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紙の本
ピーター卿最後の長編
2005/10/31 14:48
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『毒を食らわば』の事件で出会ってから、ようやく結婚へとこぎつけたピーターとハリエット、まずはめでたいですね。新婚旅行はハリエットが幼い頃に住んでいた田舎で過ごそうと二人はそこへ向かうが(もちろんバンターはいっしょ)、到着早々問題が次々とおこり、さらには死体まで・・・。甘い蜜月旅行中も事件はピーターを放っておいてくれないよう、地元の警察に協力し事件の調査をはじめるが・・・。
貴族探偵ピーター・ウィムジィ卿が活躍する最後の長編です(ピーターとハリエットのその後を描いた短編はあります)。
殺人のトリックは、今読むと時代がかったちょっとお粗末な感じもうけ不満もありますが、あちこちに古典や文学作品の引用がちりばめられ、さらには事件担当の警官との引用合戦、ピーターとハリエットの会話、バンターの苦労と活躍など、そのトリックを解明するまでの過程が軽妙に書かれていて、いかにもセイヤーズらしく抜群におもしろい。また、事件解決後、犯罪を犯した者とはいえ人一人を絞首台に送ることになったピーターの苦悩、言葉をかけたくともジッと我慢して優しく待つハリエット、二人が結婚とお互いに対する主張と妥協についてなども、とても興味深く読めました。さらに、ピーターとバンターの出会いについても触れられていて、これはとても感動的です。
ピーター卿最後の長編という大舞台だけあって、まさに総決算とよぶにふさわしい質・量ともにとても充実したできばえ、傑作です。