「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
現代人は、いかにして「神話の知」を見いだすことができるのか。日本を代表するユング派心理学者であり、独自の物語論を展開する著者が、日本神話の意味とその魅力をわかりやすく語り、日本人の心性と現代社会の課題をさぐる。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- 序章 日の女神の輝く国
- 1 日の女神の誕生
- 2 神話の意味
- 3 現代人と神話
- 4 日本神話を読む
- 第1章 世界のはじまり
- 1 天地のはじめ
- 2 生成と創造
- 3 最初のトライアッド
著者紹介
河合 隼雄
- 略歴
- 〈河合隼雄〉1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部数学科卒業。文化庁長官、臨床心理学者。京都大学名誉教授。著書に「昔話と日本人の心」など。
関連キーワード
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
日本人として現代を生きるために
2008/10/11 23:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反射鏡 - この投稿者のレビュー一覧を見る
河合隼雄氏の神話研究の始まりは、氏がスイスのユング研究所に在籍した1962年(昭和37年)ごろにさかのぼる。昭和3年生まれの河合氏にとっては、軍国主義思想と神話との結びつきを体験しているので、神話に対峙することにかなりの抵抗を感じていたようだ。しかし、自分自身の分析をはじめとし、日本人や日本文化について理解を深めるにあたり、神話研究の重要性を肌身に感じ、以後、神話研究は河合氏にとってのライフワークになった。現代人の生き方を考えるためにも神話を知ることの重要性を提言しつづけた河合氏のこの著書を、かなりの期待を胸に読み始めたことを思い出す。
『神話と日本人の心』は太陽神の話から始まる。日本神話の太陽神であるアマテラスは女性であり、太陽神が女性であることは、各国の神話と比べてみると例外的である。各国の神話を比較し日本神話の特徴を説明することは、比較神話学の書物にも著されていることであるが、河合氏の著作の面白さは、それが日本人のものの考え方や感じ方、人間関係、行動様式にどのように反映されているかを、実例を挙げて紹介していることである。論旨を追って納得することもよりも、自分の体験を振り返って腑に落ちるというのが河合氏の著書を読む楽しみである。
本書では、「母性原理」をはじめ、「中空構造」「影」「トリックスター」「補償作用」など、河合氏が既に他の著書で指摘してきた概念や、ユング心理学のキーワードを用いつつ、現代の日本人の生き方について神話を通して理解し考えることがテーマになっている。日本神話は、我々がこころの深層において共有している発想の型である。自分のことだから何となく分かることもあり、近くにありすぎてかえって見えにくいというのが、自分自身の特徴であり、自国の文化なのであろう。
本書が研究書としての性格だけをもっているのであったら、知的好奇心が満足することで読了するところであるが、自分の行き方を考えるための啓蒙書という性質を備えていることもあり、ページをめくりながら、自分の深層に日本神話が流れていることを実感し、静かな元気が湧いてくることを体験した。将来、再度本書を読むことがあると思うが、きっとそのときも、我々の深層を流れるの地下水で喉を潤すような体験をすることだろう。
紙の本
本質を鋭く見抜く著者の力に脱帽した
2006/09/02 12:01
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者はユング派の心理療法家として活躍し、多くの書物をなしてきた。心理学に少しでも興味がある人なら楽に読みこなせる本もたくさん刊行しているが、本書はかなり本格的な書物に分類されるだろう。決して読みやすいとは言えない『古事記』や『日本書紀』をたくさん引用しながら、これらをきちんと読み解き、日本文化の基層に迫るからである。深層心理学者の面目躍如といった感がする。
本書で終始語られる「中空構造」は、著者が早くから見抜いてきた日本文化の本質であるが、『中空構造日本の深層』や『昔話と日本人の心』などの書物でも丁寧に論じられてきた。神話については、戦時中、日本人を戦争に駆り立てるのに軍部が利用した記憶があるために、正面から取り上げるのにはためらいがあり、時間がかかったとのことである。主に海外で日本の神話について語ってきて、評価されてきたようであるが、ようやく数十年の時を経て日本でも書物にする機が熟したというところである。
「中空構造」は本書では正確には「中空均衡構造」と呼ばれるが、中心に「無為」な存在を置き、対立的な2つの存在は常に均衡を図るように配置するという絶妙のバランスのことである。ただし、これらの配置は静的なものではなく、新しいものが入ってくる度に適切に配置を変化させ、均衡を得るまでダイナミックな力学を働かせる。ここに、新しいものを受容しつつ、大きな構造は失わないという日本文化の特質が指摘される。著者の推論の部分も多いが、相当に根気強く『古事記』や『日本書紀』を読み解いた結果導き出されたものであり、説得力に富む。ギリシャ神話や諸外国の神話とも対比した上で論じているので、安心して受け止めることができる。
それにしても、作者不詳の昔話や1000年以上も前に記述された神話に、今の日本文化にも通じる特質が見いだせるのは驚きというほかないだろう。こうしてみると、昔話や神話の時代も決して、遠い昔のことではなく、私たちが思っているよりもずっと近いことが分かる。とかく私たちは、古代に現代とは異なるロマンを求めがちだが、案外、違いはないのかもしれない。歴史に学べば、1000年など簡単に飛び越えてしまえる時間の単位に過ぎないと感じさせられる。
ただし、グローバリズムが進展し、一神教の世界とも頻繁に接触するようになって、日本人も「中空均衡構造」だけでは物事を処理しきれなくなってきた現代にあって、どのようにして生きていけばいいのかという課題は、なかなか困難である。最終章に至って著者もこの問題に言及するが、解決は若い世代に任されているかっこうである。
本書は、著者が長年の宿題を終えるのにふさわしい書物と言うべきだろう。著者が心の中にひっかかっていた宿題を済ませた安堵感を共有して、私も本書を読み終えた。
紙の本
「河合老人力」まだまだ健在
2003/09/22 13:54
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:1969 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年発刊された『口語訳 古事記(完全版)』(文芸春秋刊)は、随分と売れたようだ。本書の著者河合も指摘している通り、グローバリゼーションに晒される日本人にとって、ルーツ探求(身体的にも精神的にも)がブームとなっているし、本書の発刊もタイミングが良い。
もっとも、タイミングが良いと言っても、本書は40年来河合が日本神話の中に見抜いた「中空均衡構造」(二項対立的空間の中に、無為の第三者が存在することにより、対立概念の善悪ならびに行動の成否について明確な結論をさけ、バランスを保持する)によって、神話に見られる日本人の精神特性に言及したもので、一神教の「中心統合構造」との丁寧な対比は、見事という他ない。
また、この「中空均衡構造」は外来の新しい対立概念ですら周縁部から徐々に取り込み、いつのまにか新しい構造としてシステムを更新してしまうという、なんとも凄まじい特性を持っているのだ。日本におけるキリスト教の発展的経過のくだりをみても、もうそれは薄ら寒いほどにはっきりと分かる。河合は、西洋社会にみられる「中心統合構造」の問題点を指摘しながらも、この「中空均衡構造」は無責任を招きやすく、バブル経済によって拡散・蔓延した無責任システムの危機を警告する。
河合の指摘は、私たちの日常性のなかに頻繁に思い当たる節があって怖い。
私は『古事記』をむしろ物語として楽しんできたのだが、無意識裡にこうした物語性に自分も取り込まれてきたのか、と思うとゾッとしてしまう。刺激的・衝撃的といっていい内容だった。
しかし、ただひとつ残念なのは、本書は河合の独壇場であり反証がほとんど無い。河合自身も「あとがき」で、「最近老人力が増してしまい…」、他の論考を精査することなく発刊に至ってしまったことを自戒している。それでも、茶目っ気たっぷりに「まあ、この歳になれば、こういう書き方も許してもらえるだろう」と言うところがこの人らしいのだが、むしろ反証はこれからの日本を担う若い世代の読者諸氏に任せる、というのが本音であるように感じられた。
「問題提起だけをして、それはないよ」と言いたいところだが、ぐっとその言葉を飲みこんで、最後に「してやられた」と思いながらも、考えさせられてしまった一冊だった。
紙の本
太陽神スサノオ
2003/09/09 21:06
2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jupitorj - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本神話の中空均衡構造を見事に分析している。
しかし、なぜ、中空均衡構造がとられたのだろうか。
著者は終わりにおいて
ヒルコ=男性太陽神の復権を考える。
ならば、スサノオの復権が考えられなければならない。
スサノオこそ、天皇権力に歪められる前の本来の日本神話における
太陽神であり、主神であり、英雄神であった。
しかし、スサノオは既存の王権に反逆し、自らの王権を創造するとされるがゆえに、
天皇権力から忌避され、太陽神、主神としての性格を奪われた。
そして、天皇権力は
日の妻であり、月の女神であり、
スサノオの配偶神であるクシナダをアマテラスに祭り上げ、
自らの権力の基盤とした。
この本はこうした日本神話の根本的性格に対する認識が欠けている。
本来の男性太陽神がその地位を奪われ、偽りの女性太陽神が
天皇権力によって創造されて日本人に刷り込まれたことが、
日本人の心にどのような影響を及ぼしたか分析してもらいたい。
紙の本
内容紹介
2003/07/24 10:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩波書店 - この投稿者のレビュー一覧を見る
〈著者からのメッセージ〉
最近の急激なグローバリゼーションの波の高まりのなかで、日本人や日本文化のあり方について考えようとする人も増えてきた。ナショナリズムの偏狭さではなく、世界全体のなかで、日本人としてのルーツを探ろうとすることが、現代は非常に大切になってきている。しかし、それは閉鎖的なものではなく、「開かれたアイデンティティ」でなければならない。
本書のなかで解明されている日本神話のあり方は、日本人にとって「開かれたアイデンティティ」を探索してゆく上において、多くの示唆を与えてくれるものであろう。そんな点で少しでもお役に立てば、筆者としての幸いはこれに過ぐるものはない。
(本書「あとがき」より)
〈著者紹介〉
河合隼雄(かわい はやお)
1928年兵庫県生まれ。臨床心理学者。京都大学名誉教授。1952年、京都大学理学部数学科を卒業。1962-65年、スイス、チューリッヒのユング研究所に留学。日本で最初のユング派分析家になる。京都大学教育学部教授、国際日本文化研究センター所長等を経て、2002年1月より文化庁長官。
著書に『未来への記憶』(上・下、岩波書店)、『ユング心理学入門』(培風館)、『無意識の構造』(中公新書)、『母性社会日本の病理』(中公叢書)、『昔話と日本人の心』(岩波書店)、『明恵 夢を生きる』(松柏社)、『臨床教育学入門』(岩波書店)、『とりかへばや、男と女』(新潮社)、『紫マンダラ』(小学館)、『日本人の心のゆくえ』(岩波書店)、『心理療法入門』(岩波書店)、『河合隼雄著作集 全14巻』(岩波書店)など多数。現在、『河合隼雄著作集 第II期』(全11巻)を岩波書店から刊行中。
〈目次〉
序章 日の女神の輝く国
1 日の女神の誕生
2 神話の意味
3 現代人と神話
4 日本神話を読む
第1章 世界のはじまり
1 天地のはじめ
2 生成と創造
3 最初のトライアッド
4 神々の連鎖
第2章 国生みの親
1 結婚の儀式
2 男性と女性
3 意識のあり方
4 国生みと女神の死
5 火の起源
第3章 冥界探訪
1 イザナキの冥界体験
2 禁止を破る
3 原罪と原悲
4 原罪と日本人
第4章 三貴子の誕生
1 父親からの出産
2 目と日月
3 アマテラスとアテーナー
4 ツクヨミの役割
5 第二のトライアッド
第5章 アマテラスとスサノヲ
1 スサノヲの侵入
2 誓約
3 天の岩戸
4 アマテラスの変容
第6章 大女神の受難
1 大女神デーメーテール
2 再生の春,笑い
3 イナンナの冥界下り
4 イザナミ・アマテラス・アメノウズメ
第7章 スサノヲの多面性
1 スサノヲの幼児性
2 トリックスター
3 オオゲツヒメの殺害
4 英雄スサノヲ
5 スサノヲ・ヤマトタケル・ホムチワケ
第8章 オオクニヌシの国造り
1 稲羽の素兎
2 オオクニヌシの求婚
3 スサノヲからオオクニヌシへ
4 スクナビコナとの協調
第9章 国譲り
1 均衡の論理
2 大いなる妥協
3 タカミムスヒの役割
4 サルダビコとアメノウズメ
第10章 国の広がり
1 海幸と山幸
2 「見畏む」男
3 第三のトライアッド
第11章 均衡とゆりもどし
1 均衡のダイナミズム
2 三輪の大物主
3 夢と神
4 サホビコとサホビメ
5 結合を破るもの
第12章 日本神話の構造と課題
1 中空均衡構造
2 他文化の中空構造神話
3 ヒルコの役割
4 現代日本の課題
あとがき
索引