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商品説明
最高の愛の形を遂げたクラウディアの信念は、比類なき崇高さをたたえた手紙となって、愛なき現代に届けられた…。マスコミで大反響となった、戦争によって人生を翻弄された1人の男と2人の女の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
村尾 靖子
- 略歴
- 〈村尾靖子〉1944年山口県生まれ。明治大学卒。地域に根ざしながらも、幅広い取材活動を続ける。島根県文学連盟理事。著書に「命をみつめて」など。
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紙の本
戦争という最悪の人生を課せられながらも、国境を越えた最高の愛と友情で結ばれた人達を描いた実話。
2004/09/07 12:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みち秋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙を開くと突然手紙が出てきた。過ぎ去った二人の思い出をたどりながら、相手を思いやる崇高な愛情と優しさに溢れた手紙である。
『時々、思い出して下さい。ロシアを、プログレス村を…。 …私たちは、思いもよらない人生での出会いをしました。… …一切の責任は、戦争にあるのです。……
貴方が再び肉親の愛情に包まれて、祖国にいるという嬉しい思い出で、私は生きていきます。…三十七年余りの年月をあなたと共に暮らせたこと、捧げた愛が無駄でなかったこと、私はこの喜びで生きていきます。…』
この著書はTV局と共同で国内とロシアでの現地取材と、関係者の手紙で構成された実話である。戦争という最悪の人生を課せられながらも、国境を越えた最高の愛と友情で結ばれた人達の生き様を描いた著書である。蜂谷彌三郎(人名敬称略)は太平洋戦争終結後、帰国を待つ北朝鮮でソ連軍に突然スパイ容疑で、妻子を残して極寒の地シベリアへ強制連行された。 厳しい取調べと一方的な裁判で懲役10年の刑を受け強制労働収容所に送られた。収容所生活は想像を絶する環境下と処遇で生死の境を彷徨する毎日であった。
そこで生還できたのは、不条理な罪と妻子への熱い思慕が強烈な生への執念となり耐え抜いたからであろう。収容所を出てからも帰国許可は出ず、その間に無実を信じたロシア人女性クラウディアと出会い、お互い支え合いながら三十七年間の人生を送った。ソ連邦崩壊後の一九九六年に彌三郎は家族の安否を人づてに確認し、日本では家族妻子が半世紀もの間、彌三郎の帰国を待ち続けていることが分かった。この朗報に喜んだのは以外にもクラウディアであり、彌三郎は改めて感謝の念が湧き、涙がやたら流れ言葉で気持を表すことができなかった。
クラウディアは《他人の不幸の上に自分の幸福を築き上げることは、人道上決して許されるべきでない》という固い信念を持っており、尊大で崇高とも思える自己犠牲の愛が彌三郎に対する愛だった。そして彌三郎は帰国。……クラウディアはプログレス村に一人残り今も忍耐強く、勇敢に生きている。
彌三郎帰国後もクラウディアから常に相手を思いやる優しさに溢れた手紙が届いている。
終戦から六十年経ち日本は高度成長を遂げ、熾烈な競争社会になり自己中心主義が今日の社会。クラウディアの彌三郎とその家族に捧げた自己犠牲の愛、妻久子の半世紀に渡り彌三郎を待ち続けた愛、この二人の愛を通して真実の愛とは何か?……考えさせられた著書である。
最後に著者は《信頼しあう人々の心の中に国境はない。クラウディアは、どんな状況下でも人間の真実の愛は貫けるのだと教えてくれた》と記述している。
又クラウディアは《人間はこんなに知恵を持っているのに、どうして愚かなことを繰り返すのでしょうね》と人生を狂わせた戦争について述べている。
読み終わりふと装丁に目をやるとそこには雪を被った『ひまわり』が描かれていた。
イタリア映画『ひまわり』の列車の別れのラストシーンが浮かび上がってきた。
クラウディアさん、感動をありがとう。過去は戻らないけれど残された人生が十分幸せでありますように。又彌三郎さん久子さんお二人のお幸せとご健康をお祈り申し上げます。