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商品説明
【産経児童出版文化賞(第51回)】【坪田譲治文学賞(第20回)】ドイツを舞台に、群れからはぐれた一頭の子オオカミを、故郷の森に向かって逃げてゆく群れに合流させるべく協力し合う少年たちを描く物語。オオカミに国境はない。まして、人と人の心のつながりを断ち切る壁など存在しない!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
那須田 淳
- 略歴
- 〈那須田淳〉1959年浜松市生まれ。早稲田大学文学部卒業後、イギリス・ドイツに滞在。さまざまな仕事を経て執筆活動に入る。著書に「スウェーデンの王様」などがある。
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紙の本
ココロなんてどこから繋がっていくものか。
2006/10/31 00:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:casiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
父親の仕事の都合で6年間住んでいたドイツから日本への帰国が決まった亮─リオ。いずれその日がくることはわかっていたけれど、日取りまで勝手に決めてしまった父親に反抗して、リオは日本語補習授業校の元担任であった小林先生のところへ家出をした。そこで出会ったのは、日本からドイツへと越してきた同い年のアキラ、無愛想な老いた男マックス、そしてマックスが拾ってきたといううすよごれた子犬のペーター。近くの公園ではノイマン野生動物研究所の所有するトラックが横転し、オオカミたちが逃げ出していた。オオカミには一頭当たり1000ユーロの賞金がかけられたらしい。──もしかしてペーターはオオカミではないだろうか。リオとアキラは調査に乗り出した。
ドイツにきたのにはワケありで日本に帰りたいと思っているドイツと日本のハーフであるアキラと、アキラよりドイツに詳しくてここが好きでも日本に帰らなければならない日本人のリオ。二人はペーターと引き換えに賞金をもらうつもりでいたけれど、ノイマン博士のオオカミの研究所を見て考えを改める。「飼い犬」でもいいんじゃないのという考えは、けれどペーターがオオカミだと確認されたことで出来なくなってしまった。届け出るかそれとも。二人とマックスはペーターを群れに帰そうと決意する。
出てくる地名についての土地鑑なんて全然ないのですが、単純に距離だけみてもスケールが大きいなぁと思います。ノイマン博士を含んだマックスの過去、恋愛、東西問題や、自分達の両親とのことも絡めながら進んだ先に待っていたのは、リオたちにとって予想もしなかった光景。1ページにも充たないその場面にじわっと泣きそうになりました。何かを守ろうとする気持ちはコドモのほうが純粋なのかな、打算とか偽善とか関係なくそうしたいからしたんだろうな、と思い。でもその周りにいる人達がダメで馬鹿なオトナなのかというと全然そんなことないんだ、この話。このコたちはきちんと大人になるんだろうなぁ、と考えられるのが気持ちいい。
作者が翻訳をする方だからなのか、14歳にしてその言葉遣いは堅いよぅと思う箇所もあったものの、間違ってはいないよね‥‥。 日本とドイツに別れたリオとアキラはその後、また会ったりするのだろうなとか想像するのも楽しい。
あ、リオの夢に出てきたコーヒーを入れてくれる天使たちが妙に好き!!
「おれは、てっきり、町中の若い連中がモミとか白樺とかの若木をかついで、愛する女の子の窓辺へわさわさ走っていくのかと思ってたのにさ」
ぼくは笑った。
「笑うな! おれなんて道行く人にすれちがって、チラッと見られるたびに気恥ずかしくて、ほんとうは違うんです、この五月の木はおれんじゃなくてマックスのです、なんて心の中でつぶやきながら、歩いてたんだぜ」
アキラはぶつぶつと文句を言った。
それが南ドイツの「古い」風習だと知らなかったアキラと、リオの会話。わさわさ走ってたらなんか楽しそうだねぇ(笑)。
紙の本
オオカミを守れ!少年は信じる人と旅をする
2004/04/09 11:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
マスコミ勤務の父の都合で、7歳の時から6年間ドイツに住んでいる亮(通称・リオ)。いきなり2週間後に帰国すると知らされた亮は大人の勝手に腹を立て、家出を決行する。家出先としてたよった先生の下宿先で、亮が出会った子犬は…オオカミ? 亮と仲間たちの旅がはじまる!
オオカミ。それは日本ではもう滅びてしまった美しく誇り高い動物。狼好きの私はタイトルに惹かれて本書を手に取ってみたが、これが大当たり! オオカミを救おうとする人々と、金もうけのネタにしようと追いまわす人々との攻防戦に、東西ドイツの問題や時の止まった恋物語も巧みに絡められ、子供だけに読ませておくには勿体ない素敵な作品となっている。もちろんサスペンスフルでいて、明るいアキラや実はやさしいマックス、真面目な亮たちが心わくわくさせてくれる展開は小さな人にもぜひ手渡したい面白さなのだ。
男の子とオオカミが親を求めて旅するという設定から手塚治虫「ロロの旅路」を思い出したが、本書はあれほど悲哀に満ちてはいない。主人公が同年代のアキラ、そして寡黙な大人マックスと旅する上に、お茶目な少女フランツィーの支援も受けてにぎやかな旅となっているのだ。著者の豊富なドイツ知識も生かされ、また少年の成長物語であるところも見逃せない。
ラスト、多少の都合良さが目につかなくもないが、それでもしっかり感動的。久しぶりに心あたたまる本に出会い、得がたいひとときを過ごすことが出来た。