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商品説明
【直木賞(129(2003上半期))】禁断の恋に悩む兄妹、他人の男ばかり好きになる末っ子、居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱いて−。愛とは、家族とはなにか。こころふるえる感動の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
村山 由佳
- 略歴
- 〈村山由佳〉1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。93年「天使の卵」で第6回小説すばる新人賞受賞。他の著書に「すべての雲は銀の…」「晴れときどき猫背」など多数。
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紙の本
乗り合せた舟の原点は?
2003/09/01 13:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
序の部分が禁断の恋に悩む兄妹の話で進んで行く。
徐々にこの家族(近親相姦の兄、妹、他人の夫ばかり好きになる末ッ子、居場所を捜す団塊の世代の長兄、戦争の傷痕を抱えた父、家政婦から後妻に入った母)のそれぞれの人生が開かれ、それがタイトルの星のように瞬いて「家」という舟に乗って時の海を渡って行く。
そして最後に戦前生れの父の戦争の傷が暴かれ、心の傷跡がこの家族の根源に辿りつく。
立ち木に括りつけられた八路軍の少年は15,6歳。
「お母さん」と叫ぶ少年に…重之は銃剣を‥
そして慰安婦の惨状。
文中の高校生の言葉
「どうして誰も、戦争はいやだって言わなかったんですか?」
そ「ういう時代ではなかった…」と言いかけてそれを呑み込んだ老いた重之。
「あんたらは、頼む。ちゃんと声をあげてくれ」と答える重之。
最後にこの戦争の傷跡を心に深くおった老いた重之の言葉が重い。
「足を踏んだほうはすぐ忘れるけど、踏まれたほうはそう簡単に忘れられないもんだ」
家族とは、人生とは何か?を考えさせられる作品。
紙の本
とにかく泣けた。
2003/08/14 02:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:リオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つの家族の、それぞれの立場にたって書かれた6つのストーリー。
血のつながりはないと信じていた兄妹の恋、不倫を繰り返す末娘、家庭に居場所を見つけられない長兄、かつての戦争がつけた心の傷跡を今もなお消えない厳格な父親。どの話もそれひとつで完結しているのに、6つが集まると「家族」がテーマの小説になるのが不思議。
誰が悪いというわけではなく、けれど皆がそれぞれ心に痛みを抱え生きている家族。怒り、喧嘩、悲しみを繰り返して離散してしまったけれど、そこにはいつも愛があった。
個人的には戦時中のエピソードがとても印象的。母のついた嘘が明らかになった時の気持ちはなんと表現すればいいのだろうか。
涙が溢れて読めないくらい、とっても切なく、やさしい気持ちになれる一冊。
紙の本
ひとつの舟に乗り合う家族
2003/08/12 10:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さら - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までの村山作品と少しテイストが違っているが、根っこは同じだと感じる。
ひとつの舟に乗り大小さまざまな波に揺られながらも進んでいくことしか
出来ないそんな家族たち。
兄と妹の愛、戦争経験者の父、居場所を探し続ける長男、恋愛に一対一で向き合うことが出来ず人の男ばかりと付き合う末っ子、恋愛友情に悩む孫。
それぞれが何かを抱え、それでも必死に生きていく。
昔負った傷、自分が犯した罪、葛藤、悩み、皆それぞれ違うし大小さまざまでは
あるが、他人からどう言われようと自分の中にある重石は誰にも取り除けない。
自分がそれを抱えどう折り合っていけるかだけなのだ。
読んでいて辛い部分も多いが、力強さを感じる。
切なく哀しくでも優しく感じる作品で、読み終わって背筋がピンと伸びる…そんな物語です。
紙の本
愛も、運命も
2003/11/15 14:10
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「愛は言葉だ」
ある超人気映画に登場する、名前どころか顔すらも忘れてしまいそうな
脇役が主人公に向って言う台詞である。
この台詞はこういう意味であったと私は記憶する。
「誰かを大切に思う気持ち」を「愛」と表現するなら、それは確かに
「愛」なのかもしれないが、大切なのはその「気持ち」で、それが
「愛」かどうかはどうでもいい。
「言葉」に囚われはいけない。
「言葉」は「気持ち」や「行為」に意味を与えるが、自由を奪う。
『星々の舟』は、あるひとつの家族、その成員6人のそれぞれの
視点からみた「家族愛の形」を繊細な筆致で描いたものである。
この家族は皆、闇を抱えている。
そして、互いに闇を抱えていることを知りながら、目を逸らす。
しかし、母親の死が、残された家族の闇を再び浮かびあがらせる。
それはまるで、夜空を覆っていた厚い雲が流れ、
再び顔を出した月が、星々が、下界を照らし出すかのようだ。
闇夜に浮かぶ人影は蒼白く、しかし温もりを失ってはいない。
どこにでもいそうでいない家族の、どこにもなさそうな物語。
しかし、押さえの効いた淡々とした文体が、物語にリアリティをもたらす。
ここには、生温い救済は存在しない。
登場する一人一人は、これまで自分が歩んできた道を嘆くでもなく、
悔やむでもなく、ただ闇を抱えたまま生きる。
そういえば、冒頭の脇役はこんな言葉も残していた。
「運命も、言葉だ」
紙の本
良くも悪くも共感できなかった
2023/10/27 17:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:狂ったチワワ - この投稿者のレビュー一覧を見る
内容としては、複雑であり
描写もえぐかった
もう一度読み返そうとは思わないが
いい作品だとは思う
そんな作品
紙の本
舟に乗って、どこへ行く?
2003/11/18 10:06
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めに思った事。村山さんにしてはシビアな話だなあ…。
一つの家族の一人一人の視点から語られる、短編集みたいな作りだ。兄妹と知らずに愛し合ってしまった二人、相手のいる人ばかりを好きになる人、戦争を生き抜いた人、家政婦から後妻に迎えられた人、団魂世代の人。
霞んだ世界のように淡々と、ストーリーは流れる。空気が濃くて、咽てしまうような、思わず目を伏せてしまうような…。
中でも一番添って読めたのは貢の娘、聡美の話だ。ものすごく可愛くて賢くて人気がある親友。微かだが確かに在る劣等感。身に覚えがある。クラスの男子から「お前引き立て役だ」とか「よく並べるな」とか、そういう事を言われた経験もある。私は悔しくて、見返してやろうって前向きになったけれど、それで本気で悩んで立ち止まる人だってたくさんいるだろう。言葉っていうのは、当たり前に使用しているが本当はもっと慎重に使うべきものだと思う。言霊、言葉の暴力、そう言うように言の葉には魂がこもる。だから人を慰める事も、陥れる事も、もっと大胆に言えば殺す事だって可能だ。肉体的な痛みよりも精神的な痛みの方が計り知れない。目に見える傷と違って外側からは見えない分、厄介でもある。肉体的な傷は医者の手と時間によってそれなりに回復するが、精神的な傷というのは治癒したかどうかさえ確認できない。
本書では父親である重之の言葉で深く傷ついた娘、戦時中の慰安婦の言葉で救われていた重之、何か「言葉」に重点を置いているような箇所がありました。言葉は慎重に選んで使わなくては、そう思います。
戦時中の話は沖縄に修学旅行で行った時に聞いたり、祖父から聞いたり、両親の実家の近所にあるお寺に住むお年寄りから聞いたりして少ないながらも知識がある。映画で観たシーンがそのままインプットされているので、悲惨で残酷で痛々しく苦々しいイメージが強いが、その時代を生きた人はみんな言います。「平和であること、それが一番幸せ」願わくは、争いのない世界。困難を極めることであろうとも、その努力はしていきたいですね。
学生運動と言えば、浅間山荘を意識する。私が生まれる前のことなので一体何が原因でどういった事件なのか知識は浅いが、かなり大きな出来事として心に刻まれている。そう、例えば「三億円事件」と同等なイメージ。
久々に過去の出来事に思いを馳せました。私が生まれてから起きた出来事と比べ、本書に書かれている出来事は重みがないが、それでもちゃんと知っておきたい事だと思いました。
舟に乗って、どこへ向かうのだろう。読み終えてふと、そんなことを考えた。
紙の本
テーマは重いのに、とても潔い前向きな話。
2003/08/08 16:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はらこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『あきらめ』と『執着心』。この2つを使い分けて、自分が傷つかないように傷つかないようにして生きている登場人物たち。
それでも、『生きること』への希望を持っている。
畑を耕す長男・貢の<何のために>。それは<何のために>ではなく、生きているという圧倒的なまでの実感なのだ。父・重之がかつて自殺未遂までした娘・紗恵の横顔から感じた幸福のない幸せ。残された枯れゆく人生にも何らかの意味があると信じずにはいられない重之。
ここにも、失った者への、あきらめと執着がにじみ出ている。
それぞれの思いがどこへ向かっていようとも、やはり家族はひとつの舟に乗って進むしかないのだろうか。
紙の本
本年度の直木賞作は、ふしぎな味わいの家族小説
2003/07/28 07:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山本 新衛 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふしぎな味わいの家族小説である。あえて感覚的な表現をすれば、ひさしぶりに昔の恋人と出会ってしまったときの、気恥ずかしさと後悔。▼この家族には、いささか特殊な事情がある。大工の棟梁として厳格なだけがとりえに見えた父親が、ひそかに愛人をつくり子までもうけていた。そして、妻が病気で死ぬと、すぐにこの愛人を後妻として迎えた。先妻の男の子ふたりと、後妻のつれ子とその後に生まれた女の子がふたり。このようにして、新たに構成し直された六人の家族。▼そして今。長男は、娘が高校生となり、若い女性とママゴトのような浮気もし、人生を問いなおす年代に達している。父親は、かつて愛人だった妻もついに亡くし、隠居の身である。さらに、次男と長女の間にあった禁断の恋の精算は。▼ひとつの章立てごとに、家族がそれぞれの目線で、抱える問題を淡々と写し取っていく。こうして、各人の、家族という「船」のなかでの位置取りが鮮明になっていく。▼福永武彦の恋愛小説を彷彿とさせる静謐な文体は、どこか懐かしく、どこか危うげで、とても印象的である。
紙の本
村山由佳の旅路の途中
2003/06/19 18:48
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:戸越乱読堂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
私はほとんど小説を読まない。村山由佳の作品を読むのは理由があってのことだが個人的な理由なので、ここでは省く。これまで村山は主として青少年向けの小説を書いてきた。これはこれで重要なジャンルだと思うし、その中で彼女は良くやってきたと思う。「青のフェルマータ」にせよ、「きみのためにできること」にせよ楽しく読みきることができた。「翼」辺りから世界を広げてもう少し上の世代を意識した、と言うよりは彼女自体の加齢のせいかもしれない。ただ、手法や構成などに大きな違いはなかったように思える。同時期に出版された「永遠」とこの本はこれまでの「青少年向け」から広い意味の「恋愛小説」に脱皮した物だと思う。どちらもこれまでの作品とは一味違う。この2作を読んで私は年老いてから読むに堪える「恋愛小説」を村山がこれから書いてくれるのではないかと期待した。