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紙の本
痛みを感じ続ける柔らかなこころ
2002/10/12 01:24
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投稿者:えんじゅ - この投稿者のレビュー一覧を見る
書き下ろしの表題作と、「愛でお腹がいっぱいだ」の2作。
「いとしくて残酷なきみ」は、金丸さんらしいやわらかなタッチで描かれるナイーヴな高校生の物語。
兄からの性的暴力に耐えかねて、家を離れ、転校して寮生活を始めた継春。ルームメイトの梶原領は、明るく、成績優秀で、だれからも一目置かれる性格。継春は彼の率直で、裏表のない性格に憧れをいだく。
ノーマルな領に自分のもっていないものがすべてあるような気がして、惹かれていく継春。しかし、兄との関係や、領の父との関係が明らかになるにつれ、彼との関係は最悪な方向へと向かっていく。
深く傷ついた継春が、兄に電話をするシーンがいい。兄もまた心に何かの傷を持ち、ああいう形でしか、自分を表せなかったのかも知れないと、憎しみが薄れていくような気持ちになっていく。継春の心のやわらかさ、傷つきやすさは、誰でも一度は味わい、もてあました感情ではないだろうか。大人になった今は、それをいっそ若さの甘美な痛みとして思い出せるけど。
最後はもっと不幸な結末を想像していたけど、領の率直な強さが、継春の救いになる結末でよかった。
「愛でお腹がいっぱいだ」は軽妙なコメディタッチで、すごく楽しい! センスのいいユーモアがあちこちにあって、主人公と一緒に騙されました(笑)
タイプの違う2作品だけど、それぞれ金丸さんらしさが出ていて、久しぶりの新作、充実してました。多作な方ではないけど、いつもセンシティブで、うまい作品をかかれるので、オススメです。