紙の本
見者のヴィジョン
2003/06/02 07:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
まれに、普通の人には容易に伺うことのできない異界を望む才に恵まれた者がいて、さらにその中のごくごく少数の者が、自分がかいま見たヴィジョンを他者に伝えるなんらかの術をもつことがある。五十嵐大介は間違いなく、そうした、二重の意味で希少な資質に恵まれている。これは、きわめて希有な例であると思うが、そうした資質に恵まれることが果たして幸運といえるかどうかは、かなり微妙な判断が必要となりそうだ。
本書に収録されている「産土」、「熊殺し神殺し太郎の涙」、「未だ冬」、それに、表題作の「そらトびタマシイ」などの作品群は、表層的な部分に注目するのなら、古典的民俗学的世界観から題材をとっているように見える。例えば、「そらトびタマシイ」でいえば、三十五ページの、ルゥキィと合体した美代子の姿や、「熊殺し神殺し太郎の涙」太郎たちが森を彷徨するシーン(八十五ページ)や不死人形の少女が「きれいにおけしょう」するシーン(九十八ページ)などの騙し絵のようなコマなどは、イメージとしてもかなりユニークで、また、作中のストーリーの中でもかなりの比重を持つ。
こうした想像力は、ちょっと類例を思いつかない。ともかく、「想像力の質」が視覚的な要素のほうに多く偏向しており、それを「物語のチカラ」で説明づけたり適当な終始をつけようとした形跡があまり認められないあたり、一種の潔ささえ感じる。例えば、「熊殺し神殺し太郎の涙」の終わり方、などは、「物語」の観点から見たら予測される収束の方に向かわず途中で放り出したような印象が強く、多くの人に居心地の悪さ、座りの悪さを感じさせるものだと思うし、「そらトびタマシイ」、「すなかけ」、「le pain et le chat」などの作品群にしても、もっときちんと盛り上がって結末つけて、いわゆる「成長物」のパターンに嵌めた方がすっきりと読める人のが多数派でありましょう。
しかし、子細に作品をみるうちに、「これはこれで正解かな」と納得させるだけのものを内包しているのにも、気づいていく。それは、場の空気であるとか人物の表情であるとか視覚的な要素が持つチカラや面白さがストーリー的な結構の放棄した上で、なおかつ、有効に機能している、ということなんだけど。
酩酊亭亭主
電子書籍
好みに刺さる
2021/08/31 23:55
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投稿者:Cogwheel - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前読んだ同作家の『魔女』と同じくらいお気に入りの作品になった。収録されているどの話も良いが、個人的には『熊殺し神盗み太郎の涙』『すなかけ』が特に好みで刺さった。 今回は電子書籍で購入したが、紙媒体でも手元に置きたい。
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漫画 「はなしっぱなし」「魔女」の作者。日常から少しだけはみ出した場所に下りた人びとを、独特の筆致で描く六話。
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物語が泡みたいにぷかぷか浮かんでいる不思議な空間に迷い込んだような気分にさせてくれる短編集。
そのどれもが素敵で、失われがちな「生」についての意識をしっかりと持っている。
それはまた同時に「死」についても捉えているということだろう。
優しさときびしさが共存する世界で、喜びと悲しみをわかたいあいながら、一事にとらまれずに一つ一つをちゃんと見つめて。
などとついつい読んだ人まで色々なことをふわふわ考えてしまう一冊。
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好き嫌いがはっきり分かれる漫画だと思います。
私はこの漫画で初めて「ストーリー」ではなく「絵」で泣きました。一生かかってこもこの人の場所にはたどり着けないと思った作品です。
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リトル・フォレストでロハスな作品なのかな、とか思ってたら大間違いでした五十嵐大介。
表題のそらトびタマシイはショックでした。なんだろう、、よくある奇談なんですが、バックエンドの魔術/伝奇/民俗/精神世界を良く消化した上で物語を構成してるんでしょう。面白いです。
多分、本能とか、歴史とか、人を構成している成分に働きかけるのが巧いんじゃないかな。少ない絵、少ない言葉で心揺さぶる。ベクトルはゼンゼン違いますが永井豪と同じプリミティブな、呪術的な魔力があります。あちらはセックス&バイオレンスでしたけどw。
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やっと見つけた!予想以上にお話が、不気味な感じ・・・。しかも絵がリアルというか強烈だから不気味さが際立つ。鳥肌立つなぁ、ストーリーも絵も。
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五十嵐先生の作品はやはり”美しい”。『一漫画』ではなく、『一芸術作品』であると言っても過言ではないと思う。それほどまでに心躍らされる魅力が、どの作品にも確かに存在する。心が奮い立つほどに壮大で、鳥肌が立つほどに繊細。華麗で、それでいて泥臭い。不可思議でありえないような物語でも、五十嵐先生の手に掛かれば実にリアルな”存在”として捉えることができる。
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五十嵐大介作品集
絵が独特。
絵がめっちゃいいのに話はイマイチってマンガが多いけど、これはどっちも完璧!
不思議な話が心地よかった〜
特に体から砂がでる特異体質の女の人と家出少女が出てくる『すなかけ』が好き。
体から出した大量の砂で恋人を交通事故から守る場面が秀逸だった。
あと、『le pain et le chat』も面白い。
眼球に入るコマ、最高やね。
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五十嵐大介氏の短編集。
ちょっとだけ奇妙な雰囲気が漂う作品ばかりです。
氏が近年書いている作品とは少々ティストが違って、これはこれで結構好きです。
表題作のそらトびタマシイが1番好きかな。
すなかけも好き。
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ちょっと暗い気持ちになるけど、それでも温かい気持ちになれる。
子猫と女の子とパン屋さんの話が好き。
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五十嵐大介の作品の中でもこれが一番すき。
お父さんが交通事故にあった現場で
焦げたにおいに「お父さん、ごめんね・・・」と
呟きながらもお腹がなってしまう少女。
人間てすごく俗物的な生き物。
いつまでも手元に置いておきたい一冊。
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土産 陶器
そらトびタマシイ あたまに鳥の羽根
熊殺し神盗み太郎の涙
すなかけ 絵描きと砂がにじみでる女性
le pain et le chat
猫アレルギーとパン屋
未だ冬 雪山遭難 春
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現実、リアルな世界に住みながら、世界の向こう側、非現実を感じとれた。
最近はそんな事を考えることが多いから、楽しめる内容となった。
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短編集。
自然や生命と癖のあるひとふりのストーリー。
そして圧倒的な絵の力に飲み込まれる感覚。
アフタヌーン四季賞ときてああなるほど。と頷く。
メリハリの利いてる『そらトび〜』『すなかけ』が印象的。