信は157センチなのに大柄と言われる。(男なら当時でも大柄ではない)。⑤女性用おこそ頭巾着用。⑥墓相は間違いなく女性のもの。⑦スペイン国王フェリペ2世宛ての日本についての報告書に謙信は景勝の叔母と書かれている。おそらく女性説の端緒となったのが⑧生涯独身女を近寄らせず。
まだ20くらいある。この点反対説から、謙信が女なら当時もっとそういう資料が残っているはずだ、と反論される。それに対し、「江戸時代取り潰しを防ぐため、男性化した」と再反論する。しかし、確かに江戸時代にはその再反論は通用する。だが、何故戦国時代に謙信が女性であることを隠す必要があったのか。
これに対し、「いや、当たり前すぎて隠してなんかなかった」という者もいる。では、逆に戦国時代に謙信が女性であると何故分からなかったのか。北条政子なら一発で分かるし、他にも女城主はいたが、彼女らは女城主として当然後世に疑問なく伝わっているのである。何故謙信だけが。信長に武勇並びなきとまで手紙が送られているほどの武人が女なら、北条政子以上に歴史上取り沙汰されるはずだ。
女性説論者は、上述のような史料をあげるが、実際謙信が隠していないのなら史料が少なすぎるし、隠していたのなら「戦国」時代に隠していたという証拠が無いのと、何故時々上の様な史料がポツポツ出てくるのか不思議である。しかも、史料には、遠慮がちに女説を暴露するような雰囲気がない。普通、隠されている事を明かすのなら、少なくとも史料の内ひとつくらいは「ばらしちゃった」的なノリがあってもいいだろう。他に男性説は、①幼女は寺で修行できない。②女人禁制の叡山に2回登山。③謙信の位牌に権大僧都・居士などと明記(男性にしか絶対無い)④自身を愚僧と表記。など。
やはり謙信は男性である。八切は版権まで放棄して頑張っていたようだが、歴史学の大御所桑田忠親氏の言うとおり、史料分析が拙いという評価が正鵠を射るのだろう。
要は、謙信がそのまま眠っている墓を調べればいい。だが、遺族が反対しているそうだ。当然だろう。英雄の寝所を後世興味の為に掘り起こすなど、無礼にも程がある。
しかしである。確かに、女性説にも説得力あるものもある。おそらく残り20根拠と詳細な解説を本書で見たら、結構信じる人はいる。実際、可笑しなフェミニズム団体とかも信奉しているようだ。だが、様々な反論がもちろんあるのであり、それを踏まえた上で、本書に入った方が無難であると思う。