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紙の本
「ボーン・コレクター」以前のディーヴァー
2003/07/23 17:46
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投稿者:Snakehole - この投稿者のレビュー一覧を見る
おおジェフリー・ディーヴァーの新作か,と胃散で……なんて変換だ,勇んで買ったらかつてウィリアム・ジェフリーズという別名義で書かれた旧作なんであった。 「ボーン・コレクター」 でブレイクしたので版元が再発,ハヤカワがその翻訳権を買ったということらしい。
とは言えさすがは「この後であの『ボーン・コレクター』を書く作家」である(映画だけ観て原作を読んでいないヒトはピンと来ないかも知れないが,原作は映画の100倍くらい面白い)。確かにあれほどのインパクトはないものの,パイ生地のように重層的なプロット,物語を進めるテンポの良さなどおさえるところはおさえている。
主人公ジョン・ペラムは映画のロケーション・スカウト,現在はハリウッドの仕事を離れ,ニューヨークのヘルズ・キッチンと呼ばれるスラム街を舞台に一人ドキュメンタリー映画を撮っている。ある日,彼がインタビューを続けていた老女エティの住む建て物が何者かによって放火され,エティは入院,ペラムも傷を負う。警察は保険金目当てに放火を依頼したとしてエティを逮捕,彼女の無実を確信するペラムは徒手空拳で調査を始めるが……。
解説(この文庫の解説は池沢冬樹,関口苑生,吉の仁の豪華3本立てで読みごたえがある)で池沢冬樹氏も触れているが,特に放火犯人サニを魅了する火の描写が素晴らしい。なんちうか,身近に放火魔予備軍がいたらこれは読ませたくないな,と思うくらい美しく魅惑的で力に満ちていて,「ボーン・コレクター」での死体の緻密な描写を彷佛とさせる。
この作品が「ボーン・コレクター」になりそこなった理由は主人公ペラム(オビには「ジョン・ペラム・シリーズ待望の登場」とあるが,吉野氏の解説を読むとこれが3作目だ,なんで?)の曖昧さだと思う。なんというか映画関係者という推理小説の探偵役としては珍しい設定の人物にも関わらず,その職業以外に際立った特徴がない,フツーの「探偵役」なんである。まぁ1作読んだだけでシリーズものの主人公を語るのかと言われればそうなんだけど,逆に良くこんな男が主人公でシリーズになったな,と思ったくらい。彼の相棒になる初老の弁護士ベイリーの方がよっぽどキャラが立ってると思うがな。