ダークエルフ物語 ３ 新天地、フォーゴトン・レルム

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投稿者：苦楽　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　地下世界（アンダーダーク）に自らの居場所を求め、そして得られなかった主人公ドリッズトは、地下種族にはタブーとされた地上で自らの居場所を探すことを決意して旅立った。
　しかし、地上の太陽は彼を苦しめ、太陽光に耐えられない愛用の剣や装備を奪いさる。そして、彼が捨て、そのために生命まで狙われることに至った彼の種族ドロウ（ダークエルフ）の邪悪な評判が、彼が助けた人々にすら彼を恐れさせ、忌避させる。自らを理解してもらえぬまま人間たちに追われる中で、ドリッズトは老いた盲目のレンジャー（野伏）と出会う。最初は相手を疑い、侮っていたドリッズトだが、老レンジャーとの生活の中で様々なことを学び、自分自身についても理解を深めていく。その一方で、彼をつけねらう邪悪な陰謀が蠢いていた。

　主人公であるドリッズトは剣の達人で、邪悪な種族ドロウの一員でありながら、善の心を持って自らの種族に背を向けた異端児である。これだけ見れば、我々とはかけ離れた超人であるが、彼は己が受け入れられぬことを悲しみ、恐れ、そして自らの居場所を求め続ける一人の「ひと」でもある。
　我々は彼の超人性に憧れ、彼の活躍に胸を躍らせる。そして、彼の悩みに共感し、彼の解決法──それは彼の能力や、我々が使うことの出来ない魔法などに依るものではなく、己を知り、自らではどうしようもないこと（彼の場合は己の出自）を受け入れ、そしてその上で自分自身としてその悩みに立ち向かうこと、そして己に課した生き方に忠実に生きること──に静かに肯き、考えを巡らすのである。

　もちろん、本作の魅力はそのテーマに留まるものではない。前二作が地下世界の冒険だったのに対し、本作の緑豊かな地上の世界の生き生きとした描写、ドリッズトの師となる老レンジャー、モントリオをはじめとする個性豊かなキャラクター達。そして、地上で繰り広げられる冒険が本書の魅力である。
　数に勝る敵を地の利を生かして迎え撃つ、レンジャーの力を存分に見せつけるような迎撃戦。知恵と機転をフルに活かしたドラゴンとの対峙。豊かな自然の中で様々なことを学んでいく充実した生活。そして、様々な出会いと別れ。こういった魅力的な場面が織りなす冒険にも読者は心を躍らせるのである。

　己を理解し、己に課した生き方を守ろうとするドリッズト。彼が何を見いだし、何をその冒険の果てに手に入れたのか。それは是非本書を読んで確認して欲しい。
　本書は、『ダークエルフ物語』三巻の最後を飾るに相応しい内容を持つ、一級品のエンターテイメントである。