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70年代の内向が始まる前の作品登場人物が大人!
2004/08/14 02:12
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:関 智子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近水野英子さんをはじめ、これまでほとんど刊行されていなかった60年代の少女漫画が復刊しはじめ、リアルタイムでは知らない私としては新鮮な気持ちで読んでいます。
この作品は漫画史の中で言及されることは少ないですが、今回読んで重要作品だと思いました。
解説に、男子寄宿学校をとりあげた少女漫画初の作品であったこと、竹宮恵子さんの「風と木の詩」との雰囲気の類似が指摘されていますが、男子校に男装をして紛れ込む向学の意志に燃えた女性、身分が高い教え子の子どもを誘拐して育てる家庭教師(オルフェウスの窓外伝に全く同じ設定が・・・)といったモチーフや、ジョアンナ(庶民的な服装はロザリーそっくり)、ザザ(ジャンヌそっくり)とか池田理代子さんの「ベルサイユのばら」「オルフェウスの窓」ともおそらく強い関係があります。
貧窮に陥った主人公に突如奨学金の道が開かれたとき、恩師がとまどう主人公を説得する言葉やその恩師もまた若い頃の試行錯誤があったのだと1ページ足らずの表現で悟らせる部分なども、作者の深い世界観があって、それが凝縮されて出ている感じでうまいのですが、こういうところは初期の萩尾望都さんにも影響しているかもしれませんね。1冊の中にさまざまな作品の源泉となる表現満載。密度が濃かったです。少女漫画もすぐれた先行作品があってこそ、黄金期の作品が生まれたということなのでしょう。
なお、漫画史的な事情を別にしたとしても、人生観が成熟していて完成度が高いです。
ストーリー的には主人公の父親が急死したり、同級生過失致死事件があったり、ヒロイン格のジョアンナにお金持ちの実の親がみつかったり、という荒唐無稽さはあるものの、登場人物たちは神様や他力に頼らず自分たちが成長することによって現実的に困難を克服。しかも70年代の内向・私探しが始まる前の作品(1967年発表)とあって、人生の目標を「社会や他者にどんな貢献ができるか」に置いていて、いや〜大人。今のマンガの登場人物より精神年齢は高いかもしれません。
あとがきの中で西谷さんは近況報告を行っていて、この作品成立時の話を書いていないのですが、ぜひ他に機会にでも書いて欲しいですね。1967年当時のマーガレット(小学生対象の雑誌)にこんな作品が書かれていたことこそ、今読むと奇跡にしか思えません。