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〈私〉の愛国心 (ちくま新書)
〈私〉の愛国心
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紙の本
精神科医が見た日本社会の病理
2004/09/30 14:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:COOKAPOO - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の香山リカさんは、精神科医としてとくに若い女性の心理について一般向け分かりやすい概説書(「結婚幻想 迷いを消す10の処方箋」など)を発表する一方で、社会心理学の見地から日本で今高揚しているナショナリズムの風潮についてするどい分析を展開しています(「ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義」など)。本書もその一角を占めるものといってよいでしょう。
本書では、教育基本法に「愛国心」が改正にあたって盛り込まれることが事実上確定したことを皮切りに、今日本で「ナショナリズム」が確実に浸透していること、どうやって今この状況にたどり着いたのかを日本国内の要因、国際的な要因から考察しています。その中でとくに日本とよきにしろあしきにしろ密接な関係のあるアメリカの社会病理が日本の情勢に大きく影響していることを指摘し、そのようなアメリカとどう日本は付き合っていけばよいか、それと並行して日本社会はどうやったらナショナリズムから抜け出していけるかを示唆しています。
第二次世界大戦以降アメリカとの付き合いにおいて日本の抱える感情の複雑さは大変なもので、その屈折や葛藤が日本国内の「ナショナリスト」たちの隆盛に大きく影響していることを改めて思い知らされます。香山さんは社会を擬似的に心理をもつ一人の人間として捉え分析する一方で、あくまでこの社会を作っているのは一人一人の人間であること、一人一人の人間が変えていかなくては社会は変わらないという視点に立ちます。ともすれば、「どうせ私がなにをいっても社会はどうにもならない」といって責任放棄してしまいがちな風潮を一人一人が自戒をもって受け止め、自分たちの生きる社会の問題は「私」の問題なんだと喚起している一冊です。