紙の本
その次の進化
2006/11/06 23:48
9人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紙魚太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の進化論にとって、パラダイムシフトともいえる発見が少なくとも二つある。一つは恐竜絶滅に関与したと言われる隕石の衝突説であり、もう一つがこの本に述べられる地球凍結説である。どちらも異論はあるにせよ(異論があり得るというのは少なくとも健全な科学的思考であることの査証の一つとなる)、徐々にその様な事実(どれほどの規模であったかについて異論はあるが)が有ったことは受け入れられつつあると言っててよいだろう。いずれもダーウィンの自然淘汰説を超えるものではないにしろ、大きな視点の変更を迫った。それは生命進化は生命の持つ適者生存的な力だけでなく詰まるところ無機質(と思われてきた)な地球環境との密接なコラボレーションによって作り上げられたものであるということだ。最新の進化論に関して言えば、もう地球の惑星システムとの共進化の視点ははずせない(この点に関して言えば日本の研究はトップを走っている)。地球上で生まれた生命が地球という惑星全体のシステムに組み入れられることの自然さは考えるほどに納得せざるを得ない。隕石衝突説に関して言えば宇宙システムとのコラボレーションと呼んでも良いだろう。しかし、地球凍結にしろ、隕石衝突にせよ、なんと一般の想像力を超えた出来事であることか。現代の科学技術のすべてを持ってしても地球の大部分を凍結させることが即時に可能だろうか。しかもそれがちょっとしたバランスの崩れからくるものであろうとは。このような地球環境の激変(実際には長い時間が必要なのだが)が自然に起こることを考えると現在人類が地球に対して行っている勝手な振る舞いは何なのだろうと思う。もっともそれで人類が滅んでしまった後も、そのニッチを求めて新たな生物が進化を続けてゆくのであろうが。
紙の本
語りかけてくるもの
2012/11/18 21:59
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
5億数千年前に起こった「カンブリア紀の大爆発」と呼ばれる、生物の爆発的な進化。
それをもたらしたものが「スノーボール・アース(全地球凍結仮説)」
これは、かつて地球が全面的に厚い氷に覆われていたとする説。
この説では、それまで地質学の世界で信じられていた「斉一説」(現在のような気候が、過去も続いていたと考える説)をひっくり返す事になり、地質学界は大騒ぎになる。
本書は「スノーボール・アース」を提唱したポール・ホフマンだけでなく、それ以前の先達が積み上げた理論も紹介し、ポール・ホフマンが如何にして自説にたどり着いたかを紹介している。
また、提唱後の激烈な論争についても描かれている。
小さな岩の標本から、この説を引き出した様子から、ふと思い出した事がある。
それは、明治の頃の物理学者、寺田寅彦。
知り合いの火山学者がフィールドワークをしている所へ陣中見舞いに行った後、
「この石ころ一つにも地球創世の謎が刻み込まれている。ただ、そこに書かれている”言葉”を読む術を知らないだけだ」
という旨の事を随筆に書いている。
寺田寅彦の弟子の中谷宇吉郎は、もっとキレイに
「雪は天からの手紙である」
とまとめている。
この言葉、雪を手紙にたとえたものだと思っていた。
が、本来の意味は、雪の結晶の形はそれが形成される上空の気温によって決まってくる。
だから、雪の結晶の形を調べれば、上空の気温が分かる。
その意味で、雪を”手紙”に例えたのだ。
この「スノーボール・アース」に賛成するにせよ、反対するにせよ、どんな科学者でも、その根拠としたものは「岩が語ること」であった。
別に科学の論文を発表するわけではないが、季節の変化を楽しむためにも、自然が語りかけてくる事に敏感でいたい。
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全てが凍りついた惑星「地球」。
地球はかつて、極はもちろん、赤道直下においても全てが厚い氷で覆われていた。この魅力的なアイデアが全地球凍結仮説(スノーボールアース)です。
本書は、この地質学における革命的な理論がいかに生み出され、多くの批判を退け成長してきたのか、この地球史上最大の事件をめぐり、科学者達の奮闘を描いたサイエンス・ノンフィクションドラマです。
進化学における大きな謎の一つに、単細胞生物から多細胞生物への進化の原因があげられる。
約5億数千万年前、単細胞生物が世界を支配する暗黒の時代「先カンブリア紀」が終焉を迎え、多細胞生物の爆発的な進化「カンブリア紀の大爆発」が起こった。
この先カンブリア紀を終焉に導いたものはいったい何か?
スノーボールアースがその答えとなりうるのか?
今、地球科学の世界ではこの理論が論争の真っ只中である。
290ページに及ぶドラマは一切の挿絵が存在しませんが、詳細で繊細な風景描写により、想像が無限に広がり、引き込まれる本であると感じました。
地質学に興味のある方、また、進化学(特に原生生物およびエディアカラ生物)に興味のある方には非常に面白い本だと思います。
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大胆仮説くらいの本はちょっと面白くない。この本は学会で争点になっている理論の話だ。そのくらいじゃないと面白くない。
氷河期どころか地球全面が凍結状態だった時期が地球の歴史の中で二度あったという理論。そしてそのうちの後の方がカンブリア期の生命の大爆発につながったという。
面白い。この学問が推測を基本とするために大きな迂回をしながら進んできたことが判る。1世紀前ならば大陸移動説だって信じてもらえなかったのだ。学問が学問として機能している様を見せてもらった。そんな気がする。学問がまだまだドキドキ出来るものだったんだと安心する。
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地球が凍って、また溶けて、また凍って、溶けて...地球が丸ごと凍っていた時代もあった。その度ごとに、生命がトンでもない進化をとげる。
そんなでかすぎるスケールの学説が通るまでの、地道としかいいようのない地質学のフィールドワークと、人間としての科学者達の戦いも、スリルがあって面白い!!
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先カンブリア時代、数度にわたって地球は赤道付近まで完全に氷に覆われた・・・。
現在の常識からは想像もつかないこの「仮説」は、本当に起きた「事実」なのでしょうか。そして、それが「事実」であることは、現在私たちが得られるデータから、きちんと証明できるのでしょうか。さらに、それはいったい、どのようなメカニズムで起こったというのでしょうか。
本書は、全地球凍結仮説を提唱したポール・ホフマンらとその批判者たちとの論争を概観しながら、この仮説の前史から現在の諸説までをわかりやすく解説した、優れたサイエンス・ノンフクションです。
私自信は、著名な科学論者である村上陽一郎氏が、毎日新聞紙上で2004年の推薦書の1冊としてあげていたため、気になって購入してみました。それ以前にも本屋では本書を見かけていたのですが、そのときには何となく「うさんくさい・・・」と感じてしまい、購入には至りませんでした。巷には「最新の理論・仮説」をうたった「偽科学本」が多々あるため、つい警戒警報が発動してしまうのです。
ところが、本書を実際に読んでみると、そうした先入観に反して非常に面白い内容に、一気に引き込まれてしまいました。個性的な科学者たちが多数登場し、自説の正しさを信じて口角泡を飛ばす姿は、最先端の科学が作られていく緊張感に溢れています。さすがに、村上氏が強く推すだけはあったのです。
おそらく現在でも、「全地球凍結仮説」には賛否両論あるのでしょう。私はこの分野の専門家ではないですから、その分野の専門家がもっている判断感覚がありません。また、本書では、題名から見て当然ながら、肯定側に寄った記述が多いと思います。とは言え、その書きぶりは決して独善的なものではありませんので、読んでいて公平感があります。新説の提唱者や紹介者にありがちな、仮説の正当性をとにかく声高に主張する、というタイプの本ではありません。
以上のように本書は、全地球凍結仮説とその周辺を興味深く描く一冊です。それと同時に、地質学という学問分野とその中で生きる科学者について、いきいきと現実の姿をイメージさせてくれる一冊でもあります。
最後に、本書の原書を記しておきます。
Gabrielle Walker (2003). SNOWBALL EARTH: The Story of the Great Global Catastrophe That Spawned Life As We Know Is.
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スノーボールアース仮説をめぐって,どのように,何が明らかになってきたのかが,読みやすく書かれている.研究の内容だけでなく,研究者それぞれの人間性や研究への取り組み方の個性も描かれているのが面白かった.
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何億年というサイクルで引き起こされる生物の大絶滅。その背後では何が起きていたのかというと、氷河が地球を大部分を覆ってしまい、その結果生物が死滅してしまったという学説が近年有力になっている。地球の歴史を知る上で興味深い一冊。
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『201205 地学強化月間』
スノーボール・アース(全地球凍結仮説)に纏わる科学者列伝。
地質学者って激しやすい人が多いのかい。
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第1章 最初の生命らしきもの―生命四〇億年の歴史と氷の地球
第2章 北極―異端児ポール・ホフマンの出発
第3章 始まり―先駆者たちの業績
第4章 磁場は語る―仮説が誕生したとき
第5章 ユーリカ!―才能ある研究者たちの共同作業
第6章 伝道―論争は始まった
第7章 地球の裏側―オーストラリアで見えてきたもの
第8章 凍結論争―加熱する議論を超えて
第9章 天地創造―カンブリア紀の大爆発へ
第10章 やがてまた
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地層を分析すると様々な履歴の異なる岩石を含んだ層があり、氷河が運んだと考えられている。この地層は赤道付近にも見つかっている。またこの層の上にはキャップ炭酸塩岩と言う広い範囲で見つかる層があり、炭素の同位体測定から当時生物(バクテリア)が非常に少ないと考えられる。
鉄は火山や熱水噴出孔から海水中に溶け出す。原始大気は酸素が少なく海中の鉄分濃度が高かったが、その後酸素が増加し、鉄は酸化鉄、赤サビとなって堆積し鉄鉱石の層となる。先カンブリア代の終わりには海が酸素から遮断されていたためこの層が出来たと考えられる。
これらの現象を説明する仮説が全球凍結仮説スノーボールと呼ばれ、この本の主人公で地質学会のカリスマ、ポール・ホフマンが広めた。反対派と推進派の口撃合戦が生々しく面白いのだが、副題に有る「生命大進化をもたらした全地球凍結」に関しては時期が一致する意外に何故もどうやっても書かれていないのが消化不良だった。
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地球がカティンコティンに凍ってた時代があるんだよ!!と力説されても「はぁ…どうでもいいっすけどね。」としか言えない俺は頭が悪いのだが、全編いい年こいたオッサン学者どもが小学生の喧嘩を続けている内容のせいで、「地質学者も頭悪い。あと性格も歪んでる。」として俺の中にカテゴライズされてしまった。
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地質学者の仕事に驚く。未開の大地で岩をひたすら収集する。壮絶。
太古の地球の様子を岩から再現するというのはロマン。確かに大陸移動説のように地質学の仕事はパラダイムシフトに寄与している。
本書の内容を読むと全球凍結が確かにあったような気がしてくる。ただその原因、気候変動について単純な要因に分解することはできないと思う。
生命進化との関わりはどうだろう。強い淘汰圧が速い進化、多細胞化につながるのだろうか。安易に結びつけるのはできないだろう。
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赤道に大陸が集まる→極から氷が広がり、スノーボールになる→火山が噴火し、二酸化炭素が増える→酸性雨が降る→新しい生命の誕生。
ある説が正しいかは証明できない。ただ、反論に長く耐えれば耐える程、その説は正しいものに近づく。
科学者は実験出来るものにしか興味を持たない。
仮説を作って、それが証明出来なかったとする。しかし他の分野の研究者の助け、反論、後世の科学者、いろんな人の力で一つの説は出来上がるんだなと感じた。自分がすべてをやり遂げなくても、それでも意味がある。そんなことを考えさせられた一冊
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内容(「BOOK」データベースより)
科学界で大論争を巻き起こしている“スノーボール・アース”。この地球史上最大の事件をめぐり、科学者たちが繰り広げる白熱の探究ドラマを再現する。5億数千万年前に起こった、多細胞生物の爆発的な進化(カンブリア紀の大爆発)は何によってもたらされたのか?これに答えるのが、スノーボール・アース=全地球凍結仮説である。かつて途方もなく厚い氷が、赤道付近も含めて全面的に地球を覆っていたことを主張するこの仮説は、ウェーゲナーの「大陸移動説」にも匹敵する革命的なものなのだ。学界のカリスマ、ポール・ホフマンをはじめとして、個性豊かな地質学者たちが、アフリカの砂漠から北極圏まで地球を縦横無尽に探り、全地球凍結の証拠を積み上げていく。そしてその過程を通じ、飛躍的な生物進化の謎が、ついに解明される―オリヴァー・サックス、リチャード・フォーティ、サイモン・シンから絶賛を浴びた注目のサイエンス・ノンフィクション。