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紙の本
冲方さん流石です
2003/02/23 04:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
冲方丁氏の富士見ファンタジア文庫初作品。
冲方氏といえば、「ピルグリム・イェーガー」の原作などで有名であるが、この「カオスレギオン」も注目すべき作品だろう。
文庫が発売される以前から、ビデオゲーム化も平行して進むという異例の展開をみせた当該作品であるが、物語の内容的はいたってシンプルである。
世界設定は王道ファンタジーともいえる中世ヨーロッパ風の背景を持っている。著者の作風としてキリスト教世界を題材したものが多いのだが、やはり、世界観はそのままキリスト教風味が色濃い。モラルなども含めて、登場人物の深層にはキリスト世界が前提として存在しているのだ。
主人公は地方の農村出の剣奴である。主人公はその生い立ちから身分に対しコンプレックスを持っていたが、ある貴族との出会いがそれを一変させる。二人の友情は階級社会の改革という理想の下に堅く結びついていったが、後に、理想が挫折することにより、友情もまた崩れ去る。つまり、主人公の世界は急転するのである。時系列的には、主人公が友人との決別を経てから物語は始まっている。
この本は、何の予備知識もなしに読めば、それだけ面白く読めると思う。変に「魔法」とか「技」とかで押し切らない分、冒険小説として素直に読めるのである。本の厚さを見ると分かるのだが、「龍炎使い牙」以来久しい、ライトノベルにあるまじき分量を誇っているにもかかわらず、すんなり中身が入ってくる。
物語が複雑に編みこまれているため、さすがに後半は展開を急ぎ過ぎている感があるものの、全体的に一冊に詰め込める限界以上の物語が展開されている。ファンタジー小説好きならば確実に楽しめるはずである。富士見から王道ファンタジー小説がなくなって久しいので、ようやく本格的な作品が登場したといえるだろう。
ただし、上記の物語の概要を見ても分かるとおり、某「ベルセルク」と展開が被る部分もあり、幾らか既作品の焼き直しの感もある。また、全体的に退廃的な雰囲気が漂っているので、こういった作風が苦手な人には残念ながらお薦めできない。加えていえば、結賀さとる氏の挿絵が作品と微妙なずれを生じさせているので、「結賀先生最高!!」というジャケット買いをすることも避けた方が賢明だろう。
ファンタジー小説を読みたい人、「冲方丁」を読みたい人には無条件で推薦したい一冊だ。