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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.5
- 出版社: 筑摩書房
- サイズ:20cm/299,3p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-480-83713-2
紙の本
パレスチナから報告します 占領地の住民となって
ヨルダン川西岸地区ラマラに住むイスラエル人特派員からのレポート。土地や家屋の強制収用、道路封鎖、ジェニン侵攻…。和平のために今、求められているのは何か? 不条理な暴力の日...
パレスチナから報告します 占領地の住民となって
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商品説明
ヨルダン川西岸地区ラマラに住むイスラエル人特派員からのレポート。土地や家屋の強制収用、道路封鎖、ジェニン侵攻…。和平のために今、求められているのは何か? 不条理な暴力の日常に生きる現地の人々の声を伝える。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
アミラ・ハス
- 略歴
- 〈ハス〉1956年イスラエル生まれ。同国日刊紙『ハアレツ』の特派員としてパレスチナに住み、現地から記事を送り続けるジャーナリスト。
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紙の本
民族・宗教対立を超える階級対立という視点
2005/05/16 02:58
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:妹之山商店街 - この投稿者のレビュー一覧を見る
彼女は、ジャーナリズムに中立はないと言う。
反占領の立場から書いているのだと断言する。
だからこそ、イスラエル人であるにもかかわらず、
パレスチナに何年も住み続けることができ、
現地住民も心を開いて話してくれるのだろう。
彼女は、有名人、役人、公的機関を信用しない。
現地住民の生の声からこそ学ぶのだという。
彼女を衝き動かすのは、不正への怒りだという。
同時にパレスチナの民衆から人間の尊厳を学び、
自らの内面が豊かになったという。
徹底した現場取材を行い、現地住民の何百という生の声に基づいて
記事を書いている。そのリアルな描写には圧倒される。
まるで自分も現地に実在しているかのようにリアルに迫ってくる。
イスラエル政府と軍の過酷で非人間的な政策を具体的に暴き出していく。
イスラエルは、形式上法治国家だ。
従って、パレスチナ人の住宅を次々と破壊する法的根拠がなければならない。
西岸の約七割はC地区であり、住宅の建設を許可しない、あるいは、耐え難い
ほどのろのろと出すという戦術を通して、「違法家屋」を次々と破壊していく。
法制度という偽装のもとに。
その批判の矛先はイスラエル政府と軍だけでなく、同じ論理に基づいて
パレスチナ自治政府の統治形態をも容赦なく批判する。
アラファトは彼女を二度追放しようとしたという。
しかし二度とも周囲の反対に遭い、撤回したという。
例えば、私はパレスチナの教員組合について、その内実を初めて学んだ。
官製の教員組合に対抗して、下から自主的な教員の賃上げ運動や総選挙要求運動
が盛り上がるも、自治政府はこれに波状逮捕で答えた。
まるで、官製の労組とは別に、独立労組連帯を下から組織したポーランド労働
者達の闘いのように。
教組運動の活動家達は、活動を沈黙させる手段として民族闘争が利用される
ことにうんざりしている。いまや民族闘争と階級闘争は片方だけでは不完全だと
ポーランド連帯の闘いがソ連圏崩壊の本質的一要因となったように、パレスチナ
の労働者達の闘いは、イスラエルの労働者達の闘いとも連帯しながら、事態の
本質的な解決をもたらす潜在的な本質的力を持っていると思う。
パレスチナの民衆の怒りは、イスラエル政府と軍だけでなく、
自治政府の腐敗、圧政に対しても向けられる。
自治政府が四つの専売事業を独占していること。
これらの利益が年間予算が組まれる公の財務省財源には組み込まれず
裏資金として蓄えられていること。年間数億ドルにものぼること。
彼女の論理は、宗教対立、民族対立を超えて、階級対立にこそその根幹を
置いていると思う。
イスラエル人対パレスチナ人の対立の背後にある、支配階級と被支配階級の
論理に則り、だからこそ、パレスチナ自治政府のパレスチナ民衆に対する圧政を
も同様に告発できるのだと思う。
オスロ合意は、パレスチナ国家の成立を否定するものであるから、
誤りだと彼女は考えている。
彼女は私はパレスチナ問題の特派員と呼ばれているが、イスラエルの占領政策
の現実をイスラエル国民にこそ訴えたいという。
「占領を生きている」という立場から、
ユダヤ人として、母国が軍事占領を続けるような国家であって欲しくない
ということだと思う。
ユダヤ人収容所へ送られた両親へのドイツ人の『無関心の好奇心の目』
「傍観者」にはならない。
それもまた彼女を衝き動かす本質的な要因の一つだろう。
左翼の両親に育てられ、自らも左翼を自称する著者。
彼女は『どっちもどっち』という立場ではない。占領こそが本質だと言う。
占領地からの撤退なしに、この問題の解決はないという。そういう立場だ。
確かに、入植地によって幾つにも寸断されたパレスチナなど、国家という名に
値しないと私も思う。