紙の本
ブランド・ビジネスでは、創造性はマーケティングに先立つ。
2003/03/27 10:59
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投稿者:ソネアキラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生き馬の目を抜くフランス人経営者をあげよとたずねられたら、日本だと、日産のカルロス・ゴーン社長だが、世界だとLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)のベルナール・アルノー社長兼CEOになるだろう。
ルイ・ヴィトン、クリスチャン ディオール、ジバンシィ、モエ・エ・シャンドン、ドンペリニョンをはじめとして「今や総計45の高級品ブランドを傘下に納める」、ブランドのコングロマリット。そのトップへのインタビューが本書である。
フランスの超エリート大学、エコール・ポリテクニークの出身で、建設会社の経営をしていた彼がなぜブランド産業経営に取り組んだのかという質問に対しては「本物のスターブランドの企業グループを構築すれば、どんな状況でも生き残れるでしょう」と。
しかし、単なるM&Aでは、ここまで業績を驚異的に伸ばすことはできないだろう。「彼が経営を引き継いでから」15年間で売上は16倍になった。
「ブランド・ビジネスにおける創造性はマーケティングに優先します。経営意識が先行すると満足な成果は得られません」
ブランドエクイティ(ブランド資産)に決してあぐらをかくことなく、ルイ・ヴィトンにはアメリカ人デザイナー、マーク・ジェイコブス、クリスチャン ディオールにはジュリアーノ・ガリアーニを起用するなど、伝統の技術に常にアヴァンギャルドな斬新さを取り込んできた。
意思決定が迅速に行なえる人材の育成やシステムの開発。とりわけ顧客を最優良顧客として囲い込むには、独創的な商品と小売店対策や従業員教育が経営の両輪として不可欠のものだと述べている。つまり、ショップやスタッフもブランドの品質の一部である。
LVMH社がメセナにも力を注いでいるのは、アートも、ブランド品も、人間の優れた感性と熟練の技術から生まれてくるものであり、当然至極のことなのだろう。
事実、東京には次々と人気ブランドの直営店がオープンし、活況を呈している。最近聞いたニュースによると、全世界で販売されているルイ・ヴィトンのうち、実に30数%のシェアを、デフレ不況の日本が占めているとか。
よくセレブな女性が所持しているブランド品に対して、「人気ではなくて、長い愛着に応える造りの良さが気に入っていますわ。ウィーンでオペラ観劇の帰りにパリのショップで買い求めましたのよ」とかなんとかいうけど、修理してまで代々使い込む人って、日本人にどれだけいるのだろう。素朴な疑問。やっぱり、水戸黄門の印篭みたいなものなんだろうね。
巻末の主要ブランドデータを見て驚くかも。貪欲というのか、節操がないというのか。ここまで増殖していたとは…。
ブランドビジネスの理念及びトップブランドの持つ普遍的ヴァリュー、その一端から彼の生い立ちやプライベートまで知ることができる。
紙の本
LVMHにとってカルバン・クラインは脅威か
2003/02/01 22:32
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投稿者:アリョール - この投稿者のレビュー一覧を見る
LVMH、いわずと知れたブランド帝国「モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン」の社長兼CEO(最高経営責任者)であるベルナール・アルノーがロング・インタビューに答えた対談録である。話の主軸となるのはLVMH創始者としての経営理念や企業戦略だが、私生活も含め、LVMH誕生のいきさつからフランス経済の展望までが具体的に語られ、興味深い内容となっている。
たとえば“前進あるのみ”といった経営姿勢について「富と安心のためですか?」と問いかける場面がある。
ベルナール・アルノーは「私にとってお金は目的ではないし、何かを意味する指標でもありません。富裕階級の仲間とみなされるのが最も心外です」と答えるのだが、この考え方を覚えておいて後段のアメリカン・ブランド論を読むと面白い。
そこでは、ギャップやカルバン・クラインのようなブランドは脅威となるかと問われる。そしてベルナール・ルノーはこう答えるのである。「ギャップやカルバン・クラインのようなブランドは一過性のものでしょう。その存在も成功もブランドの力というよりは、流通のテクニックに頼っているだけです」。
ブランドへのとらえ方が経営姿勢にも通底しているようだ。つまり、よくあるアメリカ風資本家像への反抗心。
本書全体を通して、いかにもフランス風の“対アメリカ的断じ方”が訴えられ、ビジネス書という枠を越えて読み手の視野を広げてくれる。
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静かなる巨人という感じ。
みんなが持っているそのブランドって実はみんな同じ会社の者だったりして…。
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単に興味から読みました。
あまりにも自分自身の仕事や生活からかけ離れていて
実感がほとんどわきませんでしたが、読み物としては面白いかも。
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ブランド帝国LVMHを創った男 ベルナール・アルノー、語る
ベルナール・アルノー
日経BP社(2003-01-15)
出版社/著者からの内容紹介
世界最強のブランド帝国、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)グループ。ルイ・ヴィトン、ディオール、フェンディ、ホイヤー、ヘネシー、DFS……。ファッション、洋酒、時計、宝石から流通までをもおさえ、いまや傘下のブランドは50を超える。この不況知らずの企業帝国の指揮者、ベルナール・アルノーにとって、初めての自伝が本書である。その生い立ち、ブランドビジネスへの参入、古いブランドを再生するその手法、市場経済と希少価値のブランドとをむすびつける戦略、そしてブランドビジネスの未来まで、自らの経営思想と戦略までを語り尽くす。巻末には、日本に進出したLVMHグループ企業のデータカタログがある。
LVMHグループの全貌とアルノーの経営思想を通して、ブランドビジネスの根幹を知ることのできる、「ブランドビジネスの教科書」。
内容(「BOOK」データベースより)
ルイ・ヴィトン、ヘネシー、クリスチャンディオールを筆頭に欧米40以上のブランドを傘下におさめ、年商1兆円を超える世界最強のブランドコングロマリット、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン・グループ。その経営の実権を握る「カリスマ」、ベルナール・アルノー社長がはじめて、自らの生い立ちから、LVMH社の創設に、ブランド買収と再構築、成長の道程、経営戦略と哲学、そして21世紀におけるブランドビジネスのあり方に至るまでを率直に語った。本書は知られざるLVMHグループの姿とアルノー社長の素顔を伝える初の書籍であると同時に、ブランドビジネスの最高のケーススタディ・テキストブックである。巻末に日本進出のLVMHグループ・ブランドのカタログデータを掲載。
内容(「MARC」データベースより)
ルイ・ヴィトンを筆頭に50以上の世界ブランドを束ねるブランド帝国「LVMH」グループ。その総裁ベルナール・アルノーがはじめて語る、ブランドビジネスの真髄。日本語版として巻末に主要ブランドデータを収録。
著者について
モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・グループ社長。フランス人。国立理工科大学を卒業後、米国に学び、実家である不動産会社を継ぐ。84年、経営困難に陥った国営繊維企業ブサックを買収、傘下にクリスチャン・ディオールがあったことからブランドビジネスを開始。八七年合併したルイヴィトンとモエ・ヘネシーの内紛を期に、一気に同グループの社長になり現在の基礎を固める。その後、戦略的に有名ブランドの買収と再生を繰り返し、2000年には年商百億ドルの巨大企業グループに。いま世界でもっともカリスマ性のある経営者のひとり。
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ブランドの過去
ヴィトン、ヘネシー、ディオール・・・ブランド帝国LVMHを作った男の経営哲学。ある時期からあらゆるブランドが次々とLVMHに吸収されていった舞台裏。知らなくてもいい話かもしれないけれど、知っているとおもしろい。
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『ベルナール・アルノー、語る』日経BP社(2003)
・目標 高品質のブランドを追求する企業グループの構築p.81
・高級ブランド品産業で企業グループが成り立つには、中核となる「本物のスターブランド」が必要。このようなブランドは、永続性、強力なキャッシュフロー、長期にわたる安定成長、という三つの条件を満たしていなければならない。p.107
→それを満たすブランド:カルティエ、ルイヴィトン、ドンペリニヨン
→グッチは無理。モードに偏りすぎているため、キャッシュフローも弱いし、経営に波がある。
→LVMHは併合を望まず、業務提携だけを結ぶことで、グッチにかけている切り札を与えたかった。
・LVMHのブランドには共通点があるのか?・・・それぞれが異なる宇宙で進化しているp.110
・アルノーは発展途上の企業を買収し、グループ内で育てるのが好き。それが会社と株主にとって最善の道。p.113
・中間業者なしに製品を販売したい。DFSは高級ブランド品を東南アジアで売り出すには最適な拠点。成長が見込まれるアジア市場にあって、DFSは重要な資産になる。p.116
・LVMHの成功の理由…LVMHは独立を維持したファミリー企業の集合体であること。比較的小規模な企業の集合体であれば、製品や社員や職人と、直接的で個人的で愛属する関係を築ける。これは完全に分権化した組織でなければできない。p.123
・ヨーロッパのブランド…ブランドの伝統を守り、過去の栄光を再生しようとしている
・アメリカのブランド…伝統に縛られるのは苦手p.125
・今の顧客は自由を求めている。自分の目で選び、自分の美意識にかなったものを買う。単一のブランドを切る時代は終わった。GAPとヴィトンを組み合わせる。p.126
・インターネットサイトの開設…販売促進を目指したものではなく、店に通う顧客に対する新しいサービスが目的。ネットで正しい商品情報の紹介。p.190
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非常に勉強になった。
カリスマ経営者っていうのはただ経営をやってるわけではなく、生き様すら宣伝材料であり商品だ。
資本主義的な割り切ったグロテスクさとキレキレの芸術観にうなった。
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LVMHのベルナール・アルノーの唯一の本。
しかもインタビュー形式。という多くを語らない人物。
内容で魅かれたのは、
・LVMHの哲学:高品質・創造性・ブランドイメージ・企業精神がグループ全体の精神
・高級品の企業グループで「本物のスターブランド」が必要であり、それは永続性・強力なキャッシュフロー・長期にわたる安定成長の3つの条件をみたさなければならない。例えば、カルティエ、ルイ・ヴィトン、ドン・ペリニヨンしかない。
・これからは物質主義から精神的な充実の時代
・ポータルサイトで3つの情報源(3C:コミュニケーション、コンテンツ、コマース)においてリードする企業こそ本当の勝者になれる
他にも企業家以外の顔として投資家・音楽家としての一面の見られる本でした。
ただフランスの政治の話はさっぱりわかりませんでした。
特に投資家としての早くにネット事業への投資に興味をもって、マイクロソフトへ関心を持っていたが投資しなかった後悔やイーベイへの出資の話にはさすがに時代を感じ取るものをもっているなと感じました。
LVMH関連の「私的ブランド論」「LVMHブランド帝国の素顔」を読んでから読むことをおすすめします。
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高級ブランドに疎い自分でも知っているルイヴィトン、ドンペリニヨン、フェンディetcの高級ブランドを率いているLVHMグループ会長が書いた本です。対話形式なのでインタビューを聞いている感じもあります。なによりアメリカ流ではなくフランス流の経営を貫いている姿勢に関心がありました。
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ジスカール・デスタンやミッテランの時代とは比較になりません。安易に叩かれる政治家も権威を失ったものです。ヨーロッパの共同体意識が強まり、民間企業が経済の主導権を握り、人々の目が世界に向けられた結果、国家機能も激変しつつあります。政治家を責めるとしたら、彼らが経済に関して断定的で不当な態度を示していることです。実地研修を行わない高等教育の欠陥です。
官と民とははっきりと区別するべきである。双方には専門家が必要だと考え、本人は企業家であり政治家ではないと自覚する彼の話だからこそ、ヨーロッパと政治の話がとても分かり易かったです。行政や国が民間の事業に関与するなら、現実主義の立場に徹して現場を知るべきである。抽象的な決定は下すべきではないし、机上の空論に耳を貸すべきではない。決定権のある人間に実地研修を義務付けるのが理想でしょう。抽象論を避けるためにも産業、金融、マーケティングの分野での企業研修が必要だという話はとても納得できました。またアメリカとは国のなりたちも文化も違い、参考にはならない。アメリカの政界は実業界と密接な関係がある。フランスのように両者が対立することはない。優れた人材の横滑りにおいてはアメリカを目指すことは間違いである。という話も納得。
教育、政治、文化、文化に裏打ちされたブランド、様々な面においてアメリカと比較をし話を展開していました。教育観においてはアメリカよりも日本との方が近いものがあり、一歩先に進むべきだとの記述がありました。フランスの教育制度は、非常に知的レベルの高い若者を育成している。しかしその一方ではあまり実務的ではなくエリート主義によっている。実生活とかけ離れた教育が行われているとのこと。ここで文化とブランドに関して触れられていた時に感じた違和感が蘇ります。「たかだか二十年の歴史、一世代の成功にすぎません。フランスには歴史があり、それが夢を与える。」政治の面からみた時に必要とされる実務的な、実生活に即した教育。文化やブランドの面からみた時に必要とされる俗世に惑わされない教養的な教育。この二つを両立させることはとても難しいことなのかもしれない。後者を生まれ育った家庭環境の中で身につけ、前者を高等教育や社会で身につけるのが理想でしょうか。フランスをはじめヨーロッパから見ると前者のみを身につけていると捉えられているアメリカは、やはり下に見られる存在なのかなと。フランスの教育体制が今日のものになったのは其れ相応の歴史背景があ
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今世紀最大のブランドコングロマリットLVMHを築き上げたベルナール・アルノーのインタビュー本。10年前の本ですが、未だに拡大を続けているハイブランド業界のモンスター企業です。最高位かつ安定したブランドを複数ジャンルで抱えるなんて羨ましいかぎり。本書は、彼やLVMHにまつわる噂や誤解に対応するため発表され、フランス人らしく、事業についての具体的な話はさておき、理念や思想、政治観、メセナなど、思考の深さや活動の善さを問うような構成になっている。創造的な美を愛する真面目な理系人が、あのブランド帝国を支えている。
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彼は成功したから成功者なんだよね…バックグラウンドもあって、まあ勉強もできて世間で優秀とされるレベルで、男で、運が良かった。私はこれをもって、不公平についてより理解を深めたと思う。読了日はだいたい。