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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2003.3
- 出版社: 早川書房
- サイズ:20cm/293p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-208480-4
紙の本
ダークライン (Hayakawa novels)
テキサスの田舎町に引っ越してきた「私」は、森で焼け落ちた屋敷の跡を発見。同じ夜、少女が首無し死体で発見された。人生で最高に輝いていた夏休みと、それを彩ったおぞましくも懐か...
ダークライン (Hayakawa novels)
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商品説明
テキサスの田舎町に引っ越してきた「私」は、森で焼け落ちた屋敷の跡を発見。同じ夜、少女が首無し死体で発見された。人生で最高に輝いていた夏休みと、それを彩ったおぞましくも懐かしい事件。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジョー・R.ランズデール
- 略歴
- 〈ランズデール〉テキサス州生まれ。テキサス大学卒業後、様々な職業を転々とし、80年作家デビュー。「ボトムズ」でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞。
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紙の本
『ボトムズ』の地平に咲いたもう一つの南部少年サスペンスの傑作!
2003/06/01 15:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シュン - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ボトムズ』が、大戦前、深南部の森のなかにある木造家屋での家族のドラマであったのに比して、本書『ダークライン』は、戦後という言葉が消えかけつつある1958年という時代、掘っ立て小屋みたいな田舎町から町に出てきてドライブイン・シアターの経営を始めたばかりの一家のドラマである。いわば、暮らしぶりはより現代の生活に近くなり、映画、ハンバーガー、フライドチキンといったアメリカ的日常が似つかわしくなりつつあった時代の物語なのである。
それでいて『ボトムズ』と共通するのが、森のなかに残ってゆく伝説と怪談であったり、天候、季節によって水嵩を変える川の流れであったり、闇の深さや豪雨の激しさであったり、黒人たちに対する未だ変わらぬ人種差別の不当さに対する少年たちの当惑であったりする。
『ボトムズ』ではプリミティブな日常生活を切り裂くように跳梁するシリアル・キラーの影がミステリーの核であったが、この作品では、言い伝えのなかに見られる過去の事件の真相がサスペンスの核を作ってゆく。
そのまた一方で、カルト、ドメスティック・バイオレンス、近親相姦、同性愛、SM等々。これら現代に繋がる病巣についても、ハックルベリー・フィンやトム・ソーヤーみたいな少年冒険小説のスタンダード・タッチ描いてしまうのがランズデール。職人技の小説。病みつきになりそうな魅力。
ノスタルジック、かつ非情な時間の儚さこそを、重く、意味深げに感じさせてくれた『ボトムズ』のエンディングは、本書のラストでも同様に味わうことができる。無情、冷酷、残虐な事件、奇怪な死体、醜悪な風景を扱いながら、全編に漲る叙情が最後に効いてくる。胸を抉るリリシズムは、誰にもあった少年時代への切ないほどの追憶を痛いほどに刺し貫いてくるはずである。
紙の本
ホラーでもミステリーでもない、良質で感動的な家族小説
2003/04/11 05:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヒロクマ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここ数年、日本での翻訳出版がさかんになっているランズデールだが、これは今まで読んだ中でベストの1冊だ。
タイトルと装丁、そして帯のキャッチコピーを読むと、おどろおどろしたホラータッチのミステリーを想像する。実際自分もそういう話を期待して読み始めたのだが、いい意味で見事に裏切られてしまった。
舞台は1958年のアメリカ南部のテキサス州。主人公スタンリーは13歳の少年。家はドライブイン・シアターを営み、両親と姉、それに愛犬ナブと暮らしている。そして家政婦のロージィ・メイと、映写技師のバスターという二人の黒人がこの家族に深く関わってくる。
夏のある日、スタンリーは家の裏庭で、地面に埋められていた古い手紙と日記の断片をみつける。そしてその手紙と日記は、13年前の同じ日に起き、未解決のままの2人の少女の死亡事件と関連があるらしいことをつきとめる。こうしてスタンリーは姉といっしょに、事件の真相をつきとめようとする…。
物語の柱となるのは、13年前の事件を究明しようとするスタンリーの行動だが、それはあくまでも物語の推進力にすぎない。深く印象に残るのは、スタンリーと家族の関係、そして2人の黒人との心の交流だ。融通が効かないけど家族を深く愛している父、黒人差別に反感を持つ母、思春期を迎え男の子への興味が抑えられない姉、そして忠実な愛犬ナブ。
また2人の黒人がいい。ロージィ・メイは夫に暴力を振るわれ、 スタンリーの家族と同居するようになる。最初は黒人ということで住み分けを主張していた父親も、ロージィの包容力と芯の強さに気付き、家族の一員として迎え入れていく。
バスターは偏屈な老人で、スタンリーも始めのうちは馴染めなかった。あるきっかけで事件のことを話し、2人の交流が始まる。そしてバスターは少年に人生の喜びと悲しみを教えていく。
黒人差別が色濃く残る時代と地域を背景としながら、この2人の黒人が少年と家族に受け入れられていく過程が、淡々と、しかし感動的に描かれていく。
猟奇的な事件が題材にはなっているものの、物語の大半を占めるのは、日常の何気ない描写、そしてひと夏を通じて、子供から大人へと成長していく少年の姿だ。
実家が経営するドライブ・イン・シアターも、小道具として効いている。ここで上映される「めまい」や「蠅男の恐怖」などの作品が、時代を反映していて、映画ファンなら思わずにやりとしてしまう。
少年時代の未知なるものへの恐怖と憧れ。そして夢と現実との境界線を教えてくれる人々。原題(A Fine Dark Line)にあるように、まさに光と暗闇を隔てる1本の線の間を揺れ動く、少年の心の成長がこの物語のテーマだ。
この物語はホラーでもミステリーでもなく、良質で感動的な家族小説なのである。
スティーヴン・キングの「スタンド・バイ・ミー」やロバート・マキャモンの「少年時代」に感動した人ならば、絶対読むべき物語だ。