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商品説明
乱反射する読書生活の物語である表題作のほか、川岸の寂れたレストハウスで、彼岸と此岸がごたまぜの時間が展開される「猫が嗅いだ匂い」など全4編を収録した短編集。不条理なユーモアがあふれる幻想文学の極北。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
小説・読書生活 | 5-136 | |
---|---|---|
猫が嗅いだ匂い | 137-170 | |
観光用虹発生装置 | 171-186 |
著者紹介
関戸 克己
- 略歴
- 〈関戸克己〉1962年北海道生まれ。音楽・絵画・造型・映像・小説など多面的に活動したが、2002年死去。
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紙の本
夢のまま
2003/12/07 01:58
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒塚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小説・読書生活」を読んだ。
ページを捲るごとに、そこに書かれている文字は正しく「夢」を綴っていた。
夢には斜め45度に傾いたようなリアリティがあるが、それをそのまま表現できている作品を、私は読んだことがなかった。
夢を模した作品ならいくらでもある。
また夢の不条理さを著そうとした作品もたくさんある。
しかし、この作品は「夢」そのものなのだ。
夢の次元は二次も三次も四次も混線した状態で存在する。
だから無茶苦茶な場面展開や時間の超越も、夢の中では大きな疑問にならない。
そして目が覚めた後に、「変な夢だったなぁ」と思うのだ。
その感覚を「読書生活」では味わえる。
脳内から生み出される喩えようのない感覚を、ここまで文字に写しきっている文学というのは、たぶん、本邦初、いや、世界初といっていいのではないだろうか。
グレゴール・ザムザの体験も、一千一秒の物語も、「小説・読書生活」に比べれば、はるかに現世の律に従っている。
寒天の様に頼りなく、そのくせ崩れない世界がここにはある。
この本が著者関戸克己氏の処女作にして、遺作だという。
最近、既成のジャンルに収まりきれない優れた幻想的作品を多く目にするようになった。
関戸克己氏は確実にその先駆者であり、やがて中心的存在になる才能だったと確信する。
そう思うと、真に哀惜の念に堪えない。
氏のご冥福を心からお祈りするとともに、この作品を私たちに届けてくださった関係者の方々に心からお礼を申し上げたいと思うのである。