きのこアラカルト （ポピュラーサイエンス）

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投稿者：鳥居くろーん　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

「柔軟な」という表現がぴったり当てはまるキノコエピソード集。

ポピュラーサイエンスシリーズの「科学的に」という方針にはうまく沿えないかもしれないとの著者の言葉にあるように、キノコの学名の由来や化学成分の話にのほかに、自らの体験談やおいしいキノコ料理の話、あるいは民俗的なキノコについての話なども加わり、お堅いサイエンスの枠に収まりきらない幅の広いものに仕上がっていると思う。

キノコというと「食えるか食えないか」ばかりを知りたがり、それが食べられるとわかれば名前を覚え、毒とわかったら見向きもしない、ただそれだけ、というのはまったくもって勿体ない。食べられるキノコにだっていろいろな「いわく」があるものだし、毒キノコにだって華がある。そんなことを気づかせて、狭い視野を少し広げてくれるような、そんな本だと思う。

見かけより内容があるのは参考文献や引用が豊富で多様なおかげだろう。巻末のキノコ文献一覧はひそかに本書の最大の売りだったりする。