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戦後まもない時代を生きた人々の、今は失われてしまった世界を描く短編集。厳しい自然の中で生きるマタギや漁民たちの人生の哀歓。昔観たマタギの記録映画を思いだし、夕焼けの中を黄昏たい気分になりました。
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昭和初期の東北を舞台にして、農村の人々の生活の中のドラマを、史実を背景に描いた作品群である。ほどよく使われる方言が心地良い。
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どの作品も密度が濃く、とくに気に入った作品も多数。私(たち)の知らない古き東北の世界観(風土、経済状況、方言)がこの読書を、さらに楽しくさせてくれました。
2006年8月26日読了
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「旅マタギ」が圧巻。しかし、どちらかというと、短編より長編で本領が発揮されるタイプの小説家だとは思う。
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熊谷達也の短編集。
マタギ物、漁師物など9編が納められている。
彼が描く家族像がとても清々しい。
現代の日本は「家族」を失ってしまっていないだろうか。
収録作
潜りさま
旅マタギ
メリイ
モウレン船
御犬殿
オカミン
艜舟
皆白
川崎船
熊谷達也、とても良いです。ファンになりました。
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自然と対峙する為に自身の生業に命が掛かっている人達の短編集。
命が掛かっているが為に自然からの啓示を真摯に受け止めるが、逆に油断した時に大きなしっぺ返しを喰らう可能性がある。
そして自然を知る為に五感や、言い伝えや先人達の知恵を大切にする人達のお話。
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ヒグマ、オオカミと来たので、次はイノシシかと思っていたら、良い意味で裏切られた。潜水夫、マタギ、愛犬、幽霊船、山犬、巫女、川舟、熊、磯船という9つのテーマからなる連作集。山背郷というのは全編を通した表題であり、昭和初期の東北地方が共通の舞台となっている。私は旅人として幾度か通り過ぎたことがあるだけで、東北とは縁もゆかりも無い人間であるが、何故か強烈な郷愁を感じた。先日、読了した『サウスバウンド』では南への憧れ…。関西で生れながら、どうして南と北に惹かれるのだろうか?“まつろわぬ民”の末裔なのかも知れない。
第九話 川崎船。北陸・東北地方で沖合漁業に使われた磯船のこと。一級の方言小説。舞台が下北半島の旧脇野沢村なので使われているのは恐らく下北弁。ジヤッペ、ドンペ、ビンソウ、アンコ、メラシコ、ギンカギンカ、アバエ等。私は生粋の活字派だが、こればかりはラジオドラマで聞いてみたい気もする。 2012年10月16日
第八話 皆白。山神の化身として恐れられる全身真っ白の月輪熊を狩る老猟師の話。生物学的にはアルビノ?動物モノの定番であり『老人と海』とも一脈相通ずるところがある。狩猟行為を通して相手を理解するとか尊厳を守るといったありきたりな展開ではなく、老人の心の奥底に潜む鬼の姿が描かれている。 2012年10月14日
第七話 艜船。芭蕉の『舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす。』を思わす出だしだが、途中から一転、手に汗握る展開となる。ミステリではないので結末は想像できるが、北上川で運搬船を操る老夫婦の一日を通して、ひとつの時代の終焉が見事に描かれている。 2012年10月13日
第二話 旅マタギ。山本周五郎賞と直木賞をダブル受賞した『邂逅の森』と構成が酷似している。こちらが先なので原点と言うべきか。冒頭からいきなりクライマックス。そこにカットバック手法を使って、主人公の軌跡が織り込まれる。どこまでも静謐な追憶と、読むだけで痛くなる脱出行が交互に語られる。 2012年10月08日
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大自然と人間の共存をテーマにした短編9作品。
短編にしとくのがもったいない気がするくらい
とれも読みごたえがあった。
森シリーズ全巻読まねばなるまい。
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熊谷作品久しぶりに読みました。やはり、グイグイと引き込まれあっと言う間に読了…東北を舞台とするところや時代背景から来る生活環境の厳しさが伝わってくる中、そこに心温かな情愛と言うか人情と言うか、生きる力強さが感じられる。この作品は「邂逅の森」への分岐点になったんですね。それまでの作品と違って読んでる間中ずっと「邂逅の森」の中に居た気分でした。素晴らしい作品です。是非読んでみてください。
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短編集。
直木賞受賞作の『邂逅の森』よりも前に書かれた作品。
短編ではあるが、マタギの話もあり、内容的にちゃんと『邂逅の森』と繋がっている。
まさに原点。
それぞれの話が短編に思えない程、読みごたえがある。
2013.11.27読了
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東北という地の厳しさ、優しさ。同じ日本でもその地域の空気感はまるで違う。各編様々な物語であるが、全体を通して人間の思いの強さを感じさせてくれる。
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直木賞と、山本賞を受賞した作家の本が、面白かったよ!と、言われて、手にした本だが、、、、
マタギの話だけど、、、「邂逅の森」、を推薦してもらったけど、
短編集からと、思って、この本を手に取った。
昭和初期の東北地方を題材にして、激変する時代を、精一杯に生きる人々を感動的に書き描いている。
9話から構成せれている。
「潜りさま」 潜水夫
「旅マタギ」 マタギ
「メリイ」 狼犬
「モウレン船」 漁師
「御犬様」 山犬
「オカミン」 巫女
「ひらた船」 曳き船夫婦
「皆白」 漁師と、薬売りと、白熊
「川崎船(ジャッぺ)」 漁師
東北の山背という冷たい北東風の吹く 山村と漁村に生きる人の人生を描いているが、私は、「ヒラタ船」と「川崎船」が、夫婦愛と、親の愛を、不器用な愛の表現仕方が、好きである。
過酷な生と死を、荘厳的に書かれている昔のマタギの話は、雪国に住んでいない者には、想像もつかない厳しさがありすぎて、今の時代に、生活出来る幸せを感じないわけにはいかない。
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(01)
9つの短編からなるが、近代東北の群像劇(*02)の様にも読める。人生のある瞬間というだけではなく、一人の一生や、数代にわたる因縁も綴られ、必然的に戦前戦中戦後の東北の生活が現れる。特に山に生態する狼や熊という動物や、漁業や運送に駆使された船が題材となって、現代では省みられなくなった習俗(*03)などにも焦点を当てている。
(02)
オチを知らないものにとっては、これらの短編がバッドエンドに終るのか、ハッピーエンドに終るのか、あるいはその間に宙吊りにされるのかを楽しむことができる。どちらかと言えば、「旅マタギ」や「モウレン船」などの唐突な終結が出色であるが、「艜船」のハラハラさせる展開と様相が最も出来がよいと思う。
(03)
近代マタギの分類、海上での漁法や操船術、漁村の人々の営み、北上川の舟運などは、調査とまとめが行き届いており、ストーリーとは別に読み応えのある生活誌となっている。東北地方ならではの鉱山に関わるエピソードも興味深い。
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邂逅の森がとても良かったので、手に取った。良いのだけど、やはりこの方の本は長編で読みたい。途中まで。
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再読です。
読んでいて、やはり吉村昭との類似性を感じます。最終的には記録文学の方向に行った吉村さんですが、初期の作品は物語性が高く、そのころの吉村作品に近い雰囲気があります。ただ、熊谷さんの方がより奔放です。
印象に残るのは「ひらた船」と「川崎船」。自然との厳しい戦いと対比するように人(夫婦間、親子間)に対する優しさが描かれた作品です。"厳しさ"と"優しさ"の対比、そこに熊谷さんの作品の力強さがあるのかもしれません。
====05-060 2005/06/08 ☆☆☆☆☆=====
最初は読みながら「新田次郎に似てる」「いや、戸川幸夫か」「いやいや、やっぱり吉村昭だ」などと思いながら読んでいました。
解説の中でも吉村昭との比較は出てきますし、まんざら外れでもないのですが、誰かに似てるというのは失礼ですよね。しかし、最後の「川崎船」まで行って一気に吹っ飛びました。たまたま題材が似てたのであって、独自の世界なんだと。
ストーリーそのものは、むしろ陳腐といってもおかしくありません。しかし、それを覆い隠してしまう迫力と躍動感があります。そして、力に裏打ちされた優しさがあります。
熊谷さんは初めてです。一作で判断するのは尚早かもしれません。しかし、熊谷さんの描く「力感のある生活」といった世界に強く惹かれます。